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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

アメリカ特許法102条の理解を深めよう-アメリカ特許法の新規性-

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http://www.flickr.com/photos/23679420@N00/6214870078
photo by Rajiv Patel (Rajiv's View)


発明について特許を出願して、権利として行使するためには、まずその発明が特許権として認められるか否か、審査されます。その審査を見事突破した発明のみが権利として独占的に使用できる特許権になります。

特許権として認められるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
 ・それまでに開示されたことのない新しい発明であること(新規性)
 ・当業者(他の技術者)が簡単に思いつかない発明であること(非自明性)
 ・他の技術者が繰り返し利用できる発明であること(実現可能性)


これらの要件を一度に説明するのは、とても骨が折れる作業です。

そこで、今回の記事では米国特許の新規性をテーマに書いていきます。新規性を規定しているアメリカの特許法102条をより理解することがアメリカで特許を取ることの一番の基本になります。

(1) 102条(a)(1)

アメリカ特許の要件の一つである新規性の基準は、アメリカ特許法102条(a)(1)に規定されています。102条(a)の日本語訳は次の通りです。

そのクレーム発明が、そのクレーム発明の有効出願日前に、特許され、印刷刊行物に記載され、公に使用され、販売され、またはその他公衆に入手可能であったときは、特許を受けられない

特許要件の基本原則として、新しい発明でないと特許を受けられません。102条(a)(1)では、その基本原則だけを記載し、グレース・ピリオドや発明者/冒人者の開示を考慮されていません。102条(a)(1)に対しては、102条(b)(2)の例外があることに留意しなければなりません。この102条(b)(2)については、後述します。

それでは、102条(a)をもう少し詳しく解説していきます。

①前段部の記載

102条(a)の前段部には、「以下の場合を除き、特許を受けられる」旨が規定されています。これは法改正前の旧102条から変更されていない部分です。出願されたクレームが拒絶されるべきものと判断するとき、法定の要件が適用される理由を立証する最初の立証義務をアメリカ特許商標庁(USPTO)側に課している定義になりますね。


すなわち、USPTOによって雇われた審査官が特許を受けられない一応の拒絶理由を最初に提起しなければならないことを示しています。

②有効出願日の定義

102条に記載された”有効出願日”とは、100条(j)で以下のいずれかの日のことを言います。
・その発明についてのクレームを含む特許または特許出願の実際の出願日。
・特許または出願が、優先権を主張している場合、または先の出願日の利益を請求している場合は、その最先の出願の出願日。

「最先の出願の出願日」とは、次のいずれかの日のことを指します。
 1.仮出願の出願日
 2.非仮出願の出願日
 3.国際出願日
 4.外国特許出願の優先日

なお、「特許または出願」には、再発行出願や再発行特許は含まれません。


また、102条(b)(1)に規定されているグレース・ピリオドの1年は、有効出願日が起算となります。そのため、アメリカだけでなく、他の国に“最先”で出願された特許出願の出願日から起算されることになります。ちなみに、旧102条(b)では、グレース・ピリオドの1年の期間は、“アメリカ”での最先の出願の出願日から起算されており、他国での出願は考慮されていませんでした。


有効出願日については、クレームごとに判断されます。間違えてはならないのは、出願ごとに判断されるわけではありません。すなわち、一つの出願中であっても、複数の優先権を主張した出願であれば、それぞれのクレームが異なる有効出願日を有することだってあり得ます。

③先行文献の定義

102条(a)(1)において、新規性を否定するため証拠となる先行技術になれるものは、特許され、印刷刊行物に記載され、公に使用され、販売され、またはその他公衆に入手可能であったものです。


なお、先行文献は、新規性だけでなく、非自明性の根拠にもなりえます。印刷刊行物は、それよりも以前の公用、販売の申し出、その他の入手性を立証する証拠となり得る場合です。

④「特許され」の解釈

「特許され」とは、有効出願日の前に他の出願によって特許されていること指します。もっと詳しく説明すると、有効出願日よりも前にそのクレームされた発明がアメリカや他の国で特許されている場合には、特許を受けることができません。


ただし、この制度には例外があります。例えば、特許が登録された日から特許が秘密状態になっていた場合には、その特許が公衆の閲覧できる状態になったとき、あるいは印刷物として頒布されたことによって、公衆に入手可能にされた日から先行技術となります。


出願された明細書には実施例として記載されているが、クレームに記載されていない場合は、その出願が公開された日が公衆にとって入手可能となっていることを条件に、「印刷刊行物に記載され」た先行技術となります。


なお、有効出願日の後にアメリカ特許が発行された場合は、102条(a)(1)にいう「特許され」た先行技術には該当しませんが、そのアメリカ特許が有効出願日の前に出願されていた場合は102条(a)(2)において先行技術に該当する場合もあるので注意が必要です。


なお、「特許され」とする記載については、旧102条(a)および旧102条(b)と同じ審査基準が引き続き適用されることになっています。旧102条(a)および旧102条(b)の審査基準では、特許について以下のように補足されています。


秘密特許は、公衆の閲覧が制限されたのであれば、たとえ権利行使可能であったとしても、先行技術として拒絶理由の根拠にすることはできません。特許が先行技術と認められるためには公衆が入手可能であることが条件となります。


先行技術がアメリカ以外の国の特許であるときは、その外国の特許が公開された日付は、特許権が権利行使可能となった日になります。ただし、前述した秘密特許の例外があることに注意して下さい。


特許に関しては、クレームに記載された内容だけでなく、明細書に含まれるすべての情報が先行技術となります。

⑤「印刷刊行物に記載され」の解釈

「印刷刊行物に記載され」とは、クレームに記載された発明が出願日よりも先の特許、特許公開公報、または印刷刊行物に記載されているときは、102条(a)(1)または102条(a)(2)に記載されている先行技術に該当します。


102条(a)(1)も102条(a)(2)のどちらの規定にも「記載され」という語が用いられています。「記載され」という文言を使っている理由は、102条においてクレームに記載された発明に関して、新規性を否定するための先行技術に対して求められる記載要件を旧法の基準から変更しないことを明らかにするためです。


112条(a)では、その分野における当業者がその発明を使用し、かつ製造できるようにクレームに発明を記載する記載要件を規定しています。一方で102条(a)(1)および102条(a)(2)では、単に記載されていることだけを規定しています。この2つの基本的な要件についても旧102条と同様に解釈されています。


