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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

限定要求/選択要求に対して、日本企業が取れる応答とは?

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http://www.flickr.com/photos/42386632@N00/8528725328
photo by maclauren70


日本企業にとっては、米国やその他の海外の出願については、出願費用や翻訳の費用などを考慮すると、やはり相当のコストが掛かってしまうことになります。


そのため、米国に向けて出願するときは、日本に出願したいくつかの出願を一つの明細書やクレームにまとめて出願する日本企業も多いことでしょう。そうすれば、少なくとも手続に関する費用についてはまとめられて、費用を抑えることになります。


複数の出願を一つにまとめる際に、複数の発明の上位概念化できればよいのですが、日本と同じく米国にも単一性について考慮しなければなりません。米国出願においては、一つの出願の中に複数の発明の主題が含まれていると、つまり単一性がないと審査官に判断された場合、限定要求あるいは選択要求を受けてしまい、複数の発明の主題の中から審査を受ける発明の主題を一つに絞らなければなりません。

(1)限定要求とは

限定要求(restriction requirement)とは、1つの出願中に互いに独立した発明を記載したクレームを2つ以上含んでいる場合、審査官が出願人にその2以上のクレームのうち審査の対象とするクレームを限定することを要求することです。



出願人が限定要求に対して応答できる期間は短く設定されています。限定要求を求める書面には、大抵30日以内であることを求めています。書面をアメリカの代理人が受け取り、日本とやり取りを行う必要があるので、迅速な対応が求められています。


具体的に限定要求は以下の場合に発せられる。
★単一の出願の中に、互いに独立した異なる発明がクレームに記載されていて、かつ、審査官の審査における負担が大きいとき

「互いに独立した」とは、複数の発明が構造、作用、あるいは効果に関して相互に関連していないことと定義されています。例えば、複数の発明が同時に使用できない場合や、方法の発明を実施するときにその装置を利用しない場合などがある。

また、限定要求には複数のクレームに対してその特許性を判断する負担を軽減する目的があり、その厳しい負担があるか否かの判断は審査官の裁量に委ねられています。したがって、限定要求の目的は、審査官の負担を軽減し、審査を円滑に進めることにあります。

限定要求の対象になるか否かの判断原則として、USPTOは以下のような具体例を挙げられています。

例1

発明1:A
発明2:A+B

この場合、Aが発明の特別な特徴であるとき、限定要求の対象とはならない。

例2

 発明1:A+B
 発明2:a+B
※Aは、aの上位概念に該当する。

この場合、aが特別な特徴(STF:Special Technical Feature) と判断された場合、限定要求の対象となる場合があります

例3

 発明1:装置
 発明2:方法

この場合、発明1の装置と、発明1の装置で発明2を実施する方法という関係で、その方法が発明1に記載されている装置以外の装置でも実施できることができる場合、発明1の装置が発明2の方法でも実施できる場合のいずれかの場合に該当するときは、限定要求の対象となり得る。

例4

 発明1;物
 発明2:発明1の物を製造するための製造方法

この場合、発明2の製造方法が発明1の物と他の物を製造できる場合、発明1の物が発明2の製造方法以外の製造方法でも製造できる場合のいずれかに該当するとき、限定要求の対象となり得る。

例5

 発明1:製造装置
 発明2:製造装置による生産物

この場合、発明1の製造装置が発明2の生産物以外の生産物を製造することもできる場合、発明1の生産物が発明2の製造装置以外の製造装置でも生産することができる場合のいずれかに該当するとき、限定要求の対象となり得る。

例6

 発明1:物
 発明2:発明1の物を使った方法

この場合、発明2の方法が発明1の物を使用しなくても実施できる場合は限定要求の対象となり得る。

例7

 発明1:物A
 発明2:物B

この場合、発明1の物Aと発明2の物Bが同時に使用することなく、発明1の物Aと発明2の物Bが物理的に異なる構造、作用、機能もしくは効果を持っている場合、発明1の物Aと発明2の物Bが範囲を重ならず、相互に排他的な場合、発明1の物Aと発明2の物Bが互いに自明な変形ではない場合、のいずれかに該当するとき、限定要求の対象となり得る。

