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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

アメリカ特許法112条(b)の法解釈と留意事項

http://www.flickr.com/photos/33167345@N00/2041216964
photo by bluestar_tam

前回のブログ記事では112条(a)について記載していきましたので、今日のブログのテーマは、その次の112条(b)について説明していきたいと思います。

(1)112条(b)

112条(b)の規定には、「明細書は、出願人が自己の発明と信じる主題を具体的に特定し、明確に請求した一又は複数のクレームで完結するようにしなければならない。」


112条(b)の規定を分かりやすく解釈すると、次の2つの要件に分けられます。
★出願人が自分の発明だと信じる主題をクレームに記載しなければならない。
★他の発明とクレームの記載は明確に差別化できるように記載する。

この2つの要件のうち、1つ目の要件は、主観的なものになってしまいます。

1つ目の要件とは違って、2つ目の要件がその分野における通常の知識を有する仮想的な人物、いわゆる当業者にとって、クレームに記載された範囲が明確でなければならないことを規定しています。

(2)自己の発明と考える主題

出願人が自分で記載するクレームには、当然、出願人が自分の発明だと信じているものを記載されているもので、通常はこのような拒絶理由を受けることはほとんどありません。特に反証がないのであれば、出願人がクレームに記載した発明は、その出願人が権利化したい自分の発明であると推定されます。


しかし、出願人が中間処理の過程において、最初に記載されたクレームが自分で記載された発明と考えた主題と一致していないことを述べていた場合には、拒絶されてしまいます。


そのような証拠は、出願人が提出した意見書、答弁書、規則1.132の宣誓供述書の中に見つかることがあります。出願人が自分の発明と考える主題を、出願の審査の過程で変更してもよい。


クレームに記載された発明に必要不可欠な要素を含んでいない場合、112条(a)に基づいて、実施可能要件違反となります。ただし、発明に不可欠な要素間の関連付けが不十分であるとしたら、112条(b)に基づく拒絶がすることがあります。

(3)クレームが不明確となる場合

出願人は、クレームに記載し、権利として保護を受けたいと願う主題を特定できるように、かつ明確に請求しなければなりません。


そのため、クレームの記載に矛盾を含んでいた場合、用語が不明確である場合は、112条(b)違反として拒絶されてしまいます。なお、審査官は、クレームの記載が多少に不明確だったとしても、その不明確性が致命的だとみなされていない場合、審査官が自らクレームを解釈して、112条(b)による拒絶と、先行技術を根拠とする拒絶の両方を通知します。


112条(b)に基づいてなされる拒絶理由は、次のようなケースで通知されます。

①用語の定義

出願人はその出願における辞書編集者であると規定されています。クレーム、明細書に記載されている用語の意味は、出願人が明細書の中で定義することができます。ただし、出願人の定義では、その技術分野の当業者が理解できる範囲である必要があります。もし、当業者が使用する通常の意味と異なる意味として定義したのなら、そのクレームに記載されている用語の解釈に矛盾が生じるとして、112条(b)を根拠にした拒絶理由がなされます。

②矛盾のある明細書

クレームに記載された発明が明細書に開示している内容と矛盾があってしまった場合や、クレームの記載に使用した用語が明細書で特別な意味が与えている場合、その用語の意味が通常の意味と矛盾している場合でも、クレームの記載が不明瞭としても、112条(b)を根拠にした拒絶理由がなされます。

③クレームに記載された権利範囲の幅

クレームに記載された発明の範囲が広過ぎると言っても、必ずしも不明確とされるわけではありません。クレームの記載の範囲が広かったとしても、クレームの記載が明確に他の先行技術と違いが分かればそれでよいとされます。

言うまでもありませんが、クレームの記載が広すぎた場合、明細書の記載内容によってサポートがされていない場合、明細書の記載では実施できない場合でも、112条(b)に基づく拒絶理由を受けます。(もちろん、112条(a)に基づく拒絶理由を受ける場合もあります。)

