読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

侵害行為に対する特許権者が受けられる救済措置について

http://www.flickr.com/photos/32659528@N00/2700096104
photo by exfordy


これまで特許訴訟に対してブログの記事を書いてきました。今日は侵害者による侵害に対して、特許権者が被る損害についての救済措置をテーマに記事を書いていきたいと思います。
patentjitsumu.hatenablog.com
patentjitsumu.hatenablog.com
patentjitsumu.hatenablog.com

(1)損害賠償金

特許権を侵害した侵害者から特許権者には「十分な賠償金」を請求する権利があります。侵害者に請求できる損害賠償金は、どんな侵害事件でもあっても、合理的な実施料を下回らない額とされています。損害賠償金の最低額を規定されています。

①損害賠償金の額「失われた利益」

損害賠償金の決定方法は、侵害者に対して「失われた利益」とすることができます。失われた利益の定義とは、もし侵害が存在しなかった場合に、特許権者が受けていた利益の金額になります。



「失われた利益」は、特許権者が立証することができます。特許権者は、侵害がなかった場合に受けていただろう利益を立証し、その額を損害賠償金として受け取る裏付ける証拠を提示しなければなません。


特許権者が行うべき、「失われた利益」の立証方法は、2段階に分けて行うことが効果的です。具体的には、第1段階に「自己が販売して利益を受けるべきであること」を立証してから、第2段階として「自己が受けていたであろう利益」を立証しなければなりません。


第1段階の「自己が販売して利益を受けるべきであること」は、さらに具体的に次の3点を立証しなければなりません。
★その特許権に係る発明を用いた商品・製品に対する需要があること
★その特許権に係る発明を用いた商品・製品に代わる代替物が存在しないこと
特許権者が特許権者に係る製品を市場に供給する能力を持っていたこと

第1段階に「自己が販売して利益を受けるべきであること」を立証した後に、「自己が受けていたであろう利益」の立証にかかります。か利益とは、単純に言えば特許権に係る製品の価格のうち特許権者の利益に侵害品の販売数をかけて得た金額になります。


一般に、失われた利益は、合理的な実施料に基づく賠償額よりも高額になることもあるでしょうが、、もちろんその因果関係を立証することも難しいと思われます。


そのため、ほとんどの特許権者は、失われた利益の立証することを断念してしまい、合理的な実施料を立証するように試みることになります。また、合理的な実施料であっても、仮想的な交渉による算定方法を使って失われた利益以上に高額な損害賠償金の支払いを要求し、実際に損害賠償金として得ることもできます。

②合理的な実施料に基づく損害賠償額

特許権者が失われた利益を立証できないとなれば、合理的な実施料を立証して損害賠償金として請求することができます。合理的な実施料は、(1)確定している実施料、(2)仮称交渉、などを用いて算出することになります。


確定している実施料とは、既に侵害者とは別の者とライセンス契約を結んでおり、その契約で適用されている実施料を用いて損害賠償金を計算する方法です。侵害者がどれだけ特許権に係る商品・製品を販売したかを特定することができれば、この損害賠償金の計算方法が最も立証が容易な方法になります。。


しかし、侵害者が侵害行為をした後に、後出しで支払うので許してもらえるのであれば、侵害の抑止力に欠けていると思われます。そこで、確立している実施料で計算された損害賠償金では「十分な損害額」も得られないことも多いので、より高額な損害賠償金を得るために特許権者は仮称交渉に得られたであろう利益を算出した損害賠償金を請求することが一般的です。


仮称交渉による算定方法は、特許権に係る商品・製品を製造・販売しようとする者が侵害行為に及ぶまでに特許権者と交渉したと仮定し、その時に自発的に実施料を支払い、かつ市場で利益を上げられるであろう実施料を算出することです。


一概に交渉を仮想すると言っても、合理的な実施料を算出するためには様々なファクターを考慮しなければなりません。したがって、交渉を仮想するに当たり、裁判官の方から判決において考慮すべきファクターを複数示されます。


例を挙げるならば、特許権者が市場を独占できる状況であったり、独占する意思を有していることを想定された場合、実施料はもちろん高額になることが予想されます。特許権者と侵害者が競争関係にあれば、実施権の許諾を受けるものと推定され、実施料高額に設定されます。


裁判官から判決される複数のファクターを考慮しなければ、合理的な実施料に巨額になる傾向があります。近年、賠償金が沸騰してしまう判例では、ほとんどがこの仮想交渉による算定をうまく採用することができたからと言われています。

③三倍賠償

裁判所は、裁量で損害賠償金を三倍まで増額することができます。三倍賠償が設けられる理由は、競合・侵害者を含め将来的な侵害の再発を抑止し、さらに侵害者に対して懲罰的を与える目的もあります。

三倍賠償は侵害者が故意に行ったと認められたときや、訴訟手続に悪意や虚偽があったときに、裁判所側の裁量で適用されます。故意の侵害とは、特許権の存在と自身の行為が侵害に該当することを知っているにも関わらず、善良な誠意もなく侵害行為を継続していたことをいいます。


侵害者側が「善良な誠意」があったことを立証するためには、例えば、侵害行為前に特許弁護士の鑑定を入手しておき、特許権の侵害とみなさないと鑑定を受けていたことで立証するこもできます。「訴訟手続中の悪意」とは、例えば特許出願の審査における不正や訴訟手続の違法行為や、証言で裁判官を欺こうと虚偽の証言を行ったことです。

④損害賠償の適用の制限

特許権者は常に損害賠償金を請求可能なわけではなく、ある程度制限を受けることができます。特許権の制限とは、、侵害行為の時効やそして特許表示の不履行などが挙げられます。