つまり、102条(a)に基づいて新規性を否定するための要件は2つあります。

1つ目の要件は、クレームに記載された発明のすべての構成要件がその先行技術の中に明確にまたは内在的に開示されている必要があります。また、これら構成要件はクレームに記載された発明と同じ様に調整または結合されている必要があります。


2つ目の要件は、その先行技術を読んでその分野における当業者が過度な工夫を追加しなくてもその発明を再現できなければなりません。



ただし、先行技術に関し112条(a)については使用方法の開示要件は認められていません。また、その先行技術が再現可能か否かは、当業者の視点から判断されますが、審査官は当業者が有している知識の範囲内の情報は必ずしも明確に開示する必要はないとされています。

さらに、112条(a)に規定されている明細書の記載によるサポートと、102条に基づいてクレームの新規性を否定するための十分な記述には大きな違いがあります。112条(a)の規定においては、クレームに記載されている発明のすべての範囲を明細書に基づいて実施可能(再現可能)としなければなりません。一方、102条に基づいて新規性を否定するためには、当業者がクレームに記載された発明の1つの実施例を製造することができればよいとされています。これは旧法の基準と同一です。



「印刷刊行物」とは何かとする審査基準は、旧102条(a)の審査基準が引き続き適用されます。旧102条(a)の審査基準では、次のように補足説明がなされています。

印刷刊行物とは、広く頒布されているから、またはその技術に興味を持ち、通常の知識を有する者が、妥当な努力によりその場所を特定できる程度に入手可能な状態にある文書です。


また、印刷刊行物は、電子的な文章も含みます。Webサイトであっても、当業者が容易にアクセスすることができる媒体であるからです。インターネットやオンラインデータベースによる開示は、その開示された技術が公に投稿された日から先行技術となります。インターネット上に投稿された日が特定することが困難である場合は、場合は、その開示は先行技術とはなりません。しかし、審査官は科学技術情報センターに対して最も早い公開日の調査を依頼することもあります。


さらに、その印刷刊行物を誰かが見たという事実は必要としません。公衆にとってアクセス可能であれば、Webサイトにアクセス履歴がなかったとしても先行技術となります。大学の図書館に保管された場合、公衆に知り得る状態にあると判断され、印刷刊行物に該当します。フォーラムにおいて口頭で述べられた論文であっても、その複製が制限されておらず配布されているときは印刷刊行物に該当します。だから、秘密扱いの内部文書は印刷刊行物にはなりません。


公衆がアクセス可能になった日は、業務遂行するための書類に示されている日付によって立証できます。例えば、ある企業が公衆にアクセスさせるため、どのように文書を取り扱っていたかを示す証拠、または図書館管理者がどのようにインデックスを付けて、分類していたかを示す証拠によって、日付が特定されます。


放棄された出願は適切に公開されていれば、先行技術になります。中間処理の補正により、公開されなかった技術については、その特許が発行され、ファイルヒストリーからその削除された内容が公衆にアクセスできるようになった日から、先行技術となります。


また、明細書が実際に印刷刊行物として印刷されていなくても、公報に告示され、誰でも閲覧やコピーの入手が可能になれば印刷刊行物に該当します。つまり、その明細書が実際に紙に印刷されたかどうかという事実よりも、その明細書に誰もがアクセス可能であったかどうかで判断します。技術の進歩によって書面の複製が容易になったことを考慮すれば、現在では容易に複製が可能であれば印刷刊行物とするのが妥当だと思っています。


非公開状態であって審査に係属中のアメリカ出願は、印刷刊行物には該当しません。ただし、非公開状態であっても、同じく係属している2つの出願間の発明者または譲受人が同一であって、発明が同一または自明の場合には、仮の二重特許(ダブルパテント)として拒絶されてしまいます。また、同時に係属している2つの出願間の発明者または譲受人が同一ではなく、発明に新規性または非自明性がない場合は、102条(a)(2)に基づく拒絶がされます。


「記載され」の要件に関する審査基準も旧102条(a)の審査基準が引き続き適用されます。記載とどういうものかとは、必ずしも明確な開示だけでなく、暗黙の開示や内在的な開示であってもいいとされます。


また、従来からの組成物について、従来認識されていなかった属性の発見があった場合であっても、その組成物は新規なものとは認められません。つまり、新規な用途や機能、知られていなかった属性であっても、先行技術に内在しているものについては、新規性が認められません。


したがって、先行技術がクレームされた発明と同一であると思われる場合において、別の機能について開示されていなかった場合であっても、審査官は新規性なしの拒絶を通知することができます。例えば、出願人が機能、属性または特徴に関してある化合物をクレームに記載し、先行技術の化合物が同一であるが、その先行技術がその機能を開示していない場合でも、出願人に新規性(特許性)を主張することができません。


ただし、審査官もが先行技術の内在的な開示を根拠として拒絶する場合には、審査官は証拠と理由を提示する必要があります。したがって、単にその特徴が先行技術に内在しているであろうという推測だけでは、新規性の欠如のための根拠とはなりません。


なお、拒絶理由通知が通知されると、審査官を否定するための立証義務は出願人に転嫁されます。したがって、立証義務が転嫁された出願人は、新規性を主張するため、クレームに記載された発明が先行技術の中に内在していない事実を立証しなければなりません。

⑥「公に使用され」の解釈

「公に使用され」とは原則として、旧102条(b)の「公に使用され」と同一の解釈がされるとUSPTOが認めています。「公に使用され」たことによる不特許自由は、以下の条件を満たす場合に生じる。

・公にその発明が使用されたこと
・特許を受けられる状態にその発明があること

「公に使用され」とは、公衆がアクセス可能な発明の使用、または商業的利用のための発明の使用を指します。商業的利用は明らかに公用に該当します。

「公に使用され」は、たいてい販売と同時に行われることが多いですが、公用と販売は一方の行為が生じても必ず他方の行為が生じたとは言えないこともあります。したがって、販売を伴わない公用も含まれます。「公に使用され」は、回数も関係がなく、一回だけの公用も含みます。また、一個人による公用も含まれます。さらに、公然に知られていることは必ずしも公用とは限らないですが、他の102条(a)の拒絶となることはあるので注意する必要があります。い。


