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社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

アメリカの特許制度に適したクレームの書き方とは

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特許権は、クレーム(Claim)が権利範囲を定めます。いくら発明の詳細に充実させた説明をしたとしても、クレームの書き方で強い権利にもなりますし、弱い権利にもなってしまいます。


クレームの解釈は、法律だけでなく規則、判例に照らし合わせて行わます。、だからこそ、クレームの記載は慎重かつ大胆に行うべきである。また、日本の特許法と比較しても。米国特許法ならではのルールがあります。米国の特許制度に合させたクレーム作りが求められます。

(1)クレーム作成の基本的な考え方

出願人は、自分が特許として保護を求める発明をクレームに記載して特許出願をします。また、審査官はクレームに記載された発明が特許を受けるための新規性や非自明性などの要件を満たしているか、どうか審査しています。


そして、特許を受けた後の侵害の成否は、第三者の製品がクレームされた発明の範囲内に含まれるか否かによって判断される。このようにクレームの記載が最重要で、クレームの記載は慎重に行うべきです。

①クレームの種類

米国特許法の112条1項については、出願人自分の発明を文言で明確に特定できるようにクレームを記載しなければならないと規定されています。


さらに、101条には、クレームの記載には、装置(Apparatus)、方法(method)、生産物(manufacture)、組成物(composition of matter)を記載しなければなりません。


また、1件の出願の中では、同一発明を装置、方法のクレームとして記載することもできます。実際の実務では、将来起こりうる侵害の形態を予測することが難しいために、装置クレーム、方法クレームの弱点をそれぞれ補うように、複数の種類のクレームをまとめて作成しておきます。

②装置クレームと方法クレームの比較

まず、初めに装置クレームは、方法クレームよりも侵害を立証しやすいというメリットがあります。その装置が商品として販売されていれば、その製品を購入して製品解析すれば侵害を容易に立証することも容易になります。


 一方で、方法クレームは、装置クレームより権利範囲が広くなる場合がある反面、権利行使に弱いといった特徴があります。例えば、ある方法クレームが方法だけを特定し、方法に使用される装置を限定していないとします。


その場合、第三者にとって特許の権利範囲からは逃れることが難しくなり、例えば異なる装置を用いたとしてもその方法を実施していたとしても、特許権の侵害として訴追することができる可能性が高まります。一方、方法クレームでは、市販製品を解析しても、その製造方法を特定するのは困難である場合が多い。

 
上記のように装置と方法のクレームは権利行使について効力範囲も異なることがあります。しかし、たいていの発明は、装置クレームと方法のクレームも両方準備することができるはずです。


例えば、「A、B、Cを含む装置」とした装置クレームがあります。その構成要素A、B、Cが求められる機能Step A、Step B、Step Cを実行するものであれば、「Step A、Step B、Step C程を含む方法」という方法クレームが作れます。


1つの出願の中に同じ発明を装置と方法の両方のクレームで記載しておいた方がいいでしょう。もちろん、方法特有の特徴があれば、装置のクレームの単なる書き換えるだけのクレームにせずに、独立項、従属項のどちらであってもOKなので、積極的にそのような特徴を加えましょう。ただし、やはり、単一性の問題は意識して下さい。方法のクレームと装置のクレームが互いにかけ離れた内容になってしまうと、それは限定要求の対象になるからです。

③クレームの書式

クレームは明細書の最後に、記載することが一般的です。明細書の後に「I claim.」や、「What is claimed is;」または「CLAIMS;」などの語句に続けて記載します。USPTOが推奨しているクレームの書き方は、基本的に「前提部+移行部+各構成要素の列挙」という形式をとります。


クレームは、複数のセンテンスから構成されてはダメで、1つの完結した文として記載することを求められます。たとえ1つの文が長くなってしまったとしても、改行することで見栄えを整え、記載しなければなりません。もちろん最初の文字は大文字とし、以下小文字が続き、ピリオドで完結させます。


この形態が守られていないと、記載不備に関する拒絶理由(112条)を受けてしまいます。また、同様にクレームの記載により発明の特定が困難になるという理由で、ダッシュ―、引用文、括弧()、商標、または略語などは用いて記載してはいけません。

④装置クレームのサンプル

では、ここでよく見かける装置クレームの典型的な例をみてみましょう。
装置クレームは、原則として構成要素を列挙する形式をとることとが好ましいと言われています。これを”構成列挙型”といいます。日本や欧州で推奨されているJepson型とは異なります。もし、日本の出願をベースに米国に出願する場合は、注意する必要があります。


 Example.1
 An apparatus comprising;
  A;
 B; and
 C.                
 (Aと、Bと、Cからなる装置。)


構成要素は、一つ一つ改行して審査官にとって明瞭であることが好ましいとされます。


一般的なノートパソコンを例にも、装置クレームを作成すると、次のようになります。

 A computer comprising;
  a processor;
 a display connected to said processor; and
a keyboard connected to said processor.


