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社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

間接侵害はアメリカと日本で大きく違う、アメリカならではの間接侵害について

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photo by darkday.
前回の記事ではアメリカの特許制度における直接侵害を取り上げましたので、次はアメリカ特許制度における間接侵害について熱く取り上げてみたいと思います。間接侵害は、アメリカ特許法の271条(b)と271条(c)によって規定されています。


間接侵害は、直接侵害には当てはまらない行為であったとしても、のちに侵害に直結するような悪意のある第3者から特許権者を厚く保護するための規定だと考えてください。


しかし、後から詳しく説明しますが、271条(b)および271(c)も概念的な規定でしかなく、どのような第3者の行為が間接侵害に該当する行為であるのか、具体的な行為については、きっちり明文化されておりません。そのため、間接侵害の存在についてはしばしば訴訟において争点になり、訴訟の決着が遅延される原因の一つにもなっているでしょう。


日本においても間接侵害が規定されていますが、アメリカ特許法271条(c)の規定は、は日本の特許法101条と同じような規定であると考えてよいでしょう。しかし、アメリカ特許法271条(b)に該当する条文は日本の特許法にはありません。日本の特許制度よりもアメリカの特許制度の方が、間接侵害について広く捉え、より特許権者の保護が厚いと考えてよいでしょう。


ただし、日本の特許制度よりも厳格なのは、アメリカの場合、間接侵害が認められるためには、直接侵害が存在していることが要求されます。日本の特許法では直接侵害の有無に関係なく、101条で間接侵害が規定されているので、アメリカと日本では間接侵害の考え方について、大きな違いがあると言えるでしょう。

(1)積極的に侵害を引き起こす行為

①間接侵害が成立する条件は、直接侵害が存在していなければならない

アメリカ特許法の271条(b)では、「積極的に侵害を引き起こした者は、侵害者として問われる」と、間接侵害についてかなり広く抽象的に規定されています。次に説明する271条(c)も間接侵害に関する規定でありますが、271条(b)は271条(c)よりも上位の概念を指していると言えます。関節侵害として、271条(b)は広義であり、271条(c)狭義になります。

つまり、一般的な間接侵害態様は、ある程度271条(c)で規定しておいて、271条(c)でも捉えられず、将来的に予測不可能な事件に備えて、より広い概念で間接侵害を規定できるように、いわば271条(b)が保険的に設けられた規定なのです。

271条(b)で重要なのは、直接侵害が存在していないと、間接侵害が成立することはないことを原則にしている点です。冒頭にも述べましたが、この原則が間接侵害について日本とアメリカの大きな違いになります。


271条(c)の規定では、間接侵害が成立するためには、その製品が特許されており、かつその特許を侵害することを知っていた、つまり侵害者が意図的に特許権を侵害していたことを要件としています。しかし、271条(b)では侵害者が侵害と認識しているか否かに関係なく、間接侵害に問われることになります。しかし、多くの判例では、271条(b)による間接侵害の条件として、侵害の認識が侵害者にあることを前提に判決を下されています。
Water Technologies Corp. v. Calco. Ltd. , 850 F, 2d 660. (Fed . Cir.1988)

ただし、271条(b)は自由度が高いため、侵害者による侵害の認識の程度にも強弱が争点になることも多くあります。271条(b)では、271条(c)よりもそのハードルは低めに設定されるべきと述べられた判例もあります。しかし、この判決による根拠には、説得力のある理由付けがなされていない点もあって、懐疑的だとする弁護士も少なくはありません。
Hauni Werke Koerber & Co v. Molins. Ltd. , 183 USPQ 168 (E.D. Va 1974)

②「積極的に侵害を引き起こす」とは

Ⅰ.ライセンスなど

特許権Aを有する甲が、第3者に自身の特許権Aをライセンスし、その第3者が与えられたライセンスにしたがって生産等をした結果、他の特許権B(甲以外が保有している特許権)を侵害していた場合、ライセンスを与えた甲も「積極的に侵害を引きおこす行為」を行ったとされる恐れがあります。

今や電子機器は到底ひとつの特許では、カバーしきれるわけではないので、このような事例は特に気をつけなければなりません。

Ⅱ.免責事項など

特許権の侵害行為とみなさないことを保証する条項を含む契約を結び、その契約を信じて、契約をしていない者が特許権を侵害する製品を製造して、特許権を侵害したと訴えられたとしても、その契約の条項について、契約を結んだ者同士の行為は、「積極的に侵害を引き起こす行為」には該当することはありません。契約を結んでいない第3者に対しては、特許権の行使が認められるのは当然のことです。


