読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

アメリカの特許権存続期間は日本と同じ?アメリカの特許の権利存続期間について

http://www.flickr.com/photos/47180203@N08/17984446154
photo by World Trade Organization


1996年の法改正までは、アメリカでは、特許権の存続期間は、特許の発行後17年とされてきました。これでは、継続出願やRCE、分割出願などの出願・審査のオプションが増えて、審査が長期化していた背景では、出願人・第3者ともにデメリットがありました。
出願日から特許権の起算がされていないので、出願して特許として権利化できるまでは第3者に対して、将来的に特許となる技術が使い放題で、出願人にとっては権利行使を出願日から遡及して権利を行使できませんでした。


第3者にとっても、特許権が発行されてから17年であった場合、特許権として成立した特許に対して、少しクレームを変更させた分割出願を数回繰り返し、特許権の存続期間を延ばそうとする、いわゆるサブマリン特許問題など不利益な面が多くありました。


そこで、国際調和の観点から、日本や欧州と同様に特許の存続期間を「出願日から起算して20年」を基本とするように、特許法が改定された背景があります。


ただし、存続期間において、日本と米国が完全に同じかというと、少しの違いがあります。そこで、今日のブログのテーマはアメリカにおける特許存続期間の留意事項について書いていきたいと思います。


(1)アメリカにおける特許存続期間の基本

アメリカの特許権の存続期間は、基本的には日本と同じく出願日の日か起算して20年をもって満了となります。継続出願や分割出願であっても、先の出願の出願日の利益を受ける特許は、最先の出願の出願日から20年をもって満了となり、これについても日本と同じ考え方です。


ただし、新規事項を追加して、継続出願をした場合に、新規事項に起因する特許権に関しては、その新規事項が追加された時点、つまり継続出願の出願日から起算して20年で満了となります。


また、外国優先権の主張に基づく出願であっても、アメリカの特許権の存続期間は、アメリカにおける出願日から20年で満了します。優先日が特許権の存続期間の起算日とはなりません。国際出願(PCTルート)による出願では、国際出願日から起算して20年がアメリカでの特許権の存続期間となります。


さらに、アメリカへの出願であっても、仮出願の出願日は、存続期間の起算日とはなりません。仮出願に基づく正規のアメリカ出願の出願日から起算して20年が特許権の存続期間になります。


したがって、先に日本に出願してパリ優先権に基づくアメリカ出願をしたり、アメリカに仮出願をすることで、新規性・非自明性の基準となる優先日だけを確保し、それから1年以内に正規の出願をすれば、取得した特許権の存続期間は実質的に1年間延長されたことになります。


(2)アメリカにおける特許権存続期間の例外規定

特許権の存続期間に関する法改正の過渡期に対する措置としては、ウルグアイラウンド合意協定(特許権の存続期間の改定がなされた)の発行日から6カ月を経過する以前に出願され、又はその時点で有効な特許は、以下のいずれか長い方が適用されます。

 米国での出願日から20年、または
 その特許の発行日から17年

2016年現在には例外対象になる特許権の数は少なくはなっていますが、例外があることは忘れてはいけないので、参考までに解説します。

この規定はウルグアイアイランド合意に基づく、米国での出願日から20年という通常の存続期間を規定した154条(a)(2)に対する経過措置になります。この規定により、20年の存続期間が適用される場合、1996年改正前の法律で予定されていた存続期間よりも長く存続する場合があります。


したがって、特許の存続期間の計算を誤って、満了していたと思い、特許発明を実施してしまっていた者が予期せぬ侵害を問われたことも実例としてありました。


そこで、1995年6月8日以前に行われ、または実施的な投資がされ、20年の存続期間の適用によりはじめて特許を侵害することになった第3者の行為は、特許権の侵害とはならないとして、第3者の実施を保護する特別な措置もありました。

しかし、このような場合であっても、損害賠償金の支払いや刑罰が免除されただけであり、第2者が特許権者に適正な対価を支払う義務はあります。

(3)存続期間の調整(PTA)

特許権の存続期間の例外としては、もう一つあります。


特許庁での審査手続が特許庁側の責任で遅延した場合、その遅延分だけ特許の存続期間が延長されるといった規定があります。ただし、延長だけがなされるわけでもありません。例えば、出願人側の責任において、審査の遅延があった分については、延長を認められることはありません。