また、構成を列挙した後に、wherein節をつなげて構成要素をそれぞれ説明することもあります。例えば、上のクレームをwherein節を用いて書き換えれば、以下のようなクレームになります。日本でよく見られるJepson式のクレームになり、日本に出願した発明のクレームを直訳すると、このwherein 節が用いられることになります。

A computer comprising;
a processor;
a display and
a keyboard,
wherein the display is connected to said processor and
said keyboard is connected to said processor,
.

繰り返しになりますが、wherein 節は、構成要素さらに詳細な説明を追記したりするために使われます。また、どうしても構成要素を修飾する言葉が長くなってしまう場合に有効です。wherein節を使ったJepsonスタイルを採用して、クレームの最初に構成要素だけをまず列挙して、構成要素間の複雑な関係をwherein 節にまとめて記載すればいいのです。


複雑な発明をクレームにしなければならないとき、Wherein節を使用して、審査官が構成要素と構成要素間の関係を理解しやすくするような手助けになります。ただし、Jepsonスタイルの場合には、wherein節のみがこの発明の特許性を有する部分であると、審査官に判断されるリスクを伴いますので、最初の最も広いクレームには、Jepsonスタイルのクレームは用いないようにした方が賢明かもしれません。

⑤装置クレームの従属クレーム

従属クレームとは、先に記載したクレームを引用して、さらに構成要素を限定したクレームのことをいいます。複数の従属クレームを用いることで、重複した記載をなくし、どこがその発明の特徴であるのかを簡潔に記載することができます。一般的な従属クレームは以下の通りです。上の例が、構成列挙型で記載したパターン、下の記載がJepsonスタイルで記載したパターンになります。


An apparatus according to claim 1, further comprising D.

An apparatus according to claim 1, wherein A is D.


具体的な例として、先ほどのノートパソコンの独立クレームについて従属クレームを作成すれば次のように感じになります。


A computer according to claim 1, further comprising a printer.

A computer according to claim 1, wherein said display is liquid crystal display.


独立クレームでは、displayは特に限定されていません。液晶ディスプレイであってもプラズマのディスプレイであっても、そのクレームが規定する範囲になります。そこで、従属クレームでは、そのディスプレイを液晶ディスプレイに限定する規定を設けました。


一般的に従属クレームは、引用される独立クレームよりもその範囲は狭く設定しなければなりません。例えば、独立クレームでは、液晶ディスプレイと限定しているのに関わらず、従属クレームでディスプレイはプラズマディスプレイであってもよいと記載するのは拒絶理由の対象となります。

⑥方法のクレームのサンプル

それでは、次に方法クレームの典型例について説明します。基本的には、装置クレームと同じではあります。

A method comprising the step of;
A(・・・ing):
  B(・・・ing); and
  C(・・・ing).       
(A、B、Cの工程からなる方法)


例えば、化学物質Cの製造方法について、方法クレームを作成すれば次のように記載します。。


A method preparing C comprising the step of;
heating A(・・・ing):
  reacting said heated A with B to produce C.  

⑦方法クレームの従属項

方法のクレームの従属クレームの典型例を以下に示す。


A method according to claim 1, further comprising the step of ・・・ing.


なお、方法クレームであっても装置クレームと同様にwherein節を用いることもできます。

(2)クレームの作成するためのアプローチ

①クレームが簡潔であることと構成要件の数

大前提を話すとクレームに記載された発明の権利範囲は誰だって先行技術が許す限り広い方が得をします。一般的には、以下のようなアプローチを取ることでクレームされた発明の範囲を広くすることができます。


第1に、クレームに記載された構成要素の数をできるだけ少なくなるように記載します。特許権の侵害は、クレームに記載された構成要素のすべてが実施されることで初めて成立します。(オール・エレメント・ルール:all element rule)


例えば、クレームに記載された発明がA、B、Cの3つの要素からなる装置であれば、第3者がA、B、Cの3つの要素からなる装置を製造したときに初めて特許権の侵害になるのです。


このとき、第3者がA、Bの要素からなる装置やA、B、Dの要素からなる装置を製造したとしても、その第3者が特許権を侵害したことにはなりません。なぜなら、第3者は構成要件Cを実施していないためです。


つまり、構成要素の数が少なければ少ないほど、第3者の行為が侵害として認められる可能性が高まるわけです。また、第3者にしても、クレームに列挙された構成要素が多ければ多いほど、侵害を回避することが簡単になってしまいます。


ちょっとの変更だけで、その侵害をクリアされてしまった場合、その特許は意味をなさないものになり下がってしまいます。したがって、実務者は日米に関わらず世界共通でクレームに列挙すた構成要素の数はできるだけ少なくし、本当に必要なの構成要件だけを記載するよう細心の注意を働かせる必要があります。


