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特許実務com Patented!!

社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

中国特許制度の補正可能な範囲は日本やアメリカよりも厳しい

特許実務-中国特許実務 特許実務

中国特許の補正

中国においても日本やアメリカと同じように願書に最初に添付した明細書および図面等に記載した範囲内で補正が認められる、これが原則です。

しかし、中国の特許実務で可能な補正は日本やアメリカよりも制約が多いと思います。

まず、補正ができる時期に制限があります。それに補正が許可される範囲、新規事項の追加を指摘されるかどうかについては日本やアメリカよりも厳しく判断される可能性があります。

さらに、中国の特許制度には訂正審判制度がありません。特許が登録されたあと誰かから無効審判が請求されたときに可能な補正は請求項の削除するぐらいしてか認めてもらえません。

中国の特許制度では、審査段階や権利化後も補正に対し他国よりも特別に厳しく制限されている印象を受けます。中国に特許出願をするのであれば、より慎重に明細書を作成して補正ができる範囲を広くするよう充実させなければなりません。日本の実務に慣れた実務者にとっては見落としがちな記載漏れ等が後から見つかったとしてもそれをカバーすることが後々苦しくなってしまいます。

そこで、今日のテーマは、中国の特許制度での補正を行うことができる時期および範囲などについてまとめていきたいと思います。

中国特許制度補正のタイミング(時期的要件)

(1)自発補正と受動補正

まず、自発補正と受動補正の違いを確認しましょう。

実体審査に入る前に出願人から能動的に行う補正が自発補正です。

一方、実体審査が始まり、審査官から審査意見通知書(日本でいう拒絶理由通知書)を受けた後、つまり受動的に審査官に応答する補正が受動補正です。

(2)自発補正が可能な時期

自発補正ができるタイミングは
・実体審査請求するとき
・実体審査段階に入る旨の通知書を受領した日から3ヶ月以内

なお、実用新型特許出願及び外観設計特許出願では、実体審査がないため出願日から2ヶ月以内であれば自発補正が可能です。

(3)受動補正が可能な時期

受動補正が可能な時期は以下の期間で可能です。
・審査意見通知書を受けた後の指定期間内
指定期間は審査意見通知書を受けた回数によって変わります。1回目の審査意見通知書であれば、一般に4カ月の間に補正ができます。2回目以降の審査意見通知書になれば、短くなって2ヶ月の期間の間しか補正することができません。

この指定期間については最大2ヶ月延長することができます。延長するときは、応答期限までに延長の申請が別途必要になります。

(4)誤訳が訂正できる時期

PCT出願したときに誤訳の訂正が認められています。中国に国内移行したときの明細書に誤訳があった場合、次の期間に誤訳の訂正することができます。

①国務院特許行政部門が特許出願または実用新型特許出願の公開の準備作業を完了する前
②国務院特許行政部門が発行した特許出願が実体審査段階に入った旨の通知書を受けた日から3ヶ月

誤訳があった場合は、自発補正において誤訳の訂正することになります。受動補正では認められない可能性もありますので、なるべく早い段階で誤訳を解消しておいた方に越したことはありません。

なお、審査官が誤訳に気づいて審査意見通知書に指摘荒れていた場合に限っては、出願人は応答期間中に誤訳を訂正することができます。

それでも誤訳できなかった場合には、分割出願のタイミングで誤訳を解消することができます。

(5)覆審請求したときの補正

覆審請求したときにも特許出願書類を補正するタイミングがあります。

・拒絶査定に対して覆審請求を請求するとき
・覆審請求が進行して審判通知書に応答するとき
・口頭審理に参加するとき

(6)特許後の補正

中国には日本みたいな訂正審判に代わる制度はありませんが、無効審判を請求された場合、請求項の削除・併合・技術手段の削除することだけしか認められません。

請求項の削除および技術手段の削除は無効審判請求の審査決定が下されるまで行うことができます。。

しかし、請求項を併合することができる時期は次のアクションに対する答弁書提出ができる期間内に限られます。

①無効宣告請求書
②請求人が追加した無効宣告事由
③覆審委員会が引用した、請求人が言及していない無効宣告事由または証拠

(7)中国特許制度における注意事項

受動補正ができるな範囲は狭く、日本の最初の拒絶理由通知書を受けたときに認められるのと同じような範囲で補正することができません。
しかし、自発補正の場合は当初の明細書・図面の範囲内であれば自由に補正することができます。自発補正ができる時期には慎重に権利範囲を見直し、必要に応じて適宜自発補正を行ってから実体審査に臨まなければなりません。