この特許の存続期間の調整に関する規定は1999年の改正法で導入され、2000年5月29日以降の出願された特許権に適用されています。


また、親出願が2000年5月29日以前に出願された場合であっても、継続出願を2000年5月29日以降に出願されていれば、特許権の存続期間の調整規定の適用を受けることができます。

延長される期間については、上限については特別設けられていません。私の知っている限り、800日を超えて存続期間の延長が認められたケースもあります。

①存続期間調整において加算される日数

特許存続期間の調整において延長される存続期間は、原則として、特許庁側の責任で審査が遅延した日数分が加算されることになります。審査における遅延とは、具体的に次の場合に、存続期間が加算されることになります。

1.特許庁の原因により特許発行が遅延した場合

特許庁の原因により特許発行が遅延した場合に、遅延した日数分だけ特許嫌悪存続期間は延長されます。遅延日数の計算の方法は154条(b)(1)(A)(ⅰ)~(ⅳ)に4つの場合に分けて、次のように規定されています。

A:出願日から14カ月以内に特許庁が最初の通知をしない場合、14カ月を超える日数は遅延した日数であり、これが存続期間に加算される。

B:出願人の応答または審判請求に対して特許庁が4カ月以内に通知しなかった場合、4カ月を超える日数は遅延した日数であり、これが存続期間に加算される。

C:特許を受けられるクレームがあるとき、特許審判部または連邦裁判所の決定から4カ月以内に特許庁が対応しなかった場合、4カ月を超える日数は遅延した日数であり、おれが存続期間に加算される。

D;特許料の納付から4カ月以内に特許庁が特許を発行しなかった場合、4カ月を超える日数は遅延した日数であり、これが存続期間に加算される。

2.特許庁の原因により特許が出願日から3年以内に発行されなかった場合

一つの特許出願で出願日から特許発行までに実際に要した日数のうち、3年を超えた分の日数は存続期間に加算されます。


ただし、継続審査請求(RCE)をした場合、出願日から特許発行まで要した日数からRCEに費やされた日数は全く加算されないことになっています。RCEの手続き自体には、特許庁側の責任には該当しないためです。


他にもインタフェアレンス、秘密命令、審判に係属した場合についても特許発行まで要した日数からこれらに費やされた日数も考慮されません。

これらの場合については、154条(b)(1)(c)に別途規定されています。そのため、重複して加算されないように、3年を超えた分の日数には加算されないようになっています。その他、出願人からの請求によって生じた特許庁の手続の遅延であれば、出願日から特許発行までに要した日数から引くものされています。

3.インタフェアレンスなどによる遅延の場合

インタフェアレンス、秘密命令、審判に要した日数は、出願日から特許発行までに3年かかっていなくとも、そのまま特許権の存続期間に加算してくれます。

②延長期間から引かれる日数

上述したように、特許権の存続期間に遅延日数が加算されて、存続期間が延長してくれます。ただし、すべての遅延日数が加算されるわけではなく、出願人側に責任があった場合などの遅延日数については、存続期間から減算されてしまいます。

1.調整は実際の遅延日数を超えることはできない

これまでに説明してきたように、存続期間の調整に関しては、様々な理由と、その理由ごとに算出方法があります。別々の理由に基づいて、重複して遅延日数を加算してしまう可能性ないわけでもありません。そこで、延長できる日数については、実際の遅延日数を超えることはないように、重複した日数については加算されない規定になっています。

2.ターミナル・ディスクレーマとされた場合

また、特許権者がターミナル・ディスクレーマと認められてしまった場合には、特許権の面量日は先の特許権の消滅日とし、それを超えて延長されることはありません。

3.出願人に責任がある遅延

出願人が審査手続で遅延行為をした場合、その分については延長されることはありません。例えば、特許庁からのOffice Actionに対して、3カ月経過後に延長手続きを行って応答したようなことがあれば、3カ月を超えた分の日数については、延長される日数から減らされてしまいます。つまり、出願人にとっては延長手続きが認められているとしても、審査過程で3カ月以内に応答することはないようにした方が望ましいということに変わりはありません。