第2に、実務者にはクレームの構成要素を包括的かつ簡潔に表現することが求められます。簡単な例を挙げると、構成要素の1つが部材同士を“結合する手段”であった場合、独立クレームにはこれをボルトという具体的手段で記載すべきではありません。


ここで例えば、単に、「結合手段」として記載すれば、「ボルト」のみならず「ネジ」や「接着剤」なんかも権利範囲に含むことができるようになります。また、構成要素には不必要な修飾語をつけないように心掛けてください。構成要素に長い修飾語が付けば、それだけ権利範囲が限定されることになることをお忘れなく。

②段階敵意に範囲を狭く

従属クレームを記載する権利範囲の限定は、上位のクレームでは広く、下位のクレームとなるにつれ、だんだんと段階的に狭くなるように記載するべきです。


例えば、先ほどノートパソコンの独立クレームのクレーム1では、本当はいきなりキーボードと規定する必要はない、キーボードのさらなる上位概念として「データ入力手段」と記載する方がいいのです。


そして、そのクレーム1に従属するクレーム2で初めて「データ入力手段は、キーボードである」と限定すればよいのです。そうすると、例に挙げたクレーム1もノートパソコンだけでなく、もしかするとスマートフォンや携帯電話まで権利範囲が広がりました。


また、クレーム1では「30℃から70℃」と記載し、クレーム2ではより好ましい範囲として「45℃から60℃」に限定することもよくあります。このようにすれば、審査官がクレーム1を拒絶する一方、クレーム2を許可する意思を示す場合があり、特許を受けやすいといったメリットもあります。


また、特許が付与された後に、数値限定に関し「35℃」という数値に関する先行技術が見つかってしまった場合、「30℃から70℃」のクレーム1は無効となるが、「45℃から60℃」のクレームは有効な権利として存続できる可能性が高まります。


構成要素が増えると、迂回可能性が高まります。権利範囲が第3者によってちょっとした設計変更を加えただけで迂回できたのであれば、権利を取得する意味は低くなってしまいます。誰も使用しない特許を持っていても、維持費用ばかりが高額になってしまい、第3者にも脅威になりえないことが多々あります。


そのため、クレームの記載に列挙された構成要素のうち、いずれかが同等の他の代替物で代用されるかどうかをチェックしなければならない。ここで、もし代替物が存在することができるのであれば、第3者がその代替物を取り入れて製品を製造すれば、簡単に侵害を回避することができてしまいます。


つまり、出願人にとっては、もし代替物があるなら、変形例として明細書中に記載して、当然クレームにもその代替物を含むようにさらに上位概念で構成要素を表現しなければなりません。


次に、クレームの記載で本当に最低限の構成要素だけを列挙していることを確認しなければなりません。もし、必須ではない構成要素が含んでいたなら、第3者は必須ではない構成要素を除いた態様でその発明を実施することを試みるかもしれません。その場合も、第3者が侵害を回避することができます。

③翻訳するときの注意点

アメリカの特許実務では、クレームは構成要素を列挙する形式が好ましいのは説明した通りですが、アメリカ特許出願の基礎とする日本出願の特許請求の範囲は必ずしもそのような形式になっていない場合があります。日本出願の場合は、一般的にJepson形式のクレームが好まれることも多いからです。


特に日本出願のクレームでは書き下し調で「AがBに接続され、CがAに接続された装置」と記載されている場合があります。このような書き下し調のクレームは、米国特許出願をするときに、直訳せずに「Aと、Aに接続されたBと、Aに接続されたCからなる装置。」という米国特許実務に合わせた構成要件を列挙する形式に書き直して英訳する方が好ましいのです。


また、日本出願のクレームの表現は、アメリカの審査官にとって極めて複雑なときがあります。また、日本出願時のクレームが、アメリカのクレーム形式に簡単に変換することができない場合がありません。そんな場合には、日本出願のクレームを一度キャンセルして、アメリカ出願用にクレームを最初から起草し直した方が好ましい場合もあります。


アメリカのクレーム形式に変換できないということは、クレームの表現に論理的な矛盾がある、構成要素間の関係が不明確である、またはアメリカ人の審査官にとって理解しがたいの問題を含んでいる可能性が十分に考えられるからです。

④文言侵害を意識

文言上の侵害と、クレームの構成要素の均等論に基づいた侵害の2種類があります。ここで、均等論はあくまで文言上の侵害を補完するために理論であると理解し、最初から均等論に依存するようなクレーム作りをするべきではありません。


もしも侵害が行われたとき、出願人はその侵害を文言上の侵害として差し止めることが先決であります。文言上の侵害は係争対象物がクレームの構成要件または限定のすべてを含む場合にようやく認められるため、文言上の侵害の成否は明確に判断できます。