また特許後の補正のうち、請求項の併合については時期的な制限が請求項の削除および技術手段の削除と比較して厳しいため、チャンスを逃がさないようにしなければなりません。

3.補正することができる範囲

(1)自発補正ができる範囲

中国特許制度の自発補正は、日本と同じように当初明細書の範囲で行わなければならないのが大原則です。

自発補正について中国専利法第33条は以下の通り規定しています。

「出願人は、その特許出願書類について補正することができる。ただし、発明及び実用新案型の特許出願書類の補正は、原明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えてはならない」

ここで記載された範囲とは、審査指南において以下の通り規定されています。

「当初明細書および請求項の文字通りに記載された内容と、当初明細書および請求項の文字通り記載された内容と明細書に添付された図面から直接的に、疑う余地も無く確定できる内容を含む」


文字通りに明細書の中で記載された内容に加えて、“直接的に疑う余地も無く確定できる内容”と記載されていますが、実務上は文字通りの範囲内でしか補正が認められなかったことが多くあります。

また、明細書に記載されていなければ、図面からの情報を追加することもできません。

(2)受動補正ができる範囲

受動補正ができる範囲は、自発補正の制限に加えて、審査官の審査意見通知書の要求に従う範囲内で補正することもできません。審査を内容とは無関係な補正を認めないのは、再度先行技術調査及び審査のやり直しせず、早期審査のためです。

ただし、審査官の要求に従わない補正に該当しなかったとしても、当初明細書範囲内で補正し、であること、明細書及び請求項の欠陥を解消していて、特許付与の見通しがあれば、当該補正が認められることがあります。

これも審査を促進させるためです。そのため、審査時の受動補正が補正要件違反があったとしても無効理由には挙げられていません。

受動補正時に認められない補正は以下の場合があります。

①独立請求項の中の技術的特徴を自発的に削除することで、当該請求項が保護を請求する範囲を拡大した場合

例えば、請求項1「正極と負極と、電解液を備えた電池」を「正極と亜鉛負極を備えた電池」とするような、「電解液」の構成要素削除する補正は認められません。

出願人が独立請求項から技術的特徴を自発的に削除する、関連する技術用語を自発的に削除する、または具体的な応用範囲を限定する技術的特徴を自発的に削除する場合、当該自発補正の内容が原明細書の内容が原明細書や図面に記載された範囲を超えていなかったとしても補正により請求項の保護範囲が拡大するので、当該補正は認められません。

②独立請求項の中の技術的特徴を自発的に変更することで、保護の請求項の範囲を拡大をもたらした場合

例えば、請求項1「正極と亜鉛負極と、電解液を備えた電池」を「正極と金属負極と、電解液を備えた電池」とするような変更は認められません。

たとえ、出願人の明細書中には電池の“負極が金属であればよい”という記載があったとしても、「金属負極」は「亜鉛負極」よりも保護範囲が広くなるので認められません。
このような「亜鉛負極」を「金属負極」に変えて保護したい場合は分割出願をするしかありません。

③明細書のみに記載され、自発的に元の請求項に記載された発明主題との単一性を備えない場合

例えば、出願時に自動車の新型タイヤに係る発明をクレームに記載していて、実体審査において特許性がないとされたため、明細書に記載されている自動車のハンドルに関するタイヤとは別の発明に書き換える補正は認められません。当然、補正前のタイヤと補正後のハンドルは単一性がないためです。

④元の請求項に記載されていない新しい独立請求項を自発的に追加する場合
⑤元の請求項に記載されていない新しい従属請求項を自発的に追加する場合

一度実体審査が始まると、元の請求項の範囲を拡大する補正はまず認められません。元のクレームの保護範囲を少しづつ狭く限定していく補正しか認められません。そのため中国に出願する場合には、自発補正時に予め必要になりそうな保護範囲をカバーする請求項を作っておく必要があります。もし、実体審査が始まった後、保護したい範囲が出てくると分割出願を別途行わなければなりません。