4.継続出願をした場合、延長期間は引き継げない

継続出願をすると、親出願で蓄積されていた延長期間は子出願に引き継がれずに、いったんゼロにされます。継続出願の延長期間算出は継続出願の出願日から計算されることになります。


したがって、係属中の出願について遅延日数が貯まっているならば、継続出願ではなく、継続審査請求(RCE)をした方がお得になることもあり得ます。ただし、継続審査請求(RCE)をすると、RCE以降の遅延日数は加算されないので、継続審査請求(RCE)をする時点でどれだけ、遅延日数が貯まっているのかを計算しておく必要があります。

③存続期間の調整の手続

特許の存続期間の調整日数は、特許査定の通知に記載されています。存続期間の調整日数に不服があるときは、特許庁官に再考を請求することができます。特許庁長官の再考の結果に不服があるときは、バージニア州東地区米国地方裁判所に訴訟を提起して存続期間尾再考をさらに求めることができます。


これまでのように、特許権の存続期間の延長日数について、細かく算出されるようになったために、審査官側からしたら負担が増えています。そのため、よくよく計算すると延長日数が間違えている例も少なくはありません。間違った日数についても、特許査定前に不服を言わなければ、これについても禁反言が働き、権利化された後に撤回することはできなくなってしまいます。


特許査定が出たとしても、特許権の存続期間が出願日から20年と決めつけることはせず、慎重に計算して確かめておいた方がよいと思います。

(4)存続期間の延長

医薬品、医療機器、食品添加物、着色料に係る製品については、食品薬事委員会の審査において流通認可を受けなければなりません。特許権として認められた発明であっても例外ではありません。アメリカの特許制度でも、審査のために特許発明を実施できなかった期間があれば、特許権の存続期間が延長されます。

①存続期間の延長の要件

特許権の存続期間の延長を受けるためには、特許権者側から存続期間の延長を請求しなければなりません。延長が認められるためには次の4つの条件をすべて満たしていなければなりません。


・存続期間前満了前に延長の請求をすること
・過去にも存続期間が延長されていないこと
特許権の発明品が商業的に販売または使用される前であり、食品薬事委員会による審査中であること
特許権の発明品の販売または使用について初めての許可を受けようと審査であること

②延長期およびその特許の効力

延長される期間は、原則として、行政審査に服していた期間に基づいて決められます。ただし、延長期間が認められる期間は最長でも5年になります。また、存続期間が延長された特許権の効力は、延長期間中に限り次のような一定の制限を受けることになります。


クレームに記載された発明が医薬品に関する発明であれば、認可を受けた医薬品としての使用用途だけに特許権延長の効力が及ぶことになります。例えば、医薬品として認可を受けた物質は、医療用途だけに効力が及び、その他の産業用の用途においては特許権の延長はなく、侵害にもなりません。

(5)特許権は年金を支払って維持しなければならない

特許権はいったん登録料を支払えば終わりという訳ではなく、登録後も特許権を維持するためには維持年金を支払わなければなりません。


特許の最初の維持年金は特許権が発行されたあとの3年6カ月まで、2回目の維持年金は特許後7年6カ月まで、3回目の維持年金は特許後11年6月までに支払うことになっています。支払い期間が過ぎてしまった場合でも、支払い期限の6カ月を経過する前であれば、割増金と維持年金を支払うことで特許権を維持することができます。


さらに、その割増料金で追納が許されている期間を過ぎてしまっても、維持年金を支払うことができなかった理由があり、その理由が特許権者の責任ではない場合などは、さらに割増料金を支払うことで、特許権を回復させることもできます。


ただし、特許権者は、維持年金が不払いになっていることに気付いた後に速やかに特許庁に申請しなければなりません。故意ではないことを理由にする場合には、6カ月の追納期間の経過後24カ月以内に申請しなければなりません


時として問題となるのは、特許権が維持年金の不払いによって、一度消滅したことを確認した後、第3者がその特許権に係る発明を実施したあとで、特許権が復活してしまうことです。この場合、第3者がその特許権に対する中用権が認められることがありますが、回復してからの特許権に対するライセンス料の支払いについては別途協議が必要になることもしばしばあります。