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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

特許権の有効性を改めて審査する査定系再審査について

(im)possible - 282/365

査定系再審査とは、特許権が発行された後、特許庁が先行技術に基づいて新たな拒絶理由についてその特許権の有効性を改めて審査をやり直す手続をさします。

査定系再審査は、特許権者だけでなく第3者も請求することが可能です。特許権者が査定系再審査を請求すれば、それは「審査のやり直し」となり、第3者により請求されれば「異議申し立て」として受け取ることができます。(異議申し立ての手続としては、第3者は査定系再審査の手続の他に当事者系レビューを選択することができます。)

この記事では、査定系再審査の手続について説明していきます。

(1)査定系再審査の使いどころ

自分が保有している特許権を行使する前、その特許権に本当に無効理由がないか否か、その有効性を改めて確認したいとき、査定系再審査を利用するときがあります。


例えば、特許権が発行された後に、審査の際に考慮されなかった新たな先行技術が発見され、そのクレームの新規性・非自明性に疑いが生じたときに特許権者はその新しい先行技術を提出し再度、審査官による審査を受けることができます。


また、第3者は、再審査を利用することで登録されたクレームの特許性に対して疑義を訴えることができます。自分たちの事業の妨げになるような特許権が取得されてしまった場合、その特許権を無効にするために先行技術を調査し、発見した先行技術を提出するとともに、再審査を請求します。


うまく先行技術を発見することができれば、第3者が再審査を使うことでその特許権を無効にするか、あるいは自社の事業に影響を与えない程度にクレームの権利範囲を減縮させることができるかもしれません。

ただし、第3者にとって特許の有効性を争う手続きは、再審査の他に付与後レビューや当事者系レビューを利用するほうがメリットがある場合があります。

(2)査定系再審査の特徴

まず、査定系再審査の特徴をまとめていきます。

①審査の再開、異議申し立て

まず、特許権者が査定系再審査を請求することはそれは「審査の再開」であり、一方で、第3者が査定系再審査を請求することは、それは「異議申し立て」となります。

②先行技術の対象

また、査定系再審査では先行技術の対象は、各国の特許公開公報と印刷刊行物に限られます。

③新たな特許に関わる問題の提起

査定系再審査が開始される条件として、新たに提出されたその先行技術によって「特許性に関する実質的に新しい問題」を提起することが求められます。過去の審査で引用された先行技術によってその審査内容のやり直しという理由で査定系再審査の審理は開始されません。

査定系再審査の請求を受理すると、請求から3カ月以内に査定系再審査を行うべきか否か決定され、査定系再審査するべきと判断されれば再審査は迅速に行われます。

④第3者は審理に参加することはできない

査定系再審査の審理が始まると、特許権者と審査官のやり取りで審理が進行し、第3者は最初に異議を申し立てることができるだけで、実質的な再審査の審理手続に参加することはできません。

第3者が特許権の特許性を争う手続として、付与後レビューや当事者系レビューに比べると第3者の意思が反映されにくい手続であり、査定系再審査のデメリットとなってしまいます。

④クレームの拡張補正は認められない

査定系再審査が開始されると、特許権者は新たな拒絶理由を回避するためにクレームを補正することができます。しかし、その補正によってクレームの権利範囲を拡張することは認められません。

同じように特許が付与された後の補正をすることができる機会である再発行出願では、特許の付与された日から2年以内に請求することに限定されますが、補正でクレームの権利範囲を拡張することができる点で異なります。

⑤手続費用が高額

査定系再審査の基本料金は$17,750かかります。この基本料金にクレームの数に応じた加算料がさらに加わります。


2012年9月までは基本料は$2,520でした。それに比べて、現在の基本料金は大幅な値上がりになり、敷居の高い手続になってしまいました。ただ、当事者系レビューの$27,200と比較したらそれでも割安だと言えるかもしれません。

(3)査定系再審査の請求人

特許権者、特許権者ではない第3者、何人も、登録された特許権のクレームの特許性に関連する先行技術を引用することで査定系再審査は請求することができます。

第3者としては、企業、政府団体も請求することができます。また、実施権者、実施許諾を受けようとする者、利害関係人であってもよく、請求人の身元を明かしたくない場合にはその者の代理人である弁理士であっても請求をすることができます。被疑新会社など訴訟の当業者も請求することが多いと思います。


第3者が査定系再審査の請求をするときは匿名で行うことができます。


査定系再審査の請求については、提案規則の段階では利害関係人であることを示す陳述書の提出を義務付けることを予定されていました。しかし、これが最終規則では削除され、当事者系レビュー等の禁反言が査定系再審査を請求するのを妨げない旨を示す証明証のみを提出すればよいとされています。


このことは最終ルールにおいて、具体例をもって示されています。第3者が匿名で査定系再審査を請求したいときは、一般的に特許弁護士やパテントエージェントの代理人を利用することがよいと言われています。