秘密状態を維持したままで発明者が発明を使用した場合は、「公に使用され」には該当しません。しかし、その発明が秘密状態で使用されたとしても、その発明品が自由に第3者に見学できる状態で展示されていた場合には、「公に使用され」に該当します。


たとえ内部が見えないように発明品が展示されていても、「公に使用され」になります。その状態において、見学者がその発明品を見て、技術的に理解できるか否かは関係ありません。


発明者による個人的な使用、つまり一定のプライバシーが保護されている状況での使用は「公に使用され」には該当しません。秘密保持契約がない中での使用でも、「公に使用され」にはならない場合もあります。「公に使用され」であるか否かの判断するための材料の一つとして、秘密保持契約の有無があります。


「公に使用され」に該当するか否かは、公然実施された発明に特許を付与しないという思想を前提に、公衆が自由に使用できる発明が奪われないようにし、発明の活用の遅れを防止し、発明の開示を促進させるという目的にあります。


第3者に制限または秘密保持義務を課すことなしに、発明を使用された場合には、「公に使用され」に該当します。秘密保持義務の有無自体は、「公に使用され」た事実に直結しませんが、使用された日時、場所および環境に対して発明者のコントロールがどれくらい及んでいたかを判断するための1つのファクターとして考慮されています。


発明者ではない第3者がその発明を公然使用した場合は、当然ながら「公に使用され」に該当します。また、その第3者がその発明を秘密的に使用していたとしても、公衆が販売または展示された発明を検査や分析して、その詳細を確かめることができれば、その使用は「公に使用され」に該当します。


裏を返せば、販売または展示された製品などから発明の詳細を確かめることができないのであれば、その発明は「公に開示され」には該当しません。また、クレームに記載されていない構成要件が公に使用されていない場合も、クレームに記載された構成要件が公に使用されていれば、その発明は「公に使用され」に該当します。


実験が「公に使用され」に該当するかどうかが問題となりますが、基本的には、その使用が実験を第1目的とし、それに伴う商業的利用が付随的に発生したものである場合は、「公に使用され」には該当しません。具体的には、その公の使用が発明を完成させるための真実の努力による実験であったときは、商業的利用が付随的なものであることを条件に、「公に使用され」には該当しない。また、実験には、発明者が発明に対する需要を図るための市場調査のようなものは含まれない。


旧法では、「公に使用され」たことは、アメリカ内で生じることが条件とされていたが、現行法ではこの制限は取り除かれている。したがって、「公に使用され」たかどうかは、それがどこで行われたどうかに関係なく先行技術として審査で考慮される。

⑦「販売され」の解釈

102条(a)に記載されている「販売され」の解釈について、USPTOは、原則として、旧法の102条(b)の「公に使用され」と同じく解釈すると述べています。。そして、USPTOが規則を策定する過程で、旧法化で作成されたMPEP2133などを参照しています。


一方、「販売され」とするには、立法過程には、公衆による入手方法であることを要求しています。つまり、一般的に公ではない商業活動は、「販売され」に該当しないという解釈がなされる可能性があります。


しかし、「販売され」の解釈を変更することは、アメリカ特許法のこれまでの判例蓄積や特許取得の慣例に極めて甚大な影響を与える恐れがあります。将来、この解釈は変更される可能性があることにも十分に留意しておいた方が良さそうです。


この「販売され」の解釈による不特許事由は、以下の状況を満たす場合に生じます。

・実験的な目的ではない、実質的な販売または販売の申し出がされたこと
・その発明が特許を受けられる状態にあること


「販売」とは、買い手からの支払いを条件に売り手が財産権を与えることに合意した当業者間の‟契約”をいいます。その製品の販売に関して具体的な申し出とその申し出の受け入れがなければ、「販売」に該当することはありません。どちらかの片方の申し出だけでは「販売」にはなりません。


さらに、販売の回数も関係なく、1回きりの販売も「販売」に該当します。ただし、その発明品を販売する権利の譲渡または販売は「販売」に該当しなません。


また、日本の特許法では「販売」と「販売の申し出」という文言を使い分けていますが、アメリカでは特別な使い分けはなく、102条(a)(1)の条文には規定されていません。ただし、アメリカでは「販売の申し出」も「販売」に含めるものと解されます。


ここで、「販売の申し出」とは、一方の当時者が単に受け入れただけで義務的な契約を結ぶことになるレベルでの商業的な販売の申し出を指します。したがって、その販売の申し出が受け入れなかった場合も「販売の申し出」がされたものとなります。販売の申し出がされた製品の配達がされなかった場合、金銭の授受がされなかった場合であっても、「販売の申し出」がなされたもとのとされます。


ただし、不十分な販売の申し出というものがあります。不十分な販売の申し出とは、例えば、品物の値段、数、配達日、特徴などの事実が記載されていない場合には、販売の申し出が不明確とされ、「販売の申し出」に該当しない場合もあります。


販売・販売の申し出は必ずしも公である必要はありません。102条の条文上もPublicという語はUseの身にかかっており、on saleにかかっていません。ただし、この解釈は専門家を二分する論争となっており、今は公ある必要はないとしていますが、この解釈は今後の動向を注視して判断する必要があります。


また、発明の同意がなく、発明が第三者によって販売状態に置かれた場合、あるいは販売製品として実施化された場合であっても「販売され」に該当します。その発明が販売されたか否かの判断には、例えば、販売契約書や購入者との通信における発明製品の記述のような客観的な証拠が必要になります、その販売契約書に基づいて製品を供給しようとする販売者の主観的な意志よりもあくまで客観的な証拠が重要視されます。


一方、購入者側はその発明が販売に提供されているという認識までは必要ありません。その発明が販売されていたか否かは、通常は、覚書、図面、通信、あるいは証言によって立証されることになり、比較的に立証は容易になります。


発明者以外の独立した団体による販売または販売の申し出は、当然に「販売され」に該当します。製品のベンダーを特定した契約書であっても、連絡先、価格、保証、およびメンテナンスなどに製品リリース日を含めた情報を記載したものは、「販売され」たことを立証する客観的な証拠となります。