一方で、均等の範囲は発明の性質や禁反言に依存してしまい、訴訟の法定の場などで弁護士の供述や裁判官の判断などでも変わってしまう、相対的なものにすぎません。そのため、不確定な要因も多い均等論に頼った侵害の成否を争うのではなく、文言上の侵害で決着をつけるべきなのです。


あくまで均等論は文言上の侵害が成立しなかった際に奥の手、非常的または予備的手段として位置付けるべきです。したがって、過剰に均等論に期待をするのは禁物なのです。侵害を確実に差し押さえることができるのは、文言上の侵害のみであることを忘れてはいけません。


文言侵害により侵害を差し押さえられるクレームとは、必須の構成要件のみを列挙し、不要な限定を極力排除し、解釈の疑義が生じない表現で作成されたクレームです。

⑤不要な補正を回避

拒絶理由に対して減縮補正をしてしまうと、禁反言が生じてしまい権利範囲が制限される可能性があります。禁反言の概念、禁反言を避けるための具体的な方策などについては、別の機会に説明したいと思います。


では、禁反言を避けるためにどうすればよいか、例えば、米国特許実務に合わないクレームは避けることが好ましいと言えます。日本の特許出願のクレームは比較的制限が少なく、自由な記載形式で記述されています。しかし、本ブログで述べているように、米国にはクレームドラフティングに関して細かいルールがあります。


したがって、日本の特許出願のクレームをそのまま逐語訳してしまったのでは、出願後にクレームを補正する必要になってしまいます。結局、補正の結果、禁反言が生じてしまい、権利範囲が制限されてしまう恐れがあります。


また、アメリカ人にとって自然な表現を用いたクレームを心がけるべきです。そもそも日本における特許出願のクレームの記載は日本語としても難解になってしまうものが多くないでしょうか。


この難解な表現がそのままクレームに反映されると、特にアメリカ人の審査官は理解できません。したがって、クレームは当然ながら理解可能な英語表現を使用しなければなりません。

⑥出願時に広すぎるクレームは避ける

出願時点から極端に範囲が広すぎるクレームは望ましくありません。その理由は禁反言・フェスト効果というものが適用されるからです。審査が始まると、極端に広いクレームとは先行技術が多数引用され、補正を余儀なくされてしまいます。


先行技術を回避するために補正をすればするほど禁反言が生じ、権利範囲が不当に狭められてしまうことになります。また、クレームの範囲は、何が妥当な範囲のクレームであるかは先行技術との関係によって定まるものです。


だから、前もって特許調査を慎重に行い、クレームの作成に当たっては先行技術を明確に把握することが重要となります。先行技術を把握した上で、先行文献が許す限り、なるべく広くクレームを記載します。

(3)クレームの形式について

①クレームの数

クレームの数はなるべく多い方が特許として登録されやすいし、審査もスムーズになる。ただし、クレームの数が増えるとその分だけ独占的に使用できる発明が増えるということから、審査費用・権利維持費用がかかってしまいます。


アメリカの特許制度では、クレームの数が20個以下であれば、審査費用は基本料金のみ(通常の出願1600ドル、PCT出願1480ドル)であり、追加の審査費用はかかりません。したがって、出願時は20個以内でできるだけ多くのクレームを作成した方がお得です。


もちろんクレームを21個以上作成することはできます。20個を超えたときは、超過したクレーム1つごとに追加手数料60ドルを支払わなければなりません。なお、アメリカの企業の出願では、クレームの数が20個を超えることは珍しくはありません。


また、独立クレームの数が4以上になれば追加手数料がかかります。独立クレームの数が3を超えたとき、超過した独立クレームごとに追加手数料420ドルを支払わなければなりません。独立クレームが過剰に多いと、それだけ手数料全体が高額になってしまいますので注意が必要です。

②マルチクレーム(多数項従属クレーム)

クレーム数について注意点がもう一つ。多数項従属クレームについても注意が必要です。多数項クレームがあると、追加で780ドルの追加手数料がかかります。多数項従属項クレームとは、1つのクレームが複数のクレームを従属しているクレームのことで、例えば以下のようなクレームになります。


A device according to one of claims 2and 3 further comprises D.
(Dをさらに備える、クレーム2または31に記載の装置。)


マルチクレームのクレームは、以下のような別々に分けて記載しても、権利範囲を同じです。


An apparatus according to one of claim 2, further comprises D.
An apparatus according to one of claim 3, further comprises D.