American Bank Protection Co. v. Elec. Protection Co., 181 350. (C.C.D.
Minn.1910)

Ⅲ.修理とメンテナンス

特許権を侵害していた製品を修理する行為は、「積極的に侵害を引き起こす行為」に該当します。したがって、侵害品を修理した第3者は間接侵害に問われてしまいます。また、継続的にまたは契約に基づいて、その商品の生産者または販売者が修理やメンテナンスを行う行為にも「積極的に侵害を引き起こす行為」に該当します。

ただし、臨時的な修理であった場合には侵害となりません。

Ⅳ.商品の購入

特許権に係る方法や装置によって製造された製品を、特許権の存在を知らないで再販売や使用のために他人に販売する行為は、「積極的に侵害を引き起こす行為」に該当しないとされています。

ただし、購入者が悪意を持っていたり、再販売者に対して定期的に侵害品の受注を受けていたときなど、「積極的に侵害を引き起こす行為」に該当します。271条(b)の間接侵害は侵害者が侵害の事実を知っていることを問わないためです。自分の事業を行うに当たって、特許権を調べることは事業者の責務だとしている前提があるためです。

Ⅴ.公表

特許権に係る製品や方法についての情報を公表することは「積極的に侵害を引き起こす行為」に該当しません。発行された特許権自体が、特許として成立した時にはすでに公衆に向けて、その発明を完全に開示しているからです。

(2)主要部品の販売など

さて、271条(c)について説明しましょう。271条(c)は狭義の間接侵害として、以下のように規定しています。

(ア) 特許発明の一部、または特許された方法を実施するための材料および装置であり、
(イ) 発明の主要部であり、
(ウ) 特許の侵害のために特別に作られているものを
(エ) 特許を侵害せずに使用できないことを知り、
(オ) 米国内で、販売、販売の申し出、または米国内に輸入した者は侵害寄与者となる。

直接侵害との関係

何度も言うように、間接侵害が成立するためには直接侵害が存在しなくてはなりませんが、271条(c)による間接侵害は、完全なる直接侵害の事実がなければならないといけないのか、または直接侵害が行っているだろうとする推測・可能性があればよいのか、争点がありそうです。過去の判例を見ても、完全に事実として直接侵害が遂行されている必要は決してなく、直接侵害が起こりうる恐れがあれば間接侵害が成立する条件を充足しているとされています。

②国外での販売

271条(c)の文言では、アメリカ国内での販売を行う行為に限定されているようによみますが、外国での販売が間接侵害とみなされた判例もありました。例えば、販売者は自分が販売した製品がアメリカにおける特許権を侵害していると知っていながら、かつ、購入者がアメリカに流通することを知っていた場合には、その外国での販売行為が間接侵害に該当すると判断された判例がありました。

③「知り」の範囲

271条(c)に規定された間接侵害では、「特許の侵害のために特別に作られているものを、特許を侵害せずに使用できないことを知り」という侵害者が事前に自信が侵害行為をおこなっていることを知っている要件が課せられています。この「知り」の意義は、特別に作られたその部品が使用される装置が「特許権に係る発明に使用されており」かつ「特許権ではない第3者によってその特許権を侵害する」ことを知っていることされていました。

また、「知り」とは、その特許権の有効性や範囲に関する法律的結論を知っていることは要求されません。もし法律的結論に達するまで間接侵害が成立しないとすると、裁判所が無保護の状態におかれることになります。要するに、「知り」とは、その部品の購入者が特許発明を実施する許諾を得ていないことを知っている程度で条件を満たすものとされます。

③非侵害の用途に使用できる部品

271条(c)の間接侵害では、「特許の侵害のために特別に作られているもの」を要件とするが、争点になるのが作られた部品が非侵害の用途にも使用できる部品であった場合において、非侵害品の用途のために販売される場合は間接侵害に該当するのか問われるところです。恐らく、271条(c)に基づき間接侵害を訴えられた被告は、その部品が特許にかかる発明以外にも使用できると、主張してくるでしょう。非侵害の用途は、不自然、架空、非現実的又は実験的なものであってはならないとされ、被告の主張が正しいのか否かきちんと裏取りがなされます。ただし、非侵害の用途の立証義務は、侵害を問われている被告側にあるとされています。

④主要部という定義

271条(c)の間接侵害では、「発明の主要部」であることを要件としているが、この主要部は単に発明の一部の部品であればそれでよいとされます。その発明を成立するためには、その部品は必要であるからです。例えば、発明の新規性や非自明性の根拠となった構成要素の部分である必要は全くありません。