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社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

米国スタイルの明細書書き方

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photo by mrsdkrebs

明細書の様式

明細書は、A4の用紙に黒インキまたはその相当物により、明確に印刷したものが明細書として認められます。クレームと要約は、直前でページを変える必要があります。

また、明細書の余白は上部が2.0cm以上、左側が2.5cm以上、右側が2.0cm以上、下部が2.0cm以上と米国特許法で細かく決まっています。文字の行間は1.5スペースまたはダブルスペースのどちらかにして下さい。さらに、文字の大きさ及び書体については、大文字の高さが0.21cm以上のスクリプト体以外のフォント、例えばArial、Century、Times New Romanなどのフォントを使用することができます。

クレーム及び要約を含む明細書には、ページ番号を連続して付けていきます。ページ番号は、紙面の中央下に付けます。クレーム及び要約を除く明細書の段落には日本に出願するときと同様に[0001]のような段落番号を連続して付けていきます。

明細書は次の項目を下の順位配列することが望ましいとされています。

1. 発明の名称(Title Of Invention)
2. 関連出願の参照(Cross-Reference to Related Application)
3. 連邦政府資金による研究開発の記載(Statement Regarding Federally Sponsored Research or Development)
4. 共同研究契約の当事者の名前
5. シーケンスリストのなどの参照と記憶媒体などによる提出材料参照による援用
6. 発明の背景
・発明の分野
・規則1.97及び1.98により開示する情報を含む関連発明
7. 発明者又は共同発明者による先開示に関する陳述
8. 発明の簡単な要旨
9. 図面の簡単な説明
10. クレーム
11. 要約
12. 図面
13. シーケンスリスト

それでは、各項目ごとの記載の注意点を述べていきます。

1.発明の名称

発明の名称(Title of the Invention)は、その発明の本質を適切に表現しなければなりません。必ずしも、日本出願の明細書の発明の名称の直訳である必要はなく、クレームに記載された発明の対象と完全に一致させる必要もありません。

好ましくは2語以上、7語以内とし、500文字を超えてはいけません。また、Improved、improvement of ~などの単語は発明の名称とはみなされず、特許庁のコンピュータの入力の際には削除されています。(無視されるだけで、拒絶されるわけではありません。)

2.関連出願の参照

関連出願の参照、またはクロスレファレンス(Cross-Reference to Related Application)は、関連出願の出願番号、出願日及び両出願の関係を記載します。例えば、関連出願の参照は、先の米国出願(仮出願、国際出願、継続出願の親出願)があるとき、その出願日等の利益を受けたい場合に記載しなければなりません。

仮出願の利益を受けたい場合には、「This Application is Entitled to the benefit of Provisional Patent Application No.〇〇〇〇, filed ・・・」(本出願は、//////に提出された仮出願〇〇〇〇の利益を享受する。)のように記載します。

本出願が継続出願であり、親出願の利益を受けたい場合には、「This is a Division of Application No.〇〇〇〇, filed ・・・」(本出願は、・・・に提出された仮出願〇〇〇〇の利益を享受する。)のように記載します。

国際出願から国内段階に移行して出願から継続出願をする場合には、次のように最先のように最先の出願まで遡って、「This application is a continuation of U.S. Application No. 〇〇/ ・・・・, filed ・・・・, which was the National Stage of International Application No. PCT/JP〇〇/△△△△・・・・, filed…..」のように記載します。

3.基礎出願のインコーポレーション・バイ・レファレンス

関連出願の参照に加え、優先権主張の基礎となった出願に対するインコーポレーション・バイ・レファレンス、すなわち参照による援用をすることが好ましい。参照による援用とは、他出願番号の参照をもってそのしゅつがんお記載内容を組み込む旨の宣言をいう。

もし、米国の明細書に誤訳があっても、基礎となった出願に基づいて補正ができる可能性があるという理由によります。この援用のプラクティスは現在では広く使用されています。優先権主張の基礎出願への参照は、厳格な定型文はありませんが、例えば「priority is claimed on Japanese application No. 20××-××××, filed May 10, 2014 the content of which is incorporated herein by reference.」のように記載します。

基礎出願の援用は明細書の正式な記載項目ではないので、記載位置が決まっていません。明細書の冒頭に記載することもあれば、明細書の終わりに記載することもあります。

4.連邦政府資金援助による研究開発の記載

連邦政府資金提供の契約者が自己の名義で特許出願をしたとき、所定の記載が必要になります(MEPE310)。この記載は、「合衆国政府は無償の実施権を有し、かつ特許権者に対して第三者に実施を許諾するように要請できる。」旨であり、これを記載します。