例8

 発明1:方法1
 発明2:方法2

発明1の方法1と発明2の方法2が同時に使用することはなく、発明1の方法1と発明2の方法2が物理的に異なる方法、作用、機能もしくは効果を持っている場合、発明1の方法1と発明2の方法2の範囲が重ならず、相互に排他的である場合、または発明1の方法1と発明2の方法2が互いに自明な変形ではない場合のいずれかに該当するとき、限定要求の対象となる。

例9

 発明1;中間体
 発明2:最終物

発明1の中間体が発明2の最終物以外の物を作るのに使用できる場合、発明2の最終物が発明1の中間体1以外の中間体から製造される場合なども限定要求の対象となり得る。

審査を担当する審査官が、一つの出願の中に、異なる複数の発明を規定する複数の発明が含まれていることを特定した上で、これらの複数の発明をまとめて審査することが厳しい調査負担になるのか否かという観点で判断しています。

厳しい調査負担とは、例えば、1つの出願に含まれている互いの発明が以下のいずれかに該当する場合は特に厳しい調査負担があると判断されることになります。

★異なる特許分類(IPC、USC)を調査しなければならない場合
★異なる情報源を調査しなければならない場合
★異なる調査検索式を作成しなければならない場合

私の感覚的な捉え方になるかもしれませんが、複数の発明をクレームに記載する場合、両クレームの共通部分は同じ表現を用いて表現すれば、高い確率で限定要求の発生を避けることができると思います。


また、1つの出願で同じ技術範囲に属する複数の独立クレームを含んでおり、その複数の独立クレームが異なる技術的特徴をクレームしている場合、限定要求が発せられる確率は高まります。


同じ技術範囲に属する複数の独立クレームを含ませるのであれば、技術的特徴を可能な限り共通させることが必要となります。

(2)選択要求とは

選択要求(election requirement)は、以下のいずれかの場合に発行されます。
★出願が包括的クレームまたは連結クレームを含んでいるが、この包括クレーム等が複数の種(species)を包含し、この包括クレームが複数の種が相互に独立または別個のものである場合

★包括クレームを含んでおらず、かつ出願が複数の種を含んでいる場合


慣例的に条文に使われている種と表現していますが、実施形態・実施例と言い換えるものです。別の言い方をすれば、1つの上位概念のクレームがあって、従属クレームに複数の実施形態をカバーしている場合、上位概念のクレームと下位概念のクレームに幅が大きく、互いの下位概念のクレームがそれぞれに共通性が薄い場合に選択要求の対象となります。


また、明細書に複数の実施例が記載されており、それらを包含する包括クレームがない場合も、選択要求の対象となります。


包括クレームが適切なクレーム数を超える種を包含している場合も選択要求の対象となります。包括クレームが適切な数を超える種を包含している場合も、適切な数の種となるよう選択要求が出されます。種が独立または別個であるか、上で述べた限定要求のときの判断基準が適用されます。


限定要求と選択要求の大きな違いとして、限定要求は出願人に「クレーム」を選択することを求めるもの対して、選択要求は出願人に1つの出願に複数含まれている「実施例」を選択することを求めるものです。


包括クレームとは、例えば、明細書が図1、図2、図3のそれぞれに別個に記載された実施形態(例えば、サッカーボール、バスケットボール、ゴルフボール)を含んでおり、これらの実施例が審査官から見て別個の発明だとみなした場合に、これらの実施例すべてを包含するクレーム(例えば、ボール)を指します。この場合、選択要求では、図1~図3に表された種・実施形態のうち1つを選択することを要求されます。


連結クレームとは、特許的に別個の複数の種に関するクレームを連結しているクレームを指します。例えば、2つの種についてのクレームに(発明A+B)と(発明A+C)が記載された場合、発明Aを記載した独立クレームを連結クレームとなります。


留意していきたいのは、マーカッシュ・クレームが選択要求の対象となりやすい印象があります。ただし、マーカッシュで記載されている択一的要素の数が少なく、択一的要素も互いに密接に関係しており、審査官は審査負担が少ないと判断した場合は、たとえその択一的要素が独立または別個の実施形態で記載したとしても、審査官はすべての択一的要素を審査しなければなりません。

(3)限定要求/選択要求への応答

限定要求は、審査官から代理人対して電話で行われる場合もあり、書面通知で行われる場合があります。


限定要求・選択要求の場合、応答期限は1週間から2週間の本当に短期間に設定されることがあります。応答期間が短いので、日本人または日本企業が出願人である場合はアメリカの現地代理人とのやり取りなどで迅速な対応を求められます。