したがって、上述したようなマルチクレームのための追加手数料を回避するために、従属関係を別々に分けて記載するのが一般的です。


特に、日本出願における特許制度では、マルチクレームを用いても追加手数料を支払う料金体系にはなっていないため、マルチクレームが多数使用されています。そのため、日本で出願したクレームのすべてマルチ関係を解消して展開すると膨大な数になってしまう場合があります。


しかし、このような日本のマルチクレームは、特別な技術的意味を持たないで、単に慣例的に行われているだけ、ということもあります。したがって、多数項従属クレームを先頭の独立クレームのみに従属させるようにして、クレームの数が多くなり過ぎないように調整します。

③マルチマルチクレーム(二重マルチ従属)の禁止

アメリカの特許制度絵は、マルチマルチクレームは禁止されており、マルチマルチクレームは拒絶理由の一つになります。マルチマルチクレームは、マルチクレームをさらに従属するマルチクレームを言います。は拒絶される。このようなマルチクレームの一例を下記に示す。

4. A device according to one of claims 1, 2 and 3, further comprises D.

5. ・・・

6. ・・・

7. A device according to one of claims 4, 5 and 6, further comprises E.

この例では、クレーム4はクレーム1、2、3に従属するマルチクレームになります。また、クレーム7は、クレーム4、5,6に従属するマルチクレームです。ここで、クレーム7は、マルチクレームであるクレーム4を従属しているマルチマルチクレームとなります。したがって、審査では上のクレーム7は拒絶されてしまいます。


このマルチマルチクレームについても、日本の特許制度では禁止されていません。特に、日本語明細書をもってPCT出願をするときは、PCT出願時から、マルチマルチクレームを作らないクレームをもって出願することも効果的な対策の1つです。米国の国内移行について特許法371条に基づいて翻訳文を提出する必要があります。


このPCT出願の翻訳文は、PCT出願時の明細書のミラートランスレーションであることが求められる翻訳文でなければならなりません。そのため、PCT出願時のクレームがマルチクレームを含んでいる場合にも、そのマルチマルチクレームのまま国内移行をしなければならなくなります。


マルチマルチクレームを禁止している国は多数あります。マルチマルチクレームを禁止している国ごとに補正したのでは、その補正の分だけ補正費用が追加でかかってしまうので、PCT出願時に最初からマルチマルチクレームの従属関係を解除しておけば費用も安く済み、移行手続きや審査も簡単になります。

④参照番号は付けないこと

クレームには各図面の部材に付された参照番号は入れません。参照番号とは、図面に表された部材を参照するために便宜上に付けられた番号(または符号)です。


ヨーロッパ特許条約に基づく特許出願では、クレームに部材の参照番号を入れることが要求されます。しかし、アメリカ特許出願では、参照番号をクレームの中に記載していると、クレームに記載された構成が図面や明細書に記載された具体的な構成に限定して解釈されてしまうことがあるからです。


もし、アメリカだけでなくヨーロッパへの出願を予定している場合は、アメリカ用の参照番号を除いたクレームと、参照番号付きのヨーロッパ用のクレームの2種類を用意する必要があります。

(4)アメリカ用クレーム作成をの注意点

①クレームに使用する用語の選択の仕方

クレームで用いられる用語は、明細書及び図面によって裏付けられていなければいけません。つまり、他人が読んでも明細書と図面を読むと、クレームに記載された用語の意味が理解できるようにしなければなりません。

そのため、クレームに用いた用語は必ず明細書の中にも同じ用語を使用することを奨めます。実施例の部材名と異なる用語をクレームに用いたとしては、その用語と明細書に用いた部材名との関連付けが明確に分かるようにします。

例えば、クレームの記載に入力手段と記載があれば、明細書の記載に「入力手段は、キーボード、マウス、タッチパネルなどを含む」という記述することで、入力手段と意複数の入力手段を関連付けします。

②クレームの構成要素の名前はSimple is Bestに

アメリカの特許業界でよく「出願人はその出願における辞書編集者である」と言われています。この言葉の意味は、出願人はそのクレームに使われる用語を自由に選択し、その意義を明細書の中で定義することができます。


だからといって、なんでもかんでも定義付けられる訳ではありません。その意味がその技術分野で通常使用される意味と矛盾する意味に用いることはできません。


日本語で作ったクレームとなると、発明が複雑になってしまい、クレームに用いられる構成要件の名前も漢字を組み合わせた長い名称となる傾向にあることもあります。例えば、ソフトウェア関連発明のクレームでは、“属性データ管理選択制御手段”という用語は日本語特有の表現ですね。日本に特許出願をする場合のクレームに用いることは、明細書にしっかりその機能などを定義しておけばさほど問題はないでしょう。


ですが、英訳すると長大化してしまいますし、単なる単語の羅列になってしまいクレームの解釈を困難にしてしまう可能性が高いのです。したがって、日本語での明細書のドラフトするときから、クレームに記載された構成要件の名称は短くシンプルにしておいたことに損はありません。

③前提部分は簡潔でよい。

米国のクレームの記載順は、「前提部+移行部+各構成要素の列挙」という形式が一般的ですが、前提部はできるだけ簡潔な書き方をしなければなりあません。

前提部とは、クレームの最初にその発明の名称とも取れる部分です。例えば、「A video camera for producing an image, comprising・・・」と記載するが、単に「A camera, comprising・・・」としても問題はありません。むしろ、簡略に記載している方がが、不当な限定解釈を避けるためにも好ましいときもあります。