5.コンパクト・ディスクによる提出材料の参照による援用

コンピュータ・プログラムリストが300行を超えるとき、これを記載したコンパクト・ディスクを提出できるが、このときコンパクト・ディスク数及び各コンパクト・ディスクのファイルを記載します。

6.発明の背景

「発明の背景」(Background of the Invention)は、「発明の分野」(Field of Invention)と「関連技術の説明」(Description of the Related Art Including Information Disclosed Under 37 CFR 1.97 and 1.98)と分けて記載します。

「発明の分野」では、その発明が属する分野を記載する。その記述はクレームされた発明の主題を表現するものとします。

例えば、「This invention relates to ・・・・」(本発明は・・・・に関する)という形式を使用。

特に、日本の特許明細書の「従来技術」の記載は、図面を用いて詳細に記述されていることが多いですが、米国では図面を用いずに簡潔に記載することがほとんどありません。その理由は、図面等を用いて従来技術を詳細に記載してしまうと、それだけ非自明性のハードルが単にあがってしまうからです。

そのため、必要な限りにおいて関連技術を詳細に説明してもよいですが、疑わしくなるほど記載するのは避けるべきです。

先行技術ではないものを、prior artとして称してはいけません。そのような技術はbackground artまたはrelated artと称して記載します。prior artと記載してしまうと、出願人はその先行技術が公知等であることを自認したとして受け取られ、その先行技術に基づいた拒絶理由通知を受け取る場合があるためです。

例えば、自己の未公開の日本特許出願は、米国特許法では、先行技術には該当しないため、prior artとして称してはいけませんし、未公開であるならわざわざ明細書には記載しない方がいいんです。

また、情報開示陳述書として開示すべき先行技術をこの欄に記載してもかまいません。出願人は特許性判断に重要な情報のすべてを開示することを義務付けられており、この情報を情報開示陳述書によって提出しなければなりませんが、関連技術の説明により情報の開示を行っても問題はありません。

ただし、従来技術として、設計インセンティブや市場の圧力があったことを過剰に強調すべきではありません。この理由も、非自明性の判断において、設計インセンティブや市場の圧力は設計変更を促進するものであり、「予測可能」な設計変更を当業者が行っても、その設計変更は自明である、とされる可能性があるためであろ、やはり審査のハードルがあがってしまうためです。


 すなわち、インセンティブや市場の圧力を強調すればするほど、発明の非自明性は低くなります。したがって、従来技術に関して客観的に存在する課題を簡易に指摘することだけが望ましい、と言えます。

また、発明が解決すべき課題を詳細に記載してしまうと、非自明性の判断にも影響を与えることがあるので注意が必要です。すなわち、発明完成時におけるその技術分野において公知の課題は、既存の技術分野を組み合わせることへの動機付けとなり得るからです。そのような動機付けが存在することにより、発明の非自明性が否定される恐れがあります。

特に、欧州や日本のプラクティスでは、「課題」⇒「解決アプローチ」をベースにしており、発明を既存の技術課題に対する解決として捉える伝統がありますね。そのため。発明が解決すべき課題を必要以上に演出して記載する傾向があるんです。しかし、米国特許出願の実務の感から見れば、従来技術の課題は最小限、本当に簡単に記載することが好ましいのです。

7.発明の簡単な要旨

「発明の簡単な要旨」(Brief Summary of invention)では、発明の本質を記載し、発明の目的も記載します。また、発明の利点と、問題をいかに解決したかを記載し、発明の目的を理解しやすいように簡潔に記載します。

あまりに狭小な発明の目的は発明の範囲を減縮してしまう恐れがあるので避けた方が好ましいです。例えば、電池の特許であれば、「〇度以下の環境下でも放電効率を上げることを目的にする。」と記載するときは、最初の「〇度以下の環境下でも」という表現はまず不要だと思います。特に、日本の明細書では、発明の目的として、しばしば詳細に記載する傾向があります。発明の目的を過剰に主張し過ぎると、権利化後に当該目的を達成しないものは権利範囲に含まれないという限定解釈がなされることがあると一般的に考えられています。したがって、発明の目的はできる限り幅広く簡潔に記載すべきです。