(3)請求項の保護範囲に内容の追加

請求項の保護範囲に内容を追加する補正のうち、認められない類型は以下の通りです。

①原明細書及び/または特許請求項の範囲から直接的、明確に限定することができない技術的特徴を、請求項及び/または明細書に追加すること。
②公開された発明を明瞭にする、もしくは請求項を完備するため、原明細書及び/または特許請求の範囲から直接的に、疑う余地もなく確定することのできない特徴を追加すること。
③添付図面の身に開示されている技術的特徴を追加すること。
④原出願書類では言及しなかった付加的成分を導入すること
⑤当業者が原出願から直接的に導くことのできない有益な効果を導入すること。
⑥実験データを追加することで発明の有益な効果を説明してる、及び/または実施形態と実施例を追加することで、請求項で保護を要求する範囲内で発明が実施できるということ。
⑦原明細書では言及しなかった添付図面の追加・補足は一般的に、許可されない。

なお、背景技術の添付図面を追加・補足すること、もしくは原添付図面中の公知技術の添付を従来技術にも隣接している添付図面に交換することは許可されています。

(4)文言の変更

中国の特許実務上は請求項の文言を変更する場合、新規事項の追加となる否かが争点となることが多くあります。

以下に補正による文言の変更が新規事項追加と判断されるケースを紹介していきます。

①請求項に記載された技術的特徴を変更し、原特許請求の範囲及び明細書に記載された範囲を超えた。

例1
 請求項1
 (補正前)Aと、Bを備えた自転車のブレーキ
 (補正後)Aと、Bを備えた車両のブレーキ

 補正前の請求項では自転車のブレーキに関する発明を請求していたことに対して、補正後の請求項では“車両”のブレーキとなり、自転車を車両と変更する補正です。自転車は車両の一つですが、自動車なども車両に含まれます。つまり、自転車を車両に変更することで権利範囲が広くされたことになります。

 この補正は原請求項の保護請求の範囲から超えた補正になります。

例2
 請求項1
 (補正前)1辺が開口したカバー
 (補正後)少なくとも1辺が開口したカバー

補正前の請求項では、「1辺が開口した」とあります。この請求項では“1辺のみ開口している”カバーのみに限定されかねいので、補正で“少なくとも1辺”が開口しているカバーとして、2辺以上が開口しているカバーも権利範囲に含めるよう補正したとします。

しかし、明細書に添付されていた図面には、“1辺のみ開口したカバー”しか開示されておらず、2辺以上開口したカバーの図面は添付されていませんでした。図面だけでなく、現明細書に“2辺以上開口していてもよい”といった記載がなされていません。

そのような場合には、この補正は請求項に記載された技術的特徴を変更し、原明細書に記載された範囲を超えた補正とみなされ、補正は認められません。

もし、この例で自発補正時にこのような補正がなされていれば審査官は許可してくれたかもしれません。

例3
 請求項1
 (補正前)組成式LiMnMO2で表されるリチウム複合酸化物。
     MはNi、Fe、V、Tiの少なくともいずれかである。
 (補正後) 組成式LiMnMO2で表されるリチウム複合酸化物。
     Mは遷移金属である。

この補正も例2と同じく、保護請求の範囲を広げる補正でかつ、明細書に記載されていない範囲を超えた補正になるため、補正を認められることはありませんね。

②出願書類の明確でなかった記載を具体的な内容に変更するため、原出願書類に存在しない新しい内容を追加する。

例1
 明細書
 (補正前)やや高い温度で重合反応を開始する。
引例:35℃での重合反応を受けて
 (補正後)40℃以上で重合反応を開始する。

 当初の明細書に記載されていた“やや高い温度”という定義、ややという文言が具体的な数字を定義しているわけではないので不明瞭を指摘されても仕方ありません。

 当業者にとって、重合反応を40℃で行うことはやや高い温度になるのかもしれませんが、明細書にやや高い温度が40℃である根拠はありません。そのため、このような補正は原明細書に記載されていなかった内容を追加してしまった補正となり、その補正は認められません。