第3者の代理として特許弁護士が査定系再審査を請求したときは、その登録実務者がその第3者に禁反言がないことを述べたことを認証すればよいでしょう。


一方、個人が自らの査定系再審査の請求をしたときは、これまでの審査などにおいて自ら禁反言がないことについて署名しなければなりません。

(4)査定系再審査の請求時期と範囲

査定系再審査は「いつでも」請求できるとされていますが、当然ながら特許権を行使できる期間に限られます。特許権の存続期間に、プラスして侵害訴訟を提起することが可能な時効前の6年を足した期間です。さらに、訴訟が上記期間内に提起されたときは、存続期間+6年の期間を経過した後であっても、その特許権を行使し得る間であれば査定系再審査を請求することができます。

査定系再審査を請求できる範囲は、特許公開公報または印刷刊行物に基づき特許権を拒絶できる範囲に理由に限られます。査定系再審査では、112条(明細書の記載要件)、公用の事実、特許権者の行為に基づく拒絶理由に基づいて請求することはできません。

(5)査定系再審査の流れ

①査定系再審査のきっかけ、先行技術の提出

査定系再審査の審理が開始する前提になるのが、先行技術の提出です。特許権者または第3者が査定系再審査を請求したい対象の特許権の登録クレームの特許性に関連する先行技術を特許庁に提出します。

先行技術を提出する者は、その特許権の登録クレームとの関連性を陳述することになります。特許権者としては、先行技術に関して特許性の疑義を晴らすために新規性・非自明性などを意見することができます。第3者は先行技術を引用して、特許性を否定することができます。

②査定系再審査の請求

しかし、先行技術を提出しただけで、再審査が開始するわけではありません。再審査を開始するためには、先行技術を提出した提出者が再審査の特許庁に請求しなければなりません。

査定系再審査を請求する際に次の書類を添付します。
 ・先行技術のコピー
・先行技術に基づく特許性に関する実質的に新しい問題についての陳述書
 
 
 ・再審査を求めている特許のコピー
 ・第3者請求人が過去の当事者系レビューまたは付与後レビューにおける禁反言が査定系再審査の請求を妨げないことを認証する書面。
 ・クレームの補正を希望する場合、補正クレーム

③査定系再審査をするか否かの決定

査定系再審査の請求があると、特許庁長官が3カ月以内に審理を開始するか決定します。特許庁長官が審理を開始するためには、請求人が「特許性に関する実質的に新たな問題」(a substantial new question of patentability)の内容を見て判断します。

もし、請求人の陳述を見て、特許庁長官が新たな問題が提起されていないと判断した場合には、請求人に再考を求める請願を提出する機会を与えます。再度請願を提出してもなお拒絶されると、その決定に対しては不服を申し立てることはできません。

例えば、第3者の査定系再審査の請求が受け入れられなかった場合、その先行技術に関連して新たな問題の提起がないと特許庁長官が判断したのだから、特許権者にとっては特許の有効性が改めて認定されたものと理解してよいでしょう。さらに、その特許権の安全性が認めらたことで、第3者は特許権の有効性を争う手続を行うことを躊躇し、その特許権
に基づく訴訟においても有利に働くことになるでしょう。

ここでいう“新たな問題”とは、先行技術と関連付いたものでなければなりません。先行技術から読み取れない問題については提起することは認められず、特許庁長官は考慮することはありません。さらに、出願時から査定系再審査までの審査の過程において、提起された問題とは異なるものでなければなりません。


これまでの審査の中で考慮された先行技術を再度提出することができるか否かが問題となりますが、同じ先行文献を提出しても良いですが、その先行技術を分析することで新しい観点や異なるロジックでで、新たな問題を提起するのであれば考慮されます。


再審査を開始しないことが決定されると、費用の“一部”が返還金として請求人に払い戻されます。特許庁長官が再審査の請求が新たな問題を提起していると判断したときは、審判部に対して再審査の命令を出します。

(6)査定系再審査の審理の進行

①査定系再審査の拒絶理由とその拒絶理由に対する特許権者の応答

特許庁長官から査定系再審査を開始する旨の命令が出されると、特許権者は命令の受領したときからこと2カ月以内に、クレームの補正、新クレームの追加した手続補正書および意見書を提出することができます。


その意見書には、特許権者は登録特許として許可されたクレームに記載された発明が先行技術に対して、なぜ新規性があり、なぜ自明ではないことを明確に説明ることができます。提出した補正書が審査官によって受理されても、審査官はその補正クレームや意見書を参考に通常の審査と同様にその特許性を判断するので、その補正クレームはその時点ではまだ特許権として有効ではありません。審査を経て再審査証が発行された段階で、最終的な補正後のクレームが有効となります。


