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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

特許権は重要だけど結局それだけで商品にはならない、ことを痛感しています

特許 売却

特許権は重要だけども・・・それだけじゃ当然足りない

最近、社内で過去の要らなくなった特許権を売却し、少しでも研究開発費用を回収しようとする動きがあり、特許売却のための営業や特許権の売買契約の仕事をすることもあります。

ここで実感するのが、買い手として自分たちの事業にその特許権が欲しい、興味があると言ってくれるけど、だけど特許権だけをもらっても意味がない、という企業が多いですね。


それもそうですね。

売り手としては不要な特許を処分したいだけの場合、特許権を譲渡して終わりにしたい意図があります。買った側の支援を積極的にするつもりがないことがほとんどですからね。

特許権は保護すべき技術範囲を必要最低限にしか記載しません。少なくとも企業は特許権を得るために、なるべく情報を開示しないようにして、独占的権利を得るための交渉をします。

だから、特許明細書には、モノづくりにかかるコストや品質などの情報は記載することはありません。特許明細書に記載されている実施形態・実施例を忠実に実施すれば、発明は実施したことになるかも知れませんが、それが売れる商品になるとは限りません。品質は低く、安定して生産できない、コストが高い、などなど、商品に組み込まれていくまでも大きなハードルがあるわけです。いわゆる技術経営の分野でよく言われる“死の谷”や”ダーウィンの海”ですね。

当業者だからといって、この特許明細書を見ながら同品質、同価格の商品を量産させることは至難の業です。(製造特許は作り方のノウハウが誤って開示されていることもあるので、競合他社の公開公報をチェックしたり、自社で公開しないように細心の注意を払って下さい)

特許明細書は、設計図でもなければ、製造仕様書、品質管理書ではありません。特許があればOKという訳でもなく、特許明細書に書かれていない技術情報、人材、技能・ノウハウ、関係パートナーの情報などで、補完しあって商品化・量産化に辿り着くわけです。

この特許明細書に書かれていない情報は、特許明細書情報の何十倍、何百倍もの情報(価値)になるのではと思いますね。

特許以外の無形資産をどれだけ保護できるのか。

だから、今流行っている特許情報だけで技術マッチングを提供するような特許流通業やTLOはそのうち頭打ちするんじゃないでしょうか。特許があっても・・・使いこなせない、使いこなすまでに投資も必要ということに中小・ベンチャーも気付いていくはずです。(トロールみたいなのは別ですよ。)

ライセンス強者になって、侵害を指摘してライセンス料をせしめ取るような特許の使い方の場合は、特許権があれば十分ですが、特許技術を“コア”にして事業を継続していくには、商品化・量産化のための幾多の周辺技術、ノウハウ、資金などが必要になり、もちろん習得してからの試行錯誤の投資・時間を伴います。

したがって、モノづくりのためには、特許のみの売り込みはだけでは不十分であり、必ずその周辺のノウハウや人材派遣などを含めた技術移転の形態にしないと特許権の売買は難しいと思いますね。教えてくれないなら自分たちでやった方が良いと思う中小企業も多いんじゃないでしょうか。

近年では、大きな企業であれば、手っ取り早くM&Aにより人材を含めて無形資産を買い取ることになるんでしょうね。

だとすると、特許の売却を成功するためには、その特許権に付いてくるノウハウをまとめておいて、それも一緒に売れるかどうか、会社に管理する必要があるでしょうね。僕の場合、特許はクレームとして管理しやすいですが、研究開発時点のノウハウの管理は意識が薄かった、と反省せざるを得ないですね。

そして、将来の事業ごとの売却を踏まえて、特許権は、知財のごく一部であって、重要なことは特許以外の無形資産や守秘情報をいかに自社の強みとして保護強化、価値評価していくかというところが知的財産部に求められているんじゃないでしょうかね。