④新しい用語

クレームのすべての用語の意味は、出願に時において明細書または先行技術から明確でなければならない。また、出願人は、発明を的確に表現できる新しい用語を用いることができる。技術開発の初期には、新しい用語を用いる子尾tが不可欠であろう。ただし、その新しい用語に通常使われている意味とは反対の意味を与えることが好ましくない。

⑤相対的な用語

形容詞など程度を表す相対的な用語を使用してしまうと、クレームの記載が不明確であると判断される恐れがあります。形容詞だけでなく、程度を表す相対的な用語は、その基準とするものが明確になっているか否かによって、そのクレームの記載が明確であると判断されます。


例えば、クレームの記載に「ドライバーの身長の25%~40%のホイールを有する四輪車」は不明確とされ、クレームの記載としては適切ではありません。その理由はドライバーの身長は人によって異なるので、クレームに記載された数値範囲も変動してしまうためです。

また、日本では請求項の記載に“約”と記載されていれば軒並み記載不明瞭を理由とした拒絶理由が通知されます。しかし、アメリカではaboutという用語を用いても寛大であり、記載不明瞭とみなされない場合があります。

aboutという用語を使った場合は、明細書に記載されたその用語の定義が考慮されるためです。ます例えば、「約300%毎秒を超えるゴムの伸長速度」という限定は、不明確とはありません。ゴムの伸長速度はストップウォッチを用いて明確に特定することができるためです。


一方で、aboutを数値範囲に付した場合、その数値範囲に近接する先行技術が見つかり、aboutという用語がどの程度の範囲まで指しているのかが示されていない場合は、クレームは不明確とされます

Essentially という用語を使っても原則としてクレームは明確であると判断されます。例えば、「本質的にリン酸化合物を含まない二酸化ケイ素」というクレームは明確であると判断されます。なぜなら、当業者の通常の知識であれば、二酸化ケイ素の中に回避することのできない不純物の範囲を特定することができるからです。通常の実務であれば、このような文言は使わない方がよいのは言うまでもありません。

Substantiallyという用語もある物体・物質の特性を表すため用いられます。例えば、「銀抽出溶媒としての化合物の有効性を実質的に高めるため」という限定がクレームに記載されていても、そのクレームは不明確とはなりません。ただし、上記のような例は、発明の効果をしばしば特定していることもあるので、クレームにわざわざ記載する必要はないかもしれません。

⑥数値範囲

1つのクレームの中広い範囲とさらにその範囲を狭くした範囲の両方を含むように記載した場合には、不明確であると判断されます。例えば、「添加材の添加量が2%~10%、好ましくは5%~7%」といった風にクレームに記載されていれば、そのクレームは不明確であるとみなされてしまいます。

ただし、被従属クレームに広い数値範囲が記載され、その従属クレームによりも狭い数値範囲を記載すすることにはなんら問題はありません。

数値範囲の上限または下限の片方がない場合は、不明確であるとみなされる場合があります。例えば、ある合金に関するクレームの記載で、「銅が20重量%~60重量%を含み、錫が30%以上を含む合金」とした場合、そのクレームが表現する合金は、銅も錫も60重量%含む合金、つまり単純合計120重量%で100重量%を超えた合金もクレームに表現された合金も含まれてしまうので、実在しないので不明瞭なクレームの表現とみなされます。

他にも、例えば、独立クレームで「少なくとも30重量%の亜鉛」と特定し、従属クレームで「亜鉛が含まれていない」と特定した場合はクレームの記載が不明確と判断されます。

⑦先行詞の欠如

先行詞とはそのクレームの記載された構成要件と同じ構成要件を参照しているtheやsaidを付けなければなりません。子の先行詞が適切に使用されていないクレームの記載については、不明確であるとみなされます。


例えば、said electrode またはthe electrode として記載しているにもかかわらず、それ以前にa
electrodeという構成要件が記載されていないがないクレームは不明確になってしまいます。