なので、代理人とのやり取りを行う上で、知財担当者や発明者が不在で応答が遅滞することは避けなければなりません。


限定要求・選択要求が書面により行われた場合にも、応答期間は30日となります。この応答期間は延長可能になります。


限定要求は、審査官が予め複数のクレームをグループⅠ、グループⅡ・・・に分け、各グループの属する発明の異なる特徴を特定した上で、出願人にどのグループを選択するか求めてきますこれに対して、出願人は選択するグループを伝えます。


限定要求/選択要求に対して選択しなかった範囲によって補正の範囲も制限される可能性があります。例えば、実施形態1と実施形態2のとちらかを選択することを要求されて、実施形態1を選択した場合、選択しなかった実施形態2の内容でクレームを補正することができなくなります。


限定要求/選択要求に対しては、発明の重要性や事業化の可能性の観点から最初に審査を受けたいクレームを選択しなければなりません。なお、限定要求/選択要求において選択されなかったクレームは、審査の対象から外されます。なお、出願人が選択しなかったクレームにも権利化したい場合には、特許発効前であれば分割出願をすることができます。


また、出願人は、クレームや実施形態の分類が限定要求を否認し、限定要求の再考を求めることができる。ただし、この場合でも仮の限定または選択をしなければなりません。


出願人が限定要求/選択要求に対して、避妊するときは審査官の過誤を明確かつ具体的に指摘しなければなりません。さらに、再考を要求しても限定要求が撤回されないときは、USPTOの長官に請願を提出することもできます。請願は審判請求前に限って、いつでも提出することができます。


限定要求/選択要求について応答するときに念頭に置いておくことは、限定要求/選択要求は審査官により判断に差があります。また再考してもほとんど撤回されることがないと言われています。


限定要求/選択要求に対する否認は、審査官の心象形成に悪影響を及ぼすこともあります。心象形成が悪化してしまえば、後々に出願人の抗弁が考慮されないなど、出願人にとっても不利益が被られることがあります。


限定要求/選択要求を受けることは、出願人にとって損なのか?、という問いに対しては、それも複数の観点から考えると出願人にとってもプラスになると思います。デメリットとしては、一括で審査して欲しいクレームを分けて、審査することになるので、審査費用は高くなってしまうことが挙げられます。また、選択要求で選択しなかった発明は、審査対象となった発明の代替技術になり、どちらも権利化しないと第3者に代替技術を提供することになります。


一方で、限定要求/選択要求を受けることで、順番に審査を行うことになり、選択しなかったクレームは、分割出願をするタイミングによりますが、その審査を遅らせることになります。その遅らせた期間内に、第3者がそのクレームに近い製品を実施するようになったら、審査時にはその製品を見て補正案を検討することができるようになります。


したがって、限定要求の適否にはあまりこだわらず、分割出願などで権利化を図る方がよいように思います。

(4)再併合

選択要求/選択要求に対しては、出願人は明細書の実施例、図番号または部材を選択し、選択した種に対応するクレームを示します。他の選択を行うと、審査官はまず包括クレームを審査することになります。


選択しなかったクレームの前には、(withdrawn)と記載し、審査の対象にはならず、(canceled)として取り下げた扱いにはなっていません。


包括クレームが審査を受けて、特許を受けられる状態と判断されたときは、限定要求が撤回され、審査官によって包括クレームにwithdrawnになったクレームを再併合することができます。

このとき再併合された発明は、特許を受けられる状態のクレームに記載されているすべての構成要素を含む発明になります。現実的には、再併合する種は従属クレームになるとあります。


再併合は特許を受けられる状態になったクレームによって異なります。withdrawnとしたクレームがすべて再併合できるわけでもなく、withdrawnのクレームに記載された構成要素が包括クレームに組み込むことができない場合には再併合することはできません。

場合によっては、出願人が自らの補正によって種のクレームを追加しなければなりません。この場合は、審査官の指摘に従い、指定された期間内に適切な補正書を提出します。一方、もし包括クレームが特許を受けられない場合、分割出願などで審査官は次に選択した種のクレームを審査することになります。