また、旧法では、「販売され」たことは、アメリカ国内で生じることが条件とされていましたが、国際調和を考慮して、改正法ではこの制限は取り除かれています。したがって、「販売され」たか否かは、それがアメリカ国外で行われていたとしても先行技術として審査の対象となります。

⑧「その他公衆に入手可能な」の解釈

「その他公衆に入手可能」とは包括的規定になります。つまり、その発明が有効出願日前に第3者にとって入手可能であれば、特許を受けることができません。


この包括的制限は、とても広い解釈がなされます。包括的制限は、審査官に対して、その開示が公衆に入手可能となった”手段”やその開示が印刷刊行物またはその他102条(a)(1)に定義された他の先行技術に該当するか否かというだけでは留まりません。その開示が公衆に入手可能性は、例えば、学会の中でのプレゼンテーションやポスター発表、学生が大学を卒業するために執筆した論文などであっても、「その他公衆に入手可能」であることを理由に、102条(a)(1)における先行技術に該当すると判断する場合があります。

⑨第3者による制限の排除

旧法と現行法で異なるのは、発明者自身による開示に対する新規性の取り扱いです。発明の新規性を否定する先行技術とするためには、他人による先行技術の開示でなければなりませんでした。


しかし、現行法の102条(a)(1)では、第3者によるものではなければならないという制限がなくなっています。発明者自身・他人によるもの限らず、すべての先行技術が102条(a)(1)における先行技術となり得ます。これは、グレース・ピリオドが新しく規定されたからです。

⑩出願人による自認

出願人が明細書の中または審査の過程において先行技術と自認した技術は、実際に先行文献として、第3者により開示されていなかったとしても刊行物として先行文献として認められることがあります。


出願人が自ら明細書や図面の記載にprior artと明示してしまった技術は、それが実際に102条(a)に規定された先行文献に開示するか否か関係なく、つまり、本当に公に開示されている先行文献か否か関係なく、新規性および非自明性を否定するための根拠となる技術として取り扱われてしまうことがあります。


102条における先行技術に該当するか否か出願人として判断できないのであれば、その技術については、Prior artという表示をしないほうがよいのです。どうしても必要であるのであればPrior artではなく、発明者自身が知っていた(つまり、第3者は知らない)技術として、Background artやConventional art という用語を使うことが好ましいとされています。


また、ジェプソン形式で記載されたクレームにおいて、前段部に記載した内容は、原則として、先行技術に該当するという推定なされます。ただし、必ずしも先行技術であると判断されるわけではなく、出願人がダブルパテントによる拒絶理由を回避するためにジェプソン形式でクレームを記載したと主張し、さらに審査官によって前段部に記載された技術に対して先行技術をサーチされなかった場合には、その推定は覆ることもあります。


また、IDS・情報開示の単なる文献リストは、先行技術の自認には該当しません。※これについてはどうしてか、今の私には分からないので、勉強しておきます。

(2) 102条(b)(1)-102条(a)(1)に対する例外

102条(b)(1)は、102条(a)(1)に対する例外規定になります。つまり、102条(b)(1)に該当するものは、102条(a)(1)という先行技術にも該当しないことになります。102条(b)(1)の規定によれば、102条(a)(1)の例外として、以下の3つの場合による開示は先行技術に該当することはないと規定しています。

1.グレース・ピリオド内発明者開示の例外
グレース・ピリオド内発明者開示の例外とは、そのクレームに記載された発明の有効出願日前1年以内に発明者・共同発明者によってなされた開示です。

2.グレース・ピリオド内非発明者開示
グレース・ピリオド内非発明者開示とは、そのクレームに記載された発明の有効出願日前1年以内に発明者ではない第3者によってなされた開示であり、その開示した第3者が発明者または共同発明者から直接的または間接的に取得した情報を開示することです。つまり、発明者または共同発明者から直接的または間接的に出願に係る発明に関する情報を知り得た第3者は真の発明者ではなく、冒認者として扱われます。

3.グレース・ピリオド内中間開示の例外
グレース・ピリオド内中間開示の例外とは、そのクレーム発明の有効出願日1年以内に開示された発明の主題(発明自体ではない。)であって、そのような主題の開示の前に、発明者、共同発明者、またはその主題をその発明者または共同発明者から直接的または間接的に取得した第3者によって公に開示された場合は、102条(a)(1)の例外にななります。

ここで、102条(b)(1)に規定されている文言の意味を確認していきましょう。

①「開示」の解釈

102条(b)(1)(A)の「開示」については、条文にも明確に定義付けられているわけではありません。また、不思議なことに102条(a)(1)および102条(a)(2)においても開示という用語は用いられていません。


しかし、アメリカ特許商標庁(USPTO)が明らかにした規則策定過程の見解によると、102条(b)(1)(A)および102条(b)(1)(B)の趣旨は、102条(a)(1)および102条(a)(2)によって先行技術となった開示が、102条(a)(1)および102条(a)(2)の先行技術とならないことを定めることにあるとしています。


つまり、「開示」という用語は、102条(a)(1)および102条(a)(2)に列挙された文献や、技術的事項を公表する活動のすべてを包含するために用いられていると理解した方がよさそうなのです。

②グレース・ピリオドの定義

102条(b)(1)(A)では、有効出願日前の1年間の期間をグレース・ピリオドとして認めています。この有効出願日前の1年間にされた開示が一定条件を満たす場合に、出願人がクレームに記載した発明に対して先行技術とならないとしています。つまり、出願人は、最初の開示から1年の期間内に特許出願をしなければならないことになります。


特に、有効出願日前の1年以内に開示された発明であって、発明者自身による場合やその発明に関する情報を発明者から取得した第3者によって開示されたものは、先行技術に該当しないと規定しています。


グレース・ピリオドは、最先のアメリカ出願または外国特許出願であって、その特許または特許出願が優先権の利益を主張する出願の出願日から起算されます。参考までに、旧102条(b)のグレース・ピリオドは、アメリカの中でのみに出願された最先の出願の出願日から起算されていましたが、現行法ではアメリカのみとする限定はありません。

③102条(b)(1)(A)

102条(b)(1)(A)は、102条(a)(1)に対する一つ目の例外を規定していて、発明者が自分で創作した発明を先行技術から除外している規定になります。これをグレース・ピリオド内発明者開示と言います。

