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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

弁理士/特許技術者はクライアントにとって確認しやすい明細書を作成しなければならない

特許実務 特許実務-出願権利化手続

Magnifying Glass

請求項と特許明細書を作成することが知財技術者のメインのお仕事です。特許権の権利範囲を決定づける書類なだけに知財技術者のセルフチェックも重要です。また、セルフチェックだけでなく、クライアント(出願人や発明者)がチェックしやすい特許明細書を作成することを心がけるべきだと思うのです。

1.読みやすい特許明細書は手間も費用も削減することができる

クライアントにとってチェックしやすい特許明細書とは、簡単に言えば、読みやすい明細書です。読みやすくするためには、たとえ技術文献であっても分かりやすく、誤解が生じないように書くことが求められます。

特許技術者が読みやすい明細書を書くために気を付けなければいけない、主なポイントは以下の点です。
 ・明細書通してストーリーがしっかりしている
 ・節目ごとに、何を説明しようとする内容を簡潔に書いてある
 ・概略を説明してから段階的に詳しく説明している
 ・1センテンスが短く簡潔に記載している
 ・主語と述語の関係が明確かつ正確に対応している
 ・修飾語の係り受けが明確である
 ・使用している用語が分かりやすい

なお、実際に特許明細書は書くことは繊細な作業です。明細書を書いているときには、上記以外にも様々な点を細かく配慮しなければんありません。

しかし、“読みやすいし”“チェックしやすい”ということを念頭においた場合、少なくとも上記に挙げた項目については意識しておくべきです。

また、上記に挙げた項目を意識して特許明細書を書くことで、どこに何を書いているかがサーチしやすくなります。祖結果、出願した後、中間処理の際にも、技術の理解するスピードが速くなり、特許性を狙えるポイントの把握も容易になります。

さらに、日本に出願した後、その出願を基礎に外国へ出願するときの明細書翻訳もやりやすくなります。誤訳減るし、翻訳時間も減らし、簡潔に書いてあれば翻訳費用も減らすことができます。

単に“チェックしやすい”だけでなく、それ以上の効果がたくさんあるということです。

2.クライアントが読むことを意識して書く

特許明細書を書いていく上で配慮するべきことは、出願人であるクライアント側でチェックすべき項目が満たされているように係れていることです。ここでいう、クライアントと発明者と知財担当者です。発明者と知財担当者が書いておいて欲しいことが分かりやすく書かれていることです。

発明者と知財担当者がチェックすることを意識して、それぞれが満足してくれるように記載すればいいわけです。


それでは、特許明細書のチェックを行う発明者と知財担当者のそれぞれの役割に注目して、どんな点に配慮されていればよいかすれば良いか私なりに考えて書いていきます。

3.発明者が明細書をチェックすることを考慮して

発明者の立場を考慮すれば、まず求められるのは、技術内容が正確に記載されているかを確認するのが使命です。

発明者は記載内容に間違いがないか、技術的に矛盾する部分はないか、正確な技術用語が使われているかをチェックします。弁理士/特許技術者は、このような点に留意して特許明細書を作成します。このため、弁理士や特許技術者には、発明者と同程度の技術を理解できるように日頃から最新技術などもチェックしなければなりません。


発明者は、自社の商品や実施技術に即した内容に記載されているかをチェックすることです。

なんのために特許権を取得しなければならないかというと、自社の事業について参入障壁を作るために、技術や商品を権利として保護することです。その目的のためには、自社の実施技術や商品に沿った発明を説明するべきであることは言うまでもありません。その公開を代償に独占的な実施を認められるのです。

なお、特許を取得する目的によって、他社が実施してきそうな内容も予想して記載することで、他社をけん制することも要求されるとも思います。このため、弁理士は、特許明細書に記載すべき技術内容を発明者から詳細にヒアリングするときに確認しなければなりません。