また、クレームにsaid zinc electrodeと記載されているのにも関わらず、それ以前にa
electrodeとしか記載されていなければ、不明確となります。zinc
electrodeとelectrodeは異なる構成要件であるからです。

ただし、クレームに記載されている用語またはフレーズが明細書に開示されていない場合であっても、クレームは必ずしも不明確にはなりません。明細書に直接的に記載がなくても、例えば、図面において表されていればそれでよいとされます。

図面にも開示されていないとしても、出願人は発明を定義するため、広い裁量を有しています。出願にんが選択する用語またはフレーズが発明を妥当な程度に明確かつ正確に記載されているのであれば、拒絶されることはありません。具体的には、クレームに記載されている用語が上位概念であり、明細書に記載されている用語に上位概念が記載されていなくても、下位概念で記載されていてもよいとされています。

⑧他のクレームの限定への参照

他のクレームに記載された限定を参照するクレームは必ずしも不明確ではありません。例えば、「集電体と、前記集電体の上にクレーム1の製造方法を用いて製造された電極ペーストが塗布された電極活物質層とを含む電極」であれば、クレーム1の記載が「AとBを調合し、電極ペーストを作成する製造方法」であれば問題ありません。(だいぶ雑な記載ですが。)


 米国の特許制度では、独立クレームが3つを超過すると審査料金が跳ね上がります。そのため、他のクレームを参照することで、独立クレームの数を少なくする狙うこともあるかと思います。


しかし、他のクレームを参照することで、混同を生じ得たり、矛盾を有する場合には、不明確となります。


⑨機能的な表現を用いたクレーム

絶対に機能的表現を用いてはいけないということではありません。。例えば、「前記還元剤を混ぜる工程と」という表現は、権利の境界線が明確であるため、認められる。また、組み立て可能な部品についてのクレームで「筐体がスライド可能なように弾性部材を設けるという表現は権利範囲として明確に他の発明と区別ができれば認められます。

しかし、ソフトウェア関連発明であれば多少の注意が必要です。例えば、A情報とB情報を受けて、C信号を生成すると記載した場合、C信号を演算によって生成される場合、人間の脳の中で計算できることも含まれるので、構造物として特定できないとみなされ発明が不明確されません。(だいたいミーンズ・プラスファンクション・クレームと認定されます。)

⑩選択肢のある記載

マーカッシュクレームも不明確とはみなされません。例えば、「Rは、A、B、Cからなる群より選択されるもの」という表現を含むクレームはなんら不明確ではありません。

マーカッシュクレームは化学、薬学、バイオテクノロジーの分野の発明において、使用されていますが、機械やソフトウェアの分野において使用しても問題はありません。ただし、マーカッシュクレームが不明確性をされる場合や、不当な多重性がある場合や、選択するものに共通性がない場合は拒絶されることもありません。拒絶される場合の例としては、「Mn、Sn、Zr、Naからなる群より選ばれる遷移金属」とクレームに記載されていた場合、Naは遷移金属ではないため、矛盾した表現として不明確とされます。

また、「or」をクレームに記載したからといっても、必ずしも不明確とはなりません。例えば、「Rは、A、B、またはC」「全体、あるいはその一部」という記載であっても、そのクレームは不明確とはみなされません。

⑪否定的な表現

否定的な表現をクレームに使用しても、クレームの記載が原則として不明確とみなされることはありません。ただし、古い判例では、否定的な表現に対して厳格であったと思われます。


なぜなら、否定表現は発明の範囲を広くすることになります。例えば、「Aは、金属ではない」と記載されていれば、裏を返せば、Aは金属でなければなんでもよいと判断されるからです。

そのため、否定的な表現は、発明者が創造しなかった物質を包含することもあるからです。

⑫古い先行技術の組み合わせ

古い組み合わせ理論とは、発明が既存技術の改良または改善であるが、発明の要素の一部に一般的で古い技術の組み合わせを含んでいた場合に、そのクレームを拒絶すべきであるという理論になります。る