グレース・ピリオド内発明者開示

グレース・ピリオド内発明者開示は、先行技術に該当しません。出願院がこのグレース・ピリオドの利益を享受したいときには、その開示が発明者か共同発明者によってされたことを示す必要があります。


ただし、その出願人の主張が常に認められるわけではなく、結局ケースバイケース判断されます。例えば、その先の開示が発明者によって、どれほど明細書の記載内容を開示しているかによって判断されます。

原則として、審査官は、その開示が発明者または共同発明者によるものであることがはっきりとしている場合には、その開示を先行技術として適用しません。より具体的には、以下の3つの要件を満たす場合には、その開示を先行技術として適用しないとされています。

 ①その開示が有効出願日前の1年以内にされていること
 ②発明者または共同発明者を作者として明記されていること
 ③その開示された印刷刊行物に発明者・共同発明者以外の第3者が作者として明記されていないこと


具体的な例を挙げてみると、例えば、ある特許出願にかかる発明が記載されている論文が、その出願の有効出願日半年前に公表されていたとして、特許出願に発明者A、B、Cが記名され、その論文の筆者にA、Bが記名されていた場合、その刊行物は102条(a)(1)にいう先行技術には該当しません。


反対に、論文の筆者にA、B、Cと記名され、特許出願の発明者がA、Bであった場合、その論文が発明者ではないCが開示した内容である可能性もあるので、その論文は102条(a)(1)の先行技術として取り扱われます。


出願人は、明細書の記載の中で、グレース・ピリオド内の発明者の開示に関があった旨を陳述することができます。明細書の記載の項目に「発明者または共同発明者による先開示に関する陳述」を設けて陳述します。


審査官は、「発明者または共同発明者による先開示に関する陳述」が明細書の中に具体的な参照を含んでいた場合には、その特許出願について、その先の開示は発明者または共同発明者によるものであることが明らかであると判断します。


当然、その開示が他の人を作者または発明者として明記されていないこと、そしてそれに対する反証となるようなものがないことが条件となります。さらに、出願人・発明者は、自ら行った先の開示のエビデンスのコピーを添付することもできます。このような開示のコピーを提出することによって、先行技術として初めから審査の対象から省くようにすることもでき、権利化までの時間を短縮させることになります。


また、補足しておきますが、出願人は、発明者による先の開示について、必ず規則1.77(b)で指定されている陳述の方式を使用しなければならないという規定はありません。そもそも拒絶を克服する必要がなければ、そもそも先の開示について、発明者によるものか否か特定する義務はありません。


しかし、発明者による先の開示を情報として提供されている場合、出願人にとって、またアメリカ特許商標庁にとっても、オフィスアクションへの応答にかかる費用の節約になり、審査の迅速に行えることに繋がり、審査官の心象形成も良き方向に働きます。。

④規則1.130(a)(1)の宣誓書

その先行文献または公への開示が発明者または共同発明者によって開示されたことが明らかではない場合、宣誓書または宣言書の提出することができます。

この宣誓書または宣言書によって、その開示が102条(b)によって102条(a)の先行技術に該当しない旨を立証することができます。一般的に、規則1.130(a)(1)の宣誓書などを提出する場合とは、次の3つの場合が考えられます。


(ア)拒絶理由の根拠となっている先行文献・開示が発明者または挙動発明者によるものである場合
(イ)拒絶理由の根拠となっている先行文献・開示よりも前に、その主題が発明者または共同発明者によって公に開示されていた場合
(ウ)拒絶理由の根拠となっている特許または公開された出願の主題が有効に出願された日よりも前に、その主題が発明者または共同発明者によって公に開示されていた場合


このように、グレース・ピリオド内の発明者の開示を立証する目的で、規則1.130(a)(1)の宣誓書を使用することができます。具体的には、規則1.130(a)の宣誓書によって、その開示が有効出願日前1年以内にされたこと、そしてその開示が発明者または共同発明者によってされたことを立証することになります。

グレース・ピリオド内非発明者開示

グレース・ピリオド内「非発明者(発明者ではない第3者)」開示は、一定の条件を満たしていたときには、その開示は先行技術とならないときがあります。


具体的には、その開示がグレース・ピリオド内であって、さらに、発明者または共同発明者ではなくても、その主題をその発明者または共同発明者から直接的または間接的に取得した第3者によって開示された場合がこれに該当します。


そのような第3者による開示が拒絶理由の根拠となった場合には、真の発明者であることを規則1.130(a)(2)に規定されている宣誓書を提出することでその拒絶理由を克服することができます。

⑤規則1.130(a)(2)の宣誓書

その開示が冒人者によるものである場合、宣誓書または宣言書を提出することによって、その開示が102条(b)の例外規定によって102条(a)の先行技術に該当しない旨を立証することができまする。


一般的に、規則1.130(a)(2)の宣誓書は以下の3つの場合に提出することができます。る。

(ア)拒絶の理由となっている開示が冒人者によるものである場合
(イ)拒絶の理由となっている開示よりも前に、その主題が冒人者によって公に開示されていた場合
(ウ)拒絶の理由となっている特許または公開された出願の主題が有効に出願された日よりも前に、その主題が冒人者によって公に開示された場合


このセクションで説明しているグレース・ピリオド内非発明者開示を立証する目的にあてはまるものは上記の(ア)である。(イ)は102条(b)(1)(B)における冒人者によるグレース・ピリオド内中間開示の例外に該当することを立証するためのものであり、(ウ)は102条(b)(2)(B)における冒人者による中間開示の例外に該当することを立証するためのものであり、それおれのセクションにおいて詳細に述べる。


このように、規則1.130(a)(2)の宣誓書は、グレース・ピリオド内非発明者開示を立証する目的で使用することができる。具体的には、その発明の発明者こそが開示された発明の発明者であり、その発明は発明者または共同発明者によって似寄って第3者他人に伝達され、その他人が開示したことを立証する。これによって、出願人は、グレース・ピリオドの期間内であれば、その発明を開示した冒人者の開示によって利益を受けることになるのである。


発明者・共同発明者によって第3者に伝達されたこと個の立証は、次の2点に基づいて行われますう。
(ア)出願人に記名された発明者が本当に発明を完成させたこと
(イ)当業者がその発明実施できる程度で発明を冒人者に伝達したこと