発明の要旨として、保護を受けたい発明の本質を簡潔に記載します。発明の要旨はクレームの記載と対応していなければならず、前出の発明の目的を達成するものである必要があります。発明の要旨の記載は、審査官の理解を助ける上で有効です。その発明の効果も併せて記載しておくことが好ましいのです。これは日本の出願の実務とは異なります。

それは、審査官は「発明の簡潔な要旨」の記載をよく読むと言われています。簡潔に記載されているため、長文化した「発明の詳細な説明」より容易に発明を理解できることがあるためです。

この「発明の簡潔な要旨」はクレームをそのままコピーしたものであってもいいです。しかし、審査官の理解を助けるため、クレームを読みやすく書き改めたり、発明の機能や作用、さらに発明の効果を適宜挿入するような工夫が望ましいとされます。「発明の簡潔な要旨」には、従来技術との比較を必要以上に記載すべきではありません。要は発明の要旨が簡潔に審査官に理解できるように工夫することが重要でありません。

8.図面の簡単な説明

「図面の簡単な説明」(Brief Description of the Several View of the Drawing)は、図面の番号を特定して、各図面のごとに簡単な説明を付けます。「図面の簡単な説明」には、部材の参照番号は入れません。

なお、側面図はside view 上面図はplan view 背面図はrear view 斜視図はperspective view、断面図はcross-sectional view、ブロック図はblock diagram、フローチャートはflow chart 拡大図はenlarged view、詳細図はdetail view、部分図はpartial viewといいます。

9.発明の詳細な説明

「発明の詳細な説明」(Detailed Description of the Invention)には、その技術分野における当業者がその発明を製造し使用できる程度に、発明を完全、明瞭、かつ簡潔かつ正確な用語を用いて記載します。発明は、他の発明や従来技術と識別できるように記載します。

すなわち、保護を受けようとする発明と、他の発明との技術的差異を読み手が理解できるように配慮する必要があります。発明の全体構図を平坦に記述したのでは読み手が発明を正しく理解できないこともあるからです。

例えば、改良発明であるときは、その改良の理解に必要な事項のみを説明するとされています。一般的には、どのような先行技術が引用されて拒絶されるかは分からないため、発明はできるだけ詳細に説明すべきです。しかし、発明の重要部分とあまり関係ない構成まで必要以上に記述するのは説明が助長となるためよくありません。

「発明の詳細な説明」では、発明の構造物であれば各部分に番号を付して、図面との対応が分かるようにします。このとき、番号は明細書を通じて先頭から次第に大きくなるように付けていきます。これによって、その部材が最初に説明されている個所を明細書から容易に見つけ出すことができます。また、番号は必ずしも連続している必要はなく、また桁数に制限があるわけではなく、読み手に分かりやすいように柔軟に付けます

発明の詳細な説明は、記載要件(Description)、実施可能要件(Enablement requirement)、ベストモード(best mode)の要件を満たす、明細書の中核をなす記載です。これらの要件については、特許要件については、後日詳細に書いていきたいので省略します。

「発明の詳細な説明」には、可能であれば、発明が奏する予期せぬ効果(unexpected result)を記載します。従来から知られている要素の公知の方法による組み合わせでは、それが良き可能な結果(predictable result)以上のものを生み出さない限り、自明であるとされてしまいます。


したがって、審査において非自明性を主張するときは、予期せぬ効果を主張すると有効です。予期せぬ効果は、副次的な証拠(secondary consideration)として出願後にも提出可能だが、明細書の中に記載しておけば、その記載に基づいて非自明性の拒絶を克服することが容易になります。

10.クレーム

クレーム(claim)とは特許権の権利範囲を定めるものです。クレームについては言及すべき事項が多いため、これについては後日のテーマにします。

11.要約

「要約」(abstract)は、明細書の技術的な開示の要約を言い、明細書とは別の用紙に記載します。要約は150語を超えてはならないという制約もあります。この要約の目的は、特許庁や第三者が技術内容を素早く把握できるようにするためのものであり、クレームの範囲の解釈には考慮されない、要約は簡潔でなければならないため、その発明の効果や用途または先行技術との比較を記載してはならないし、「この開示は、・・・に関する。」といった上長的な書き出しも禁止。

要するに、周りくどい表現を避ける。通常は代表的なクレームを変形して複写すればよい。また、日本特許出願と異なり、部材の参照番号は入れない。要約が簡潔ではない場合は、審査官が修正を命じることもあります。