特許権者による損害賠償金請求額は、訴訟を提起する前6年以内の行為に限られ、時効があります。つまり、訴訟の提起前6年以上前の侵害者があったとしても、損害賠償金を請求することはできません。そのため、6年以上前に製造されいた侵害品に対しても特許権の効力を主張することはできません。


また、特許権者側が特許権を使用している表示をしていなかった場合は、侵害警告を特許権者が怠っていたとみなされ、損害賠償を請求することはできます。特許表示は第3者・公衆に対して、侵害警告を行うとみなされます。そのため、特許表示を行っていない場合に、侵害者に対する警告が必要になります。また、訴状の提出した行為が警告行為になりますが、損害賠償を請求できるのは訴訟の提起後になされた侵害行為に限られる場合があります。

弁理士費用と利息

損害賠償額に加えて、特許権者側が訴訟を通して費やされた弁護士費用や利息も請求されることがあります。


弁護士費用は、例外的な場合に限って、敗訴側に負担されることになります。例外的な場合とは、相手方に悪意や不正行為があった場合になります。特に、悪意や不正行為が発見されなければ、弁理士費用は勝訴したとしても自身で負担することになります。

利息とは、特許権者に対して十分な賠償を行うために必要なものであり、失われた利益または合理的な実施料のどちらにも加算されます。しかし、三倍賠償の損害賠償金などの懲罰の意味合いがある金額については利息は加算されません。



(2)差止命令

裁判所は、侵害者に対して損害賠償金の支払いの他に、侵害行為の再発を防止するために差止命令を下すこともあります。差止命令とは侵害者に対して、直接的な侵害行為の停止を命じられます。差止命令には、2種類があって予備差止命令と永久的命令があります。


侵害行為により製造された商品や製品を廃棄を命じたり、製造装置の廃棄などの侵害者も侵害品の製造するにあたっての投資コストを回収する機会を失われ、侵害者にとって最も大きな痛手になります

①予備差止命令とは

予備差止命令は、訴訟手続の初期の段階で、被疑侵害者の侵害行為を停止することを命じることです。さらに、特許権者が訴訟に勝訴した後では、予備差止命令から永久的差止命令に引き継がれます。


予備差止命令は、特許権者が回復不能なほどの損害を被る可能性がある場合に限り発行されます。予備差止命令は、訴訟の判決がなされる前に被告の行為を停止することができるため、特許権者にとっては強力な救済になります。しかし、判決が未確定のうちに発行させる処分であるため、特許権者にはより高い立証義務が課せられます。

予備差止命令が発行されるための条件としては、特許権者に課せられる立証義務は次の事項になります。
特許権者が勝訴するであろう合理的な見込み
★予備差止命令が発行しなければ回復できないほどの損害を被っている恐れがあることこと
特許権者が被っている損害が、予備差止命令によって被告に課せられる損害と比較しても重いものであること
★予備差止命令が発行されることが公衆の利益になること

さらに予備差止命令が発行される条件として、特許権者は保証金を裁判所に預けなければなりません。もし、特許権者が敗訴したとき、この保証金をもって、
被告が予備差止命令によって被った損害を補填するためです。

②永久的差止命令とは

永久差止命令により判決に従い被告に侵害行為の停止を命じられます。。差止命令の対象や範囲については、裁判所の裁量により決定されます。例えば、裁判所は、侵害品を指定し、その侵害品の製造や販売を禁止することができます。侵害の再発を防止するためや、あまりにも特許権者の損害が大きい場合には、侵害品を専用に製造する装置などの廃棄なども命令することもあります。

訴訟において特許権者の勝訴となれば、特別な理由がない限り、特許権者は永久的差止命令を勝ち得ます。永久的差止命令の適用範囲などについては、以下の事項を考慮されてその範囲などを規定されます。

Ⅰ.法律的救済の妥当性・必要性

アメリカ特許法上、当然、特許権者は自己の特許権の利益を独占的に享有できるものとされています。したがって、特許権者の許可なく特許発明を実施している第三者は、特許権の利益が損なわれており、特許権者に法律的救済が与えられることは妥当であるとみなされます。

Ⅱ.特許権者の損害の大きさ

特許権の侵害行為がなされていれば、過去の侵害によって特許権者が失った利益は回復不能なため、この要件も否定されることはほとんどありません。

Ⅲ.公衆にとって不利益になると判断されれば差止命令が発行されないこともある

差止命令の発行が公衆にとって損になってしまう場合裁判所は差止命令を発行されなかった判決もあります。例えば、癌・肝炎の検査装置については、人の命に関わる検査が目的であったため、その検査装置の廃棄などの差止命令を発行されませんでした。
Hybritech Inc v. Abbot Labs, 849 F. 2d 1446, 7 USPQ 2d 1191 [Fed Cir. 1458]

Ⅳ.侵害者に与える負担は考慮されない

裁判所は、敗訴した侵害者に差止命令で受ける負担や損害について考慮されることはありません。例えば、差止命令が実施されたことによって、侵害者が倒産してしまったり、破綻してしまう可能性があったとしても、容赦なく発行されます。

(3)ITCによる差止(輸入禁止)

特許権者はITC(国際貿易委員会:International Trade Commission)に対して侵害者を提訴することができます。ITCは関税法337条に基づいて、輸入に関する不公正な競争や行為に対して調査を行い、特許権者に対して輸入禁止、営業禁止の救済を与えます。


特許権者がITCに提訴すると、原則として、12カ月以内に救済を実施するのか否か決定を下さなければなりません。したがって、特許権者は極めて、特許権者が12カ月という短期間で救済されることになります。


しかし、ITCによる救済措置はは侵害品の差止のみに限定されます。金銭的な救済を受けることができません。