したがって、宣誓書には、発明者から冒人者へ発明を伝達したことを示す証拠である文書を添付することが要求されます。しなければならない。これについては、旧法で採用されていた発明者から由来した刊行物を克服するための実務が準用されまする。

⑤102条(b)(1)(B)

102条(b)(1)(B)は、102条(a)(1)に対する二つ明の2の例外を規定しており、発明者等の開示の後に生じた開示を先行技術から除外しています。


つまり、102条(b)(1)(B)は以下のように読み替えることができます。まず、その発明のクレームの有効出願日前1年以内にされた中間開示が対象となります。


その中間開示において開示された主題が、その中間開示の前に、発明者、共同発明者、または冒人者によって先に公に開示されていた場合、その中間開示は102条(a)(1)にいう先行技術には該当しないことになります。


これをグレース・ピリオド内中間開示の例外といいます。具体的には、その開示がグレース・ピリオド内にされ、その開示がグレース・ピリオド内の発明者開示またはグレース・ピリオド内の「非発明者」開示の後であることが条件です。


102条(b)(1)(B)の規定は、中間開示の発明と、発明者等によって開示された発明とが同一であることが条件となります。したがって、102条(a)の根拠となる中間開示の中の発明と発明者が開示した発明とに違いがあり、その違いが実質的ではない変更であるか、ありふれた、または自明変形であったとしても、同一のものとして扱われてしまいます。102条(b)(1)(B)では、直接的に「同一」という文言はないが、アメリカ特許商標庁は規則草案の段階で、発明が同一であることを前提にしていることが明示されています。


しかしながら、最初に開示された発明と、その後に中間開示された発明とが同一であることがほとんどあり得ないのではないでしょうか。どの程度の同一性が求められる否かは、正直まだまだ不透明なところが多く、今後の審査基準の整備・最高裁の判断を待つべきでしょうね。


規則1.130(a)(1)の宣誓書は、拒絶の理由として挙げられている先行技術の開示よりも前にされた、グレース・ピリオド内発明者開示、すなわち最先の開示を立証する目的で使用することができます。


具体的には、発明者などにより先の開示の日付と内容を立証します。もし先の開示が印刷刊行物であったときは、宣誓書または宣言書を添付してそのコピーを提出することになります。もし先の開示が印刷刊行物ではなかった場合には、宣誓書または宣言書は先の開示が公の開示であることを示す十分で詳細な説明書を添付することができます。


また、規則1.130(a)(2)の宣誓書は、拒絶理由の根拠として挙げられている開示よりも前にされた、グレース・ピリオド内の非発明者開示を立証する目的で使用することができます。


先の開示が発明者によって開示されることの立証は、次の3点に基づいて行う。
・出願に記名された発明者が本当に発明を完成させたこと
・当業者がその発明を実施できる程度に十分な発明を冒人者に伝達していること
・冒人者による先の開示の日付と内容を立証する


旧法で採用されていた発明者から由来した刊行物を克服するための実務が準用されています。もし先の開示が印刷刊行物であったときは、宣誓書または宣言書を添付してそのコピーを提出することが要求されます。もし先の開示が印刷刊行物ではなかった場合には、宣誓書または宣言書は先の開示が公の開示であることを示す十分な詳細な説明書を添付が必要になります。

(3)102条(a)(2)

102条(a)(2)には、「(2)そのクレーム発明が、151上によって発行された特許、または122条(b)によって公開され、または公開されたものとみなされた出願に記載され、その特許または出願が他の発明者を記名しており、かつそのクレーム発明の有効出願日前に有効に出願されていたとき」は特許を受けられない旨を規定しています。


ここでは、3つのタイプの特許文献が先行技術になると規定している。
・アメリカ特許
・アメリカ特許公開公報
WIPOによって公開された国際出願


そもそも、アメリカ特許などはその発行日または公開日が審査を受けている特許出願の有効出願日よりも前であれば、102条(a)(1)が適用され、そのアメリカ特許等は新規性を否定する先行技術となります。


もし、そのアメリカ特許等の発行日または公開日が審査を受けている特許出願の有効出願日の後であった場合、本条102条(a)(2)に明示されている先行技術となる可能性があります。この条文が適用されるためには、そのアメリカ特許等が審査を受けている特許出願の有効出願日よりも前に、「有効に出願されていた」ことが条件となります

①「有効に出願された」の解釈

A)有効出願日

102条(d)は、「有効に出願された」出願日を特定するための基準を規定しています。102条(d)の記載には、102条(a)(2)における先行技術の日付について規定されています。有効に出願された出願日とは、以下のいずれかに該当する日になります。


・原則として、その特許または特許出願の実際の出願日。
・1つもしくは複数の先の特許出願に基づいてその特許または特許出願が優先権を主張する場合、または継続出願もしくは分割出願が先の出願日の利益を主張することが認められている場合は、その最先の出願日。


さらに、最先の出願の出願日が先行技術が開示された日付として認定されるためには、以下の要件が必要となります。


1.優先権または先の出願日の利益が主張されていること
2.先の出願が適法な期間内に出願されていること
3.共通の発明者がいること、または同一の出願人であること


最先の出願日と認められるための要件では、先の出願に対して後の出願の各クレームについて実際に優先権または利益が認められるか否かは問題とはされていません。つまり、100条(i)(2)における優先権または利益の有効性と、102条(d)における優先権または利益の有効性は、区別して取り扱われるべきとしています。


100条(i)(2)においては、「・・・クレーム発明の有効出願日は、発明に対するクレームが、再発行を求められた特許に含まれていたとみなすことによって、決定される。」とされているのに対して、102条(d)では、「・・・優先権を主張するか、または、・・・先の出願日の利益を主張することが認められている場合は、その主題を記載した最先のそのような出願の出願日」と規定されています。


つまり、102条(d)では、先行技術として引用されるアメリカ特許のクレームに実際に優先権が認められるか、あるいは実際に先の出願の利益が認められるかは問われていません。言い換えれば、100条(i)(2)では、先の出願に実施可能な開示が含まれていることが要件とされるのに対して、100条(d)では、先の出願の係属中に出願されているかと先の出芽の特定がされているという事務的な要件を満たせばよいだけなのです。

