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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

アメリカ特許制度における均等論の考え方

http://www.flickr.com/photos/56367751@N00/485424742
photo by vaXzine

アメリカの特許法において、特許権の侵害とは、2種類あります。一つ目は文言上の侵害と二つ目は均等論に基づく侵害があります。


文言上の侵害とは、問題となる特許出願のクレームに記載されているすべての構成要素や限定が侵害品として訴訟で挙げられた製品あるいは方法に含まれていた場合に成立します。


文言上の侵害に対して、均等論に基づく侵害は、侵害訴訟に挙げられた装置または方法が必ずしも特許権のクレームの記載の文言上に完全一致していなくても、その差異が本質ではないものではない場合に成立します。


なぜ、均等論に基づく侵害が規定されているのかというと、悪意を持った侵害者が善意の特許権者が苦労して完成させた発明、苦労して登録させたクレームからちょっとした文言の違いで、侵害から逃れることができないようにするための法理です。
出願人を救済するための法理である均等論に基づく侵害ですが、均等論に基づく侵害か否かを判断することには当然、当事者による主観的な要素を含んでしまい不明確な要素が多くあります。均等論に基づく侵害が争われるときは、紛争を頻発され、長期化させる原因になります。


一方で、均等論は特許権者と第3者の利益バランスを特許権者側に有利なほうに傾かせて、プロパテント政策の象徴としてニュースに取り上げられることもしばしばあります。均等論に関する法改正や最高裁での判例などに翻弄された企業は数多くあります。

(1)均等論の基本的な思想

均等論を考える前に、文言上の侵害が成立する条件を再確認しましょう。特許権として登録されたクレームに「A+B+Cからなる装置」と発明が記載されていた場合に、侵害品にはA、B、Cの3点が揃っていなければなりません。A+B+C+Dであっても、A、B、Cが揃っているので、特許権の侵害品となります。A+B+Dだけでは、侵害品となることはありません。



文言上の侵害に対して、均等論に基づく侵害とは、文言上の侵害とはならずとも被告の製品が特許権のクレームに記載された発明の構成要素の「均等物」であるとみなされた場合に成立します。

例えば、クレームに記載された発明がA+B+Cからなる装置であったのに対して、侵害が疑われている被告の製品がA+B+C’からなる装置であって、構成CとC’が均等であると判断された場合に、均等論に基づく侵害が成立することになります。


均等論に基づく侵害では、出願人に対して有利な制度であることに変わりはありません。均等論によれば、侵害者がクレームに記載の構成要件Cを均等物C’に代替えして、特許権の侵害を回避しようとしても、侵害を免れることはできません。

(2)均等論の本質とは

特許権の効力拡張

均等論は、通常、特許権の権利範囲はクレームに記載された範囲内に限定されます。ただし、特許権の効力の範囲を文言上にのみに限定していると、ほんの些細な変更を行うことで、特許権の侵害を免れようとする悪意のある侵害者を罰することができません。


そこで、特許権者の救済する目的で考えられたのが、均等論です。均等論は権利範囲をクレームの文言範囲を少し超えて拡張する考え方になります。
しかし、出願人に対して均等論を認めてしまうと、権利範囲の拡張を認めたことになり、別の問題を生じさせることになります。

均等論は権利範囲の境界をぼやかす、不明確にする性質を併せ持っています。つまり、登録特許のクレームに記載された発明の権利範囲が不明確になり、第3者にとっても侵害になるのか、ならないという判断が審判官による、どこかしら不明確にならざるをえないことです。

②プロパテント

均等論が特許権者の救済を目的とした、特許権の権利範囲を拡張する法理であるということは、当然、特許権者にとって極めて有利に働くものになります。つまり、クレームに記載されていない第3者の製品や方法に特許権の権利がおよび侵害となる場合があります。


第3者からすればちょっとクレームに記載された文言から変更を加えて、侵害を回避しようとしても、それだけでは不十分になります。それだけではなく、文言だけでなく、均等論の拡張範囲にまで潜在的な侵害まで考慮しなければなりません。


したがって、特許権の効力を強化する方向に働く均等論は特許権者を厚遇するプロパテント政策に合致します。

③中心限定主義と周辺限定主義の対立

均等論は簡単に言うと、特許権の権利範囲を拡張するための法理です。いわゆる中心限定主義と同じ方向性を持っています。中心限定主義とは、クレームの記載された発明の権利範囲をやはりクレームを中心として明細書の記載に基づき一定の広がりを認め、権利解釈はクレームのみの記載に限定されないという考え方に基づきます。


一方で、現在のアメリカにおける特許法は周辺限定主義を取っています。周辺限定主義とは、クレームに記載された発明の権利範囲をクレームに記載された通りに範囲を限定し、それ以上の広がりは認められないとした考えかたです。


中心限定主義に支えられる均等論と周辺限定主義は相反する思想を持った考え方になります。審判官が均等論に敬重した思想を持っていると、特許権者にとって有利に働き、周辺限定主義に偏っていると第3者にとって有利に働きます。したがって、均等論と周辺限定主義均衡関係は、特許権者と第3書の利益バランスを取らなければなりません。


別の視点から見れば、アメリカにおいて、特許権者に不利な周辺限定主義をとっていますが、均等論は周辺限定主義の部分的に修正を加え、特許権者の保護を厚くするものと捉えることができます。

④均等論と禁反言の対立

繰り返しになりますが、均等論は特許権の効力を拡張するための法理になります。一方、均等論との反対の立場になると、禁反言は特許権の効力を中間処理の過程においてクレームの文言の意味を狭く限定解釈されてしまうための法理です。


禁反言とは、また別の機会に詳しく取り上げたいと思います。禁反言とは、簡単に言うと、審査の過程でいったん出願人側から放棄した発明に対して権利を主張することができないことです。


例えば、審査の過程で拒絶理由の根拠として、先行文献を引用したときに、出願人がこれを回避するために減縮する補正したときに減縮した範囲について、権利化として確定した後に再びその先行技術に効力を及ぼすことはできます。


特許権者が均等論を主張すれば、侵害を訴えられた被告人は禁反言による権利範囲の減縮を主張し、権利範囲の拡張を抑止することを訴えることになると思います。均等論と禁反言の対立は、特許権者と第3者との利益バランスを図っていることになります。


クレームの文言通りに厳密に従うと、悪意のある侵害者を差し止めることができません。特許による保護を無に帰することになります。


一方、均等論を野放しにすれば権利範囲の拡張に歯止めがきかず、第3者は特許権侵害に怯えてなければなりません。禁反言は、第3者を救済する目的で、出願人が均等論の主張に対抗する手段として存在価値があります。