さらに、当然のことですが、発明提案書に記載された元々の提案内容や、ヒアリング時に追加された補充内容をきちんと記載するということです。

しかし、当たり前のことが当たり前にできていないケースが意外と少なくないのです。

例えば、弁理士/特許技術者に期待されることは権利として取得する権利範囲を広げることです。しかし、権利範囲を広げるために、特許請求の範囲を上位概念化し、明細書の実施形態でも上位概念的に記載してしまうことで、発明者から見ると自分の提案していた発明内容とかけ離れているように思えることがよくある話です。

特許請求の範囲を上位概念的に記載することを求められているとしても、細書における発明の詳細な説明まで上位概念的に書いて、発明者による具体的な提案内容の記載を省略してしまってよいでしょうか。

特許請求の範囲を上位概念化するならば、それに合わせて明細書の記載も上位概念化するだけでなく、発明者の具体的な提案内容を含めて、下位概念、中位概念を複数の実施形態をできるだけ具体的に記載し、請求項の上位概念と実施形態が離れすぎないようにしなければなりません。やはり発明者の提案を尊重し、提案内容に即して記載しておくべきだと思います。

なお、発明提案の内容に矛盾があった場合にはそのような記載を省略し、従来技術との関係で明細書のストーリーを変更する必要が生じることもあります。そのような事情があれば、事前に内容を変更を了承を得るか、変更の意図を事後的に説明するか、発明者の同意を摂っておいた方が下手なトラブルはなくなりますよね。

4.知財担当者が明細書をチェックすることを考慮して

出願人の知財担当者の役割を考えた場合、弁理士/特許技術者が特許明細書の作成するうえで考慮しなければならないことは数多くあります。

細かいことを挙げるときりがありませんが、重要な点をいくつか列挙すると、①発明の本質を的確に捉えているか、②権利主張の範囲を適切に記載しる、③特許性が十分に主張できているか、④出願の目的や特許戦略に適した内容に記載されているか、などです。


この4つの中で私が最も大事だと思うのは、①発明の本質を的確に捉えているか、ということです。

特許明細書を作成する弁理士/特許技術者だけでなく、それをチェックする知財担当者にとっても、発明の本質をいかに的確に捉えるかは重要なテーマになります。この発明の本質が捉えられているか否かで、後の4つのチェックの仕方も変わります。


つまり、発明の本質をきちんと捉えていない限り、特許請求の範囲を適切に記載することも、特許明細書の全体を出願の目的や特許戦略に合わせて記載することもできません。発明の本質を正確に捉える事が、質の良い特許明細書を作るすべての始まりなのです。


それでは、発明の本質を捉えて明細書をどのように書けばよいのか。それは、従来技術→課題→解決手段→効果、という一連の流れを明確に記載することです。


さらに、その一連の流れの中で記載する特許性の主張に説得力を持たせるために、従来技術においてなぜそのような課題が生じるのか、課題解決のためになぜそのような手段が必要なのか、その手段を採用することによってなぜそのような効果を生じるのかというように、「なぜ」の答えをきちんと記載することも欠かせません。(このことは次の記事に記載したいと思います。)

2つ目以降の留意点、すなわち、権利主張の範囲を適切に記載する、特許性が十分に主張できる内容にする、出願の目的や特許戦略に合わせて記載するということは、権利範囲に直接影響してきます。

具体的には、権利範囲の広さ、権利の強さ、権利行使の容易さ、特許取得の可能性、禁反言など様々な点を考慮に入れて、特許請求の範囲を記載しなければなりません。

そして権利範囲は、明細書や図面からも大いに関係があります。特許の成立条件にサポート要件があり、拒絶理由を受けて補正するときも明細書や図面の記載などから補正することになります。明細書や図面には、特許請求の範囲に書かれた発明の理解をサポートするための役割を持つからです。

特に、特許請求の範囲に記載した各構成要素の対応関係が明確であることが求められます。また、出願時と中間処理を対応するときに時間的なギャップがあります。そのため、出願時に取得したかった権利範囲と、中間処理時に取得したかった権利範囲と異なる場合がありますし、担当者が変更される可能性も十分にあります。出願時から時間が経ったとしても、どこに発明のポイントがあって、どのような点で特許性を主張するのか確認しやすいように明細書を記載することも望まれます。

明細書作成は奥が深いですよね、ほんと。