B)旧法・ヒルマー・ドクトリン

旧法では、いわゆるヒルマー・ドクトリンに基づき、拒絶の根拠として引用される特許または特許公開公報の日付は、「アメリカで出願日」とされていました。つまり、先行技術となるアメリカ特許が外国優先権主張を伴う場合であっても、そのアメリカ特許が旧102条(e)では、「アメリカに提出され」と明確に規定されており、先行技術の地位を獲得する時点が優先日になるのか否かまで明確には読み取れなかった問題があります。


これに対し、現行法では、先行技術となるアメリカに出願された特許出願が他国の出願に基づく優先権の主張を伴う出願である場合、アメリカ特許等はアメリカでの出願日ではなく、外国の最先の出願日から先講技術として扱われるよう、改正されました。

②「他の発明者を記名」

先行技術として引用されるアメリカ特許、アメリカ特許公開公報、または国際公開公報は、他の発明者を記名しなければなりません。つまり、そのアメリカ特許等と、審査または再審査を受けている特許出願との間で発明者に違いがあった場合は、102条(a)(2)が適用されます。


共同発明者の場合では、1人でも発明者が異なれば、発明者の記名が異なることになってしまいます。たとえ一部に共通の発明者がいたとしても、1人でも発明者が異なれば、発明者が違うものとして取り扱われてしまいます。



(4) 102条(b)(2)-102条(a)(2)の例外規定

102条(b)(2)は、102条(a)(2)に対する例外を規定しています。つまり、102条(b)(2)に該当するものは、102条(a)(2)にいう先行技術にはなりません。


102条(b)(2)の例外とは、具体的には、以下の3つの場合です。


1.非発明者開示の例外
その開示された主題が発明者または共同発明者から直接的または間接的に取得されていた場合、その開示された主題は先行技術とはなりません。具体的には、以下の場合は、アメリカ特許出願Yは、特許出願Xの審査において、102条(a)(2)いう先行技術とはなりません。

図を付ける予定
 
2.中間開示の例外
その開示された主題が、そのような主題が有効に出願される前に、発明者、共同発明者、またはその主題をその発明者または共同発明者から直接的または間接的に取得した他人によって公に開示された場合、その開示された主題は先行技術になりません。


具体的には、以下の場合は、アメリカ特許出願Yは、特許出願Xの審査において、102条(a)(2)にいう先行技術とはなりません。なぜなら、そのような主題が有効に出願される前に、発明者または冒人者によって公に開示されているからです。

図を付ける予定


なお、発明者または冒人者の開示が102条(a)(1)にいう先行技術になるか否かは、102条(b)(1)の例外が適用されるか否かの問題として判断され、102条(b)(2)(B)の問題ではないからです。言いかえれば、グレース・ピリオドの1年という期間については102条(b)(1)の問題であるので、102条(b)(2)(B)の具体例である以下のケースでは1年の開示を示していないことになります。

3.同一による所有の例外
その開示された主題およびクレームに記載された発明が、クレーム発明の有効出願日より早いときに、同一人により所有されているか、または同一人に譲渡する義務に服するものである場合、その開示された主題は先行技術になりません。


具体的には、以下の場合は、アメリカ特許出願Yは、特許出願Xの審査において、102条(a)(2)にいう先行技術とはならない。特許出願XとYはともに同一人によって所有されているからである。


図を付ける予定

以下、3つの例外について詳しく述べる。

①非発明者開示の例外

非発明者開示は、一定の条件を満たしたときは、その開示は先行技術とはなりません。具体的には、拒絶の根拠となっている開示が、その主題をその発明者または共同発明者から直接的または間接的に取得した他人によってされた場合に先行技術には該当しません。


そのような開示が拒絶の根拠とあった場合、真の発明者は宣誓書等を提出し、その発明者自身または共同発明者自身がその開示の主題の発明者であること、およびその主題が他の当事者に伝達されたことを立証することによって、その拒絶を克服することができます。


規則1.130(a)(2)の宣誓書は、このような非発明者開示を立証する目的で使用されます。具体的には、その発明の発明者こそが開示された発明の発明者であり、その発明は発明者または共同発明者によって他人に伝達され、その開示が開示したことを立証することになります。


この立証は、次の2点に基づいて行う。
1.出願に記名された発明者本当に発明を完成させたこと
2.当業者がその発明を実施できる程度に十分な程度で発明を冒人者に伝えたこと


したがって、宣誓書には、発明者から冒人者へ発明を伝達したことを示す証拠である文書を添付しなければなりません。これについては、旧法で採用されていた発明者から由来した刊行物を克服するための実務が準用されます。


そして、引用された先行技術であって他の発明者が記名されているアメリカ特許またはアメリカ特許公開のクレームが、審査を受けている特許出願のクレームと同一、または実質的に同一である場合は、特許庁は出願人に冒人手続の請願を提出するよう求めることで、先行技術に該当しない旨を認めさせることもできます。

②中間開示の例外

中間開示は、一定の要件を満たしているときは、その開示は先行技術とはなりません。具体的には、そのアメリカ特許、アメリカ特許公開公報、または国際公開公報による中間開示が、その主題が発明者などによって最初に開示された時よりも後に、有効に出願されていた場合には、先行技術としての地位を失います。


規則1.130(a)(1)の宣誓書は、拒絶が依拠している開示よりも前にされた、発明者または共同発明者による開示を立証する目的で使用される。具体的には、発明者などによる先の開示の日付と内容を立証することができます、もし先の開示が印刷刊行物であった時は、宣誓書または宣言書を添付してそのコピーを提出する必要があります。


もし先の開示が印刷刊行物ではなかった場合には、宣誓書または宣言書は先の開示が公の開示であることを示す十分で詳細な説明書を添付することもできます。


また、規則1.130(a)(1)の代わりに、規則1.130(a)(2)の宣誓書を使用することもできます。この宣誓書は、冒人者による開示を立証する目的で提出することができます。


具体的には、その発明の発明者こそが開示された発明の発明者であり、その発明は発明者または共同発明者によって他人に伝達され、その他人が開示したことを立証する必要があります。


なお、引用された先行技術であって他の発明者が記名されているアメリカ特許またはアメリカ特許公報のクレームが、審査を受けている特許出願のクレームと同一、または実質的に同一である場合は、特許は出願に冒認手続きの請願を提出するように求めることもあります。