④移行部

クレームの前提部と各構成要件の列挙部をつなげる移行部には、「comprising」を使います。「comprising」の他にも、「comprising of」や「consist of」なども使われることがありますが、「comprising of」や「consist of」を用いてしまうと、クレームされた発明の構成要件移行部の後に続く構成要件だけに限定されてしまうため使わないと決めてしまった方がいいでしょう。

「comprising」を使った場合、クレームされた発明に列挙された構成要件以外の構成要件も含むことができます。例えば、クレームに「An apparatus comprising, A, B and C」と記載している場合、他社から販売されている製品が構成要素A、B、Cに加え、別の構成要素Dが含まれていたとしても、クレームされた発明の権利範囲に含まれます。

⑤wherein節の使い方など

クレームでは、各構成要件を詳しく説明したいときにwherein節を使います。

A computer comprising;
a processor;
a display connected to said processor; and
a keyboard connected to said processor,
wherein the display is connected to said processor and
said keyboard is connected to said processor,

この例では、wherein節を用いて、processorとdisplayとkeyboardの関係を明確にしています。アメリカの審査官の中には、wherein節で記載された文言が発明の特別な特徴と捉える審査官もいるそうです。つまり、wherein節の内容だけで、そのクレームの新規性や非自明性を検討される恐れがあり、上の例では、「processor」や「display」、「keyboard」はすべて公知の範囲であると自認していると解釈されてしまいます。

したがって、出願時の最も広い独立クレームには、最初からwherein節を用いることは避けた方がいいと思います。

その観点から従属クレームにおいて、上位概念Aを下位概念Bに限定するときなどは有効に使えます。

An apparatus according to claim 1, wherein A is B.

wherein節と同じ役割を果たす用語として、adapt to、adapt for、wherebyなどの節があります。しかし、使用頻度としてはwherein節が圧倒的に多いので、ここは難しく考えずにwherein節を選択しておくのが無難だと思います。

⑥構成要素の相互関係は明確に記載する

アメリカの特許制度でも日本と同じように、クレームでは、列挙された複数の構成要件のそれぞれの関係性を明確になるよう記載しなければなりません。つまり各構成要件が他の構成要件とどのような関係があるか記載する必要があります。ここで、各構成要件の関係性は構造的であっても機能的であってもどちらでも構いません。

例えば、各構成要件の関係が明確に記載されていない例を挙げてみましょう。以下のクレームは単に各構成要素が列挙されただけで、互いの構成要素がどのように関連しているか不明だと判断されてしまいます。


例えば、「プロセッサと、ディスプレイとからなるコンピュータ」と記載しただけでは、プロセッサとディスプレイの関係が不透明である。したがって、「プロセッサと、前記プロセッサに接続されたディスプレイからなるコンピュータ」とすれば、プロセッサとディスプレイの構造的な関係が明確になる。

⑦構成要件の記載順にも注意する

クレームの記載するときに構成要素を列挙する場合、まだ述べられていない構成要素を先立って列挙することはできません。述べられていない構成要素を並べている場合、112条違反の拒絶理由を受けてしまいます。

例えば、「An apparatus comprising A; B connected to C; and C.」という風に、Cの構成要件をBの構成要件を説明するために、使用した場合、Cの記載がないのにもかかわらず、Cの記載がないことに対して記載不明瞭とする拒絶理由が挙げられます。


したがって、クレームの構成要件の記載準も慎重に、構成要件同士が関係性を明確に論理的に順序で記載しなければなりません。

⑧構成要件を改行、字下げをする。

アメリカの特許出願では、クレームを記載するとき構成要件を列挙する構成要件列挙型の形式を取るのが好ましいとされますが、各構成要素に改行し、できれば字下げもして記載します。

改行と字下げをする理由は、構成要素の区切れを明確にするためで、構成要件ごとを審査官にも理解しやすいよう記載するためです。日本での特許実務では、クレームを記載するとき改行せずに書き下して記載するクレームもよく見つけていますが、そのまま直訳するとアメリカ人の審査官にとっては普段読み慣れているクレームと異なり、だらだらと長くなってしまうので、審査官が誤ってクレームを理解する恐れがあります。

⑨先行詞の使い方にも注意

クレームの記載するときは、ある構成要件が最初に出てきたときには、「a」を忘れずに付けなければなりません。同じ構成要件を2回目以降に記載する場合には、「the」もしくは「said」を付けます。


この「the」や「said」は、日本の特許出願の場合に「前記」と記載することと同じです。「a」、「the」や「said」の記載の仕方に誤りがあると、審査官から112条の拒絶理由を通知されます。

⑩否定的な表現はなるべく避ける

クレームの記載には否定的な用語を記載するのは避けたほうがよいです。否定的な表現とは、“非”とか、“~ではない”などの記載が該当します。よく先行文献と明確に回避するために、“~ではない”と記載することがよくあります。