③原出願書類において分離している複数の特徴を、新たな組み合わせになるよう変更したものの、原出願書類にはこれらを分離している特徴の相互間の関連性について明確に言及していない場合、当該補正は認められない。


(補正前)
請求項1 :AとBとCを備えた〇○
請求項2 :AとBとDを備えた〇○
実施形態1:AとBとCを備えた〇○
実施形態2:AとBとDを備えた〇○

(補正後)
請求項1:AとBとCとDを備えた〇○

実施形態1と実施形態2はそれぞれ補正前の請求項1と請求項2で表現されていますが、補正後の請求項1のCとDの構成要素の両方が含まれる実施形態を開示できていませんでした。

このようなとき、CとDの相互作用を説明されていないことから、請求項1にDに組み合わせる補正は認められません。

④明細書中のある特徴を変更することにより、変更後で反映している技術的内容が、原出願書類に記載してある内容と異なったものとなり、原明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超える。


(補正前)請求項1:20℃または100℃で重合反応を開始する。
    実験例1:重合反応20℃
    実験例2:重合反応100℃

(補正後)請求項1:20℃~100℃で重合反応を開始する。

 このような場合、実験例1と実験例2の2つの条件からは、20℃~100℃の間で重合反応を開始させることが補正前の請求項1に記載された発明の効果を奏することを、直接的に疑う余地も無く得られるとはならず、現明細書及び請求項の範囲に記載された範囲を超えるものと判断されます。

(5)文言の削除請求項の文言を一部削除することが新規事項の追加と判断されたことがあります。

以下に認められない削除補正の例を示す。

①独立請求項から、原出願において発明に必要な技術的特徴として明確に認定された技術的特徴を削除すること。


例えば、
 (補正前)請求項1:~、開口を有する側壁と、~
 (補正後)請求項1:~、側壁と、~

明細書に記載されている実施形態の側壁には、一貫して“開口を有する”側壁が開示されているため、開口を有していない側壁が請求項に記載された発明と同じ効果を奏することが、原明細書に根拠が見出すことができないため、補正が認められません。

(6)請求項/明細書中の誤訳の訂正

①国際特許出願(PCT出願)の場合中国の特許出願でもPCT出願のの原明細書および図面に記載した範囲内であれば誤訳を訂正することが認められます。

中国の実体審査では、原則として中国語に翻訳された訳文で審査されますが、明らかな誤訳等でその内容に疑義が生じた場合にPCT出願明細書に照合されます。PCT出願の原明細書から誤訳訂正のための補正の根拠となります。

②パリルート出願の場合

日本出願を基づきパリ優先権を行使して中国に特許出願し、当該中国特許出願の翻訳文に誤訳があったとしても訂正することができません。
残念ながら、日本語明細書及び優先権書類に正しく記載されていたとしても、中国の審査に補正で反映させることができません。

(7)覆審請求段階での補正

覆審段階における補正は専利法第33条及び実施細則第61条1項に規定されています。規この規定では、新規事項の追加が禁止されているだけでなく、拒絶決定または合議体に指摘された欠陥を解消するためだけに限られます。

したがって、以下の補正は認められません。

①補正後の請求項が、拒絶が決定された対象請求項比べて、保護範囲を拡大する場合
②拒絶決定の対象請求項の発明と単一性を具備しない請求項に補正する場合
③請求項を追加する補正
④拒絶決定で指摘されていない内容について補正された場合

なお、誰が見ても明確な文字の誤りの補正、あるいは拒絶決定で指摘された欠陥と同一の性質を有する欠陥に対する補正などは認められることがあります。このような補正を試みる場合は、審査官に事前に補正が許可できるものかどうか審判官に確認しておいた方が良いでしょう。

もし、復審理請求の段階の補正で実施細則第61条1項に合致しなければ、一般的に合議体は補正された出願書類を受領しません。補正された出願書類が受領されなかった場合、審判官たちはきちんと復審理通知書に補正内容が認められない理由を説明し、それまでに提出された書類に基づき審理が開始されます。

補正文書の一部が実施細則第61条1項に合致されていれば、合議体はその一部の内容に対して審査意見を提示してくれます。