③同一人による所有の例外

拒絶の根拠となっている開示と、その発明とがクレーム発明の有効出願日より前に、同一人により所有されているか、または同一人に譲渡する義務があったときは、その開示は先行技術になりません。


つまり、先行技術となるはずであったアメリカ特許、アメリカ特許公開公報、または国際公開公報に開示された発明と、審査を受けている出願のクレームに記載された発明と同一人に所有されていた場合は、そのアメリカ特許等は先行技術とはなりません。


102条(b)(2)(C)は、旧法103条(c)に対して、発明の所有権の同一性を規定していること、出願人に拒絶を克服する途を提供していることで類似した内容を規定していることになります。ちなみに、旧法103条(c)は以下のように規定されていました。

102条(b)(C)の日本語訳は次の通りです。
「(c)は他人の開発した主題が102条(e)、(f)または(g)によってのみ先行技術となりとき、その主題とクレームされている発明とが、損発明のなされた時点において、同一人に所有されているか、あるいは同一人に譲渡すべき義務があるときは、その主題は特許を受けられる。」


しかしながら、102条(b)(2)(C)と旧102条(C)とは、先行技術としての取り扱いに大きく違う点があります。改正法においては、102条(b)(2)(C)の要件が満たされると、そのアメリカ特許、アメリカ特許公開公報、および国際公開公報は、102条および103条もおいても先行技術にはなりえません。


一方、旧法の場合、旧103条(c)の要件が満たされても、旧102条(e)、(f)および(g)に該当する先行技術は旧103条(非自明性)における特許性を阻害するとされていました。言いかえれば、103条(c)の要件が満たされていても、旧102条(e)、(f)または(g)に該当する先行技術は旧102条(新規性)の特許性を阻害してしまうことになっていたのです。


そこで、現行法では、102条(b)(2)(C)の要件が満たされると、そのアメリカ特許、アメリカ特許公開公報、および国際公開公報は、新規性、非自明性の両方の規定に対して特許性を阻害しないように改正されました。


また、102条(b)(2)(C)は、アメリカ特許、アメリカ特許公開公報、および国際公開公報を新規性及び非自明性意外のいかなる拒絶理由の根拠からも除外していないので注意が必要です。つまり、102条(b)(2)(C)は、アメリカ特許等が単に102条及び103条の先行技術に該当しないと規定しているだけに過ぎないのです。

例えば、二重特許(ダブルパテント)による拒絶理由の根拠となることはあります。また、例えば、102条(b)(2)(C)に該当し先行技術とならない文献であっても、112条(a)に基づく実施可能要件の違反を示すための技術水準として用いることもできます。


なお、102条(b)(2)(C)の例外は、102条(a)(1)の規定により、クレームに記載された発明の有効出願よりも前の開示には適用されることはありません。クレーム発明の有効出願日より前に公開されたアメリカ特許、アメリカ特許公開公報、および国際公開公報は、102条(a)(1)の規定によって先行技術となり、その所有権や譲渡義務の有無は考慮されません。


102条(b)(2)(C)に該当することを主張するためには、出願人の明確な陳述書があればそれで十分と解釈されています。つまり、ある文献が先行文献として引用され、その文献を102条(b)(2)(C)に基づいて克服したいときは、そのような陳述書を提出すれば事足るということです。このとき陳述書には、拒絶の根拠となっている開示と、その発明とが、クレームに記載された発明の有効出願日より前に、同一人により所有されているか、または同一人に譲渡する義務があった旨を示さなければなりません。


陳述書の提出のみで十分とは書きましたが、できれば補強的な証拠があればより好ましい。補強的な証拠としては、例えば、譲渡証書の写しなどを提出することができます。


しかし、これは義務的なものではなく、審査官が陳述書の真実性に対して疑念を抱かない限り、そのような証拠の提出を求めることはなりません。つまり、102条(b)(2)(C)の取り扱いについては、旧103条(c)に関連して設けられたMPEP706.02(1)(2)(Ⅱ)が適用されることになります。

④共同研究契約

102条(c)は、共同研究に対して102条(b)(2)(C)を適用する場合に関して、以下の3つの要件がみたされることが必要であると要件を追加しています。

1.クレームの発明の有効出願日以前に有効で会った郷土契約の一人若しくは複数の当業者によって、またはそれらの代理にとして、開示された主題が研究され、クレーム発明がなされた場合
2.クレーム発明が、共同研究契約の範囲内で行われた活動の結果として、なされた場合
3.クレーム発明のための特許出願が共同研究契約の当事者の名前を開示し、または開示するように補正された場合

共同研究契約という用語は、クレームに記載された発明の分野における実験的、開発的、若しくは研究的な業務の遂行のため、2人以上の者または団体によって結ばれた書面契約、条と、または協力契約を意味します。前記3つの要件をすべて満たしていた場合、その共同研究は102条(a)(2)にいう先行技術には該当しません。


その共同研究が先行技術から除外するためには、出願人は、拒絶理由の根拠となっている発明が共同研究契約の当事者によって、またはその代理によってなされた事を主張する陳述書を提出することができます。出願人は、この陳述書でその共同研究契約が有効出願日前に有効であったことも主張する。


そして、出願人はその共同研究契約の範囲で行われた活動の結果として、拒絶理由の根拠となっている発明が完成されたことを主張するためには、原則として、出願人による陳述書があれば十分とされます。


もし共同研究契約の当事者の氏名が出願に記載されていない場合には、出願に補正でそのような当事者の氏名を発明者として追加しなければなりません。共有所有権を立証するためには、補強的な証拠を提出する必要もなく、審査官が共同研究契約の存在について疑念が生じない限り、特に、審査官が証拠の提出を求めることもしない。

⑤発明者の誤り

現行法では、旧102条(f)のような規定がありません。ちなみに、102条(f)は以下の場合は、特許を受けられないと規定していました。

しかし、現行法は特許が真の発明者または共同発明者を記名することを要求しています。願書に誤った発明者を記名していた場合は、出願人はそのような状態を規則1.48に基づき発明所有権を訂正するべきであるとの理解されているためです。。


極めてまれな場合にはなりますが、その出願が正しい発明所有権を記載しておらず、出願人は発明所有権の訂正を行っていない場合は、101条に基づき拒絶されることになります。