否定的な表現を用いていると、クレームに記載された表現が不当に広くなりすぎたり、不明確となったりする恐れがありますので注意する必要があります。たとえば、「非円形」という表現を用いていると、「三角形状、四角形状、台形状」など「円形」以外の形状がすべて含まれてしまいます。


そのため、広すぎるクレームが記載不明瞭であったりするので、112条違反として拒絶される恐れがあります。クレームを作成するのであれば、否定的な表現を表現も検討する必要があります。


しかしながら、発明の性質上において、否定的な表現を避けざるを得ない場合もあります。最近のUSPTOは否定的な表現をクレームに使用しても必ずクレームは不明確とすることはしないかもしれませんね。

⑪クレームに用いる用語は統一させる

日本語でもそうですか、言葉は1つでも2つ以上の意味を持つことがあります。二つ以上の意味を持つ場合、その言葉の意味は、狭い方の意味が優先されてしまいます。これをクレーム間の差異の原則と呼ばれます。


クレーム間の差異の原則があるのは、特許権者が2つの意味を自由に使い分けることができるとすると、特許権者が広い意味の用語に合わせて、狭い権利範囲を不当に拡張することを許してしいます。つまり、特許の権利範囲が不透明になってしまい、安定性に欠けてしまいます。


クレームの中でも、同一の用語を複数のクレームで何度も記載されている場合、どのクレームでも同じ意味として記載されているべきです。


例えば、一つのクレームの中で「storage of device(記憶装置)」を用いていた場合、別のクレームでは「記憶装置」は半導体メモリを意味し、他のクレームでは「記憶装置」はCDディスクを意味するとすることはできません。

⑫個数は限定しない

クレームにおいて構成要件を記載するとき、特に必要なければ個数は限定しないで書くことはしないほうがよいです。「a」や「an」を構成要件に付した場合でも、単に一つの個数に限定する意図ではない旨が了承されています。つまり、「少なくとも一つ」ということを意味してい考えて下さい。


ただ、どうしても単数と複数の両方を含む意図を強調したい場合には、「at least one(少なくとも一つの)」を構成要素の前につけた方がいいこともあります。また、発明の性質上、その構成要素が複数存在が必要である場合には、「a plurality of(複数の)」を付けます。

⑬各構成要件の名称を付け方

クレームの構成要件は、後クレームが引用しやすいように名称をシンプルな名称を付けます。同じ名称を記載しなければならないのは、「first(第1の)」「second(第2の)」などと構成要件の名称の前に付けて記載します。特に、「一方の」「他方の」等「other」の用語は後で引用するときに混同を生じやすいため、「first」「second」として識別する方が引用しやすくて便利です。

⑭数値限定の記載の仕方

数値範囲のクレームを限定する場合、about(約)などの語を付加してもよい時期もありましたが、があったようだが、現在ではaboutなどの語句は数値の臨界値が不明瞭になりやすいから使わない方がよいとの傾向にあります。


特に、その数値範囲の臨界値に近接した先行技術があるとき、進歩性がないとして拒絶理由があります。また、aboutを用いるとクレームが不明確であるとして拒絶される可能性が高くなります。また、仮に特許が付与された後であっても、クレームの解釈に疑義が生じしてしまい、後の特許侵害で特許の有効性に関する無用な争いが生じる恐れがあります。

⑮択一的表現は使わず、包括的表現に書き代える方がいい

クレームでは、なるべく択一的な表現を避けましょう。例えば、「キーボードまたはマウス」と記載しないで、「入力手段」と包括的に記載した方が権利範囲は広くなります。


「キーボード」または「マウス」とだけ記載されていれば、「キーボード」や「マウス」以外の入力装置はもちろん権利範囲には含まれません。たとえば、「タッチパネル」や「ジョグスティック」は含まれません。


また、「入力装置」とすれば、「タッチパネル」や「ジョイスティック」なども含まれます。もし、出願時にキーボードやマウスが必要であることが分かっていれば、「前記入力手段はキーボードである」、「前記入力手段はマウスである」という従属クレームを作成します。出願時には、タッチパネルなど他の入力装置が想定されていなければなりません。

⑯クレームに記載する構成要件はすべて図面に開示されている必要がある

アメリカの特許の規則では、クレームに記載されたすべての構成要件は図面に示されている必要があります。クレームに列挙される構成要件は必須構成であるのだから、基本的には図面のどこかに示されているはずです。


しかし、中間処理の過程で、オフィスアクションを受けて拒絶理由を回避するために、クレームに新たな構成要件を追加する補正をするときは、その新たに限定する構成要件が図面に示されていない場合があります。


したがって、中間処理の過程でクレームに限定することが予想される構成要件も予め図面に記載しておいた方がいいですね。ただし、図面に記載されていない構成要素であっても、新規事項の追加と判断されなければ、図面を補正して構成要素を追加することもできます。