特許権者の提出した補正書および意見書を受け取った再審査の請求人は、2カ月以内に弁駁書を提出する機会が与えられます。第3者が査定系再審査を異議申し立てとして利用しようとするとき、第3者にとってはこの弁駁書の提出が唯一の反論の機会となります。その後は、特許権者と審査官との間のやりとりのみで審理が進行し、審理中に第3者が意見を述べる機会はありません。

②査定系再審査の拒絶理由通知とそれに対する応答

査定系再審査の審理が開始すると、通常の特許出願の審査と同じく審査が行われます。実際の審査は中央再審査部(Central Reexamination Unit)、略してCRUが行いますこの中央再審査部は、審査官の中でも経験の長い審査官が選ばれて配属されます。

査定系再審査の対象となるのは、先行技術に基づくクレームの特許性です。具体的には102条、103条の拒絶理由であって、特許公開公報または印刷刊行物によって開示されたものに基づくものに限られます。


もちろん、以前の審査で引用された先行技術と、査定系再審査で提出された新しい先行技術との組み合わせに基づいて、非自明性がないとの拒絶されるおとがあり得ます。特許公報または印刷刊行物と関連しない拒絶理由、例えば、第3者による販売実績、使用の事実、発明者の適格性、101条(保護対象)、フロードなどの拒絶理由に関しては考慮されることはありません。

審査官が拒絶理由を発見したときは、特許権者にその拒絶理由を通知し、特許権者は意見書および補正書を提出して応答することができます。再審査で提出する補正書では、再発行とは異なり、クレームの権利範囲を拡張することはできません。

③査定系再審査は特急審査で行われる

査定系再審査は、特急審査(special dispatch)で行われます。したがって、特許権者には迅速な応答が求められます。

例えば、審査官からの通知に対する応答期間は一般的には2カ月と設定されます。また、裁判所の訴訟がで査定系再審査のために一時中断されたときには1カ月で応答することを求められます。

応答期間内に特許権者が応答しない場合、再審査は終了し、最後に発行した拒絶理由通知とともに再審査証が発行されます。最後の拒絶理由通知の状態のままで放置されるようなことになってはなりません。また

一応、応答期間の延長は1カ月まで可能ですが、通常の審査とは異なり延長には不可避の事情等の理由が必要になります。期間の延長はかなり厳格です。

審査が終了すると再審査証が発行されますこの再審査証には、削除されたクレーム、最終的に特許性がないとされたクレーム、特許性を許可するクレームが示されます。この結果に対して不服がある特許権者は審判を請求することができます。ただし、査定系再審査の審決結果に第3者は不服を申し立てることはできません。

④IDS(情報開示義務)

査定系再審査の当事者(特許権者を含めすべての当事者)は、通常の審査同様、IDSの提出が求められます。つまり、当事者はにも誠実さを求めているからです。特許権


また、特許権者はその特許が関係した他の手続(再発行、査定系再審査、当事者系レビュー、付与後レビューおよび訴訟)をしたこと、そしてその結果も特許庁にその都度報告する義務があります。この義務を放棄したときには権利行使不能に陥る場合があります。

⑤査定系再審査では継続出願や分割出願はできない

審査官から発せられる2回目の拒絶理由通知はほとんどがFinal Office Actionとなります。

しかし、このFinal Office Actionの拒絶理由に対して、意見書および補正書を提出して応答できますが、それでも、なお拒絶理由が解消しないときにでも、規則1.53(b)または(d)によって規定された継続出願をすることができません。審査のやり直しを求めたいときは、その最後の拒絶理由について不服を申し立てる審判しかありません。

(7)効力

①査定系再審査の審理決着後の効力

査定系再審査において、改めて特許性が許可されたクレーム、および補正または追加されたクレームであって特許として認められたクレームは、再発行された特許権と同等の効力を発揮します。

補正されなかったクレームは以前の特許権の効力を引き継ぐことはいうまでもありません。
査定系再審査でクレームが補正された後で、再審査証が発行されたとき、再審査証の発行後に生じた原因に基づいた訴訟に関しては、最初から補正された内容で特許権が発行されていたものとみなされます。


また、原特許のクレームと再審査を経た結果クレームが「同一」であるとき、再審査後の特許の効力は原特許の効力を引き継ぎ、原特許の日からその再審査後の特許権の効力が継続しているものとして扱われます。

ここでいう「同一」とは、クレームの文言が完全に一致である必要もなく、実質的な同一であればよいと解釈されています。クレームの文言がわずか変更だけであれば、再審査後の特許の効力は原特許の効力をそのまま引き継ぎます。

②査定系再審査によって中用権が発生する

また、査定系再審査でも再発行と同様に中用権が発生することがあります。この中用権の規定については再発行により与えられる中用権と同様の効果があります。下の記事に詳細を書いたので参考にして下さい。

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