この理論はもはや時代遅れであり、クレームが記載要件を満たしている限り、その一部に古い技術の組み合わせを含んでいても拒絶されない。現在の審査基準では、この古い組み合わせ理論は、有効ではありません。

⑬冗長過ぎる表現

クレームがつらつらと長く、審査官が理解できないと判断された場合にも発明が不明確となります。その記載が発明の本質を捉えられておらず、重要ではない記載がつらつらと含んだ結果、冗長となってしまっている場合、審査官が理解できないと判断するリスクも多く、拒絶されてしまいます。


⑯多すぎるクレーム

クレームの数が膨大であるとき、発明の範囲や性質に照らして不適当であれば、拒絶されます。発明の本質とは異なるところでクレームが規定されていれば、拒絶されます。クレームの数が増えれば増えると程、審査料や維持費も多くあります。


クレームの数が多すぎるとき、審査官が拒絶理由通知の前に、クレームの数の削減または選択を求める場合がある。出願人がクレームの削減や選択に応じない場合は、112条に基づいて不当に多いクレームの数を理由に出願が拒絶されます

⑮ユース・クレーム

具体的な工程が記載されていなく、例えば、「○○を利用する方法」という表現を用いたユース・クレームは、不明確とみなされます。例えば、「クレーム4の、化合物を利用して、電極を製造する方法」などは不明確になります。なぜなら、発明を特定するためには、その構成要件をどのように使用するのかまで特定しなければなりません。

また「炭化水素系を一定の割合に有するカーボン・オーステナイト鉄の合金の、摩擦力を自転車のブレーキ部品としての利用。」も不明確です

⑯プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

プロダクト・バイ・プロセス・クレームもそれ自体は不明確にはなりません。プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、プロダクトであるので、物の発明であり、方法によってその物を特定したクレームになります

プロセスに言及したクレームは、物を特定しているか、方法を特定しているか、を明確にしておく必要があります。また、クレームに記載したプロセスを用いていない物が先行文献として見つかったとしても、その発明の新規性も否定されます。

⑰図面などの参照

通常、クレームは単独で完結していなければなりません。図面や表への参照する記載したクレームは、他に発明を特定するための実質的に命名方法をみつからないという例外的状況のみ、認められます。


例えば、化学式を参照して、発明を特定することが考えられます。「【化1】に示した化合物を含む、電極」であれば、問題はありません。

⑱オムニバス・クレーム

オムニバス・クレームとは、明細書及び図面に記載した装置、という表現を使用したクレームであって、当然拒絶されます。何がクレームに記載された発明に含まれており、何が除外されるものかが不明であるためです。

⑲化学式を用いた表現

化合物の化学構造を示した化学式を含んだクレームは、しばしば用いられます。化学式を含むクレームは、その化学式の記載に誤記があった場合を除いては、不明確とはされません

化学物質を用いたクレームは、その構造が提示されていない、あるいは構造の一部しか提示されていないからといって、必ずしも不明確とはなりません。例えば、化合物の一部をAで置換して、AはBやCであっても良いとする記載です。


化学物質のクレームは当業者が一般的に知っているその物質の名前で記述することができます。未知の化学物質である場合は、その物理的または化学的特性によって特定することもできます。

また、化学物質は、不明確性の問題が生じない限り、プロセスによっても特定することもできます

⑳商標や商号

商標や商号を含んだクレームは、必ずしも不適切というわけではありませんが、その使われ方に注意を要します。商標等はその製品の出所を特定する機能を持ち、製品自体を特定しているわけではないことを認識しておくべきです。

 商標や商号であっても、全て同じものを表現しているわけではありません。

例えば、その商標や商号をクレームに使用すると、その出所表示機能を薄め、商標権の価値を不当に低下させる恐れがある場合や、商標や商号の不適切な使用に該当すると場合には使用するべきではありません。

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