⑰ミーンズ・プラス・ファンクション・クレーム、機能的な表現は避ける

ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームとは、機能的な表現で記載されたクレームのことで、例えばmeans for・・・ingと表現されるクレームのことを言います。日本の出願時のクレームに「〇〇手段」と記載されれば、英語に直訳されれば「means for・・・ing」と訳されます。


ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームは、権利範囲を不当に狭く解釈される恐れがあります。アメリカの特許審査基準では、ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームは、明細書に記載されている実施例の均等論に限定されるからです。


明細書に記載の実施例の均等論に限定される例を挙げます。例えば、クレームに「固定手段(means for fixing)」と記載して、実施例では「固定手段」としてネジとボルトを記載していた場合は、固定手段としてネジとボルトを用いた製品にしか訴求することができません。均等論があるとしてもネジとボルトの均等範囲にしか訴求できません。


しかし、固定手段としてネジやボルトだけでなく、接着剤やホッチキスなども固定手段も考えられますが、明細書の中に固定手段の例示がなければ接着剤を用いた製品には特許権を行使することができません。


ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームと解釈されないようにしたいのであれば、クレームに機能的に記載するのではなく、構造的に特定することです。まず、means for という用語は使わないように記載しなければなりません。

⑱プログラムクレームは認められない

アメリカの特許法101条では、コンピュータプログラムは特許として権利保護されません。また、信号キャリアを含むコンピュータによって読み取り可能な記録媒体も特許として認められません。


なお、日本の特許法では、プログラムの発明についても特許権が認められますから、日本で出願したプログラムのクレームをそのまま英訳してアメリカに出願すると拒絶されてしまいます。

(5) 特殊な形式のクレーム

①マーカッシュクレーム

クレームには、2つ以上の物質を択一的に記載するマーカッシュ群、つまり「selected from the group consisting of A, B and C(AとB、Cからなる群から選ばれた)」という文節を用いることができます。化学物質の発明などで、マーカッシュクレームがよく用いられています。


マーカッシュクレームで記載すれば、物質ごとにクレームを作成する場合と比較して、クレーム数を減らすことができるメリットがあります。ただし、列挙した物質の一部だけを先行技術が見つかれば、権利として有効な部分があります。そのクレーム全体が拒絶または無効となってしまうというデメリットがあります。


なお、マーカッシュクレームの記載した場合、列挙した物質にしか権利範囲は及びません。そのため、一番広い独立クレームには、そのマーカッシュ群を包括的に表現できる用語・上位概念を使用した権利範囲が広くすることができます。

②ジェプソンクレーム

アメリカのクレームの記載は、構成要件を列挙する構成要件列挙型クレームが好ましいとされていますが、ジェプソンクレームを記載しても出願することができます。


ジェプソンクレームとは、前文に従来技術を記載し、そのあとに解消の内容を記載する形式です。ヨーロッパや日本では、ジェプソン形式でクレームを記載していることが一般的です。アメリカの場合、ジェプソンクレームをどのように解釈するのかは判例で確立されていません。


特に、前文に述べられた構成要件の取り扱いが定まっていません。そのため、特別に必要がなければ、特に必要がない限りは、ジェプソンクレームは使うことは避けた方がよいでしょう。ジェプソンクレームの記載例は以下に示します。

In a computer having a processor and a keyboard,
the improvement comprising a display coupled to said processor.

③プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

プロダクト・バイ・プロセス・クレームとは、特徴的な製造方法により、製造することで物質を特定するクレームのことを総称します。。例えば、「・・・の方法で製造された物質A」というクレームです。


このプロダクトバイプロセスクレームで保護される物質は、あくまで製造された物質であって、製造方法ではないと長年に渡り理解されていました。


つまり、そのプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって製造された物質が、異なる方法によって製造された物質が先行文献等で開示されていた場合、製造方法の異なるプロセスであると主張してもその物質は同一または自明であるとされは特許を受けることができません。この判断基準は「ソープ事件」の判例により一般的になりました。


しかし、近年の「アボット事件」の判決では、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの侵害が成立するためには、同一プロダクトがそのクレームに記載された工程を経て製造されていることが条件とするといった結論を出しています。


しかし、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利範囲はいまだ安定していません。それは、2009年のアボット事件の判決の後も、審査基準は改定されておらず、従来からの判断基準も変えていません。したがって、現状プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利範囲について、裁判所と特許庁との間で齟齬がある状態が続いていることになります。


こういった現状を踏まえると、依然としてプロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利範囲は安定せず、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは積極的に使用しない方がいいと言えます。その物質の物理的または化学構造が判明しているのであれば組成物のクレームを採用するか、物質の組成クレームとプロダクト・バイ・プロセス・クレームを併用しましょう。