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社畜だけども弁理士試験挑戦中。2015年4月-6月はアメリカ特許実務研修中

特許権で技術を独占しただけでは、市場を大きく成長させることができない

特許権で独占していても市場が大きく成長するわけではない

技術を公開し、公開された技術を使う企業が増えることで、徐々にと市場が形成されていきます。裏を返すと、「技術をオープンにしないと、市場がは形成されない」ということです。

市場を大きく形成できないと、結果として、画期的な商品だったとしても、流行に乗ることができず、市場に定着することができないまま忘れされ、市場からはみでた結果になる可能性が高くなります。これは既存製品の市場シェアを奪い合うこととは異なり、新商品の生存に関わる重要なことです。

今日のテーマは、知財マネジメントの一環である技術公開は賢く行い、大きく市場形成を成功した企業や事例について紹介していきます。

日清食品チキンラーメンの普及は他社に無償で特許権を使わせたところから

日清 チキンラーメン 5食パック

技術の公開と市場形成に大きな影響を与え、成功を手にした企業と言えば、日清食品がまず思い浮かびます。

日清食品と言えば、チキンラーメンを生みだし、今でもカップヌードルや○○など、カップラーメンにおいて有名ブランドを持ち、国内外のカップラーメンの市場で大きなシェアを持っています。

カップラーメンは、戦後の1958年に日清食品の創業者の・安藤百福が発明した瞬間湯熱乾燥法を利用した即席袋麺が起点となりました。商品です。今でも人気のチキンラーメンの誕生の瞬間ですね。

それまでカップラーメンという商品はこの世に存在していません。

チキンラーメンの登場により、美味しく保存性が高く持ち運びも簡単、ということで、チキンラーメンを見様見真似で即席麺を売り出す会社が後を絶ちませんでした。安藤氏は十分な研究もされず即席麺を見様見真似で作られた粗悪品に頭を悩まさしました。

粗悪品が出回って恐ろしいのは、“低品質なな粗悪品”が流通することで、日清食品のカップラーメンを含めてすべてのカップラーメン=低品質というイメージが消費者の中で定着してしまうことです。

その当時、まだまだ信頼を得られていない新商品であるチキンラーメンにとって、なおさら低品質な粗悪品の流通は売上に直結してしまう大問題になりました。

日清食品も瞬間湯熱乾燥法や即席袋麺に関する特許権を取得し、取得していた特許権を基に粗悪品を販売する企業に対して侵害を訴え、粗悪品をこれ以上市場に出回らないように奮闘していました。

つまり、特許権で参入障壁を形成し、カップラーメンの市場に他社が参入を拒み、日清食品で独占しようとしていたわけです。

しかし、特許訴訟に明け暮れた安藤氏はあることに気付きます。当時モノ珍しさはあったものの、カップラーメンを敬遠する消費者も多く、市場に定着できるかどうか不透明なモノでした。しかも、訴訟を起こして係争を続ける間にも、市場に低品質な粗悪品がが次々に出回っており、カップラーメンという商品が生き残れるかどうか分からないというリスクがあることに気付いたのです。

そして、安藤氏はチキンラーメンの販売を独占することよりも、カップラーメンの市場を大きく形成させること、日本人の食生活に根付かせることを優先させる決断をしました。

そこで、日清食品チキンラーメンに利用している特許技術をそれまで低品質なカップラーメンを販売していた他企業に通常実施権を与え、ノウハウも教えチキンラーメンの製法の「オープン化」をすすめました。特許紛争の費用や手間を考えれば、チキンラーメンの売り上げが多少落ちたとしても、他企業に特許技術を使ってもらって真正な商品を作らせて粗悪品を市場から駆逐した方が得だと判断したのです。

そして、安藤氏の思惑通り、多くの企業が日清食品の技術を活用してカップラーメンの市場に参入しました。その結果、カップラーメンの市場は急速に成長・拡大し、消費者の生活に浸透していき、いまや現代人にとって「カップラーメン」がなくてはならないものへと定着していくう商品に成長を遂げました。安藤氏が特許権を他社に使わせることを判断していなかったら、カップラーメンはどうなっていたでしょうか。現代のようにはカップラーメンは普及していなかったかもしれませんね。

この日清食品のカップラーメンの事例から、素晴らしい発明が完成したときに、自社だけで商品の普及を図ろうとすると、どれだけの苦労あるいはリスクがあるのか十分に検討したうえで、特許権をどのように使っていくのかを判断しなければなりませんね。画期的な新商品を自分たちだけで「市場の拡大」を仕掛けることができるかどうか、大きな問題です。

確かに徐々に市場を拡大できればそれに越したことはないかもしれません。しかし、その一方で、技術が定着するまでにその商品が死んでしまうリスクもあるわけです。特許権だって基本的には20年しかありません。発明が発掘されてから商品になるまでに早くても2~3年かかり、市場が形成されるまで2年~5年、定着するまでにはそれ以上かかるとしたら、新商品の場合、特許権で差止請求をしている場合ではないのかもしれませんね。

日本企業ーCEOの覚悟

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勝つまでやめない! 勝利の方程式

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シマノ、圧倒的なシェアと利益率は巧みな標準化戦略

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競技用自転車といえば、日本企業のシマノがまず思い浮かぶのではないでしょうか。国際液な自転車部品メーカー「シマノ」は、日本では稀なオープン戦略で大成功を成し遂げた企業です。

自転車レースの本場である欧州で、1990年代ごろからプロレースの上位チームの大半がシマノのシステムを採用し絶対的な地位を築き上げてから、ており、競技用の自転車や高級スポーツ自転車の駆動系部品システムで世界の8割を超えるシェアを確保し、売上利益率も20%を超え、圧倒的な強さで自動車業界に君臨しています。

シマノについては、知財戦略においてもお手本とすべき優秀な企業として多々取り上げられており、「自転車業界のインテル」といった異名があります。

シマノはスポーツ用自転車の中枢部品である駆動系・制御系部品で世界的なシェアを確保しており、シマノが提供する駆動系・制御系部品が自転車全体の「基幹部品」であり、基幹部材にその他の部材を従属させて自転車として完成となります。

なぜ「自転車業界のインテル」といった異名になるかというと、この商品群のモデルはインテルの中央演算処理装置の製品構造似ているのです。世界的に高いシェアを確保しながら、収益率も維持できるのはこの製品モデルを成立させた成果によるものが大きいのです。

シマノの自転車の駆動系・制御系部品群は、ブレーキから変速機までISOなど国差標準に準拠しながら1つのシステムとして一体開発されています。そして、標準化されていない部分は機能を先取りして独自開発を行い、標準化に先行して特許の出願がなされています。

それにより、現在は、他の自転車完成品メーカーはシマノのシステムを組み込むこと前提に開発が行われています。また、自転車用シューズなどの関連商品や関連部品のメーカーもシマノのシステムを前提にして部材を供給するようになっています。

つまり、シマノの駆動系・制御系部品システム自体は自転車市場に他の完成車メーカー等が存在するために欠かせない中核的な基幹部品になったデファクトスタンダードと位置を確保できているわけです。

シマノが実践している製品モデルは、「内クローズ・外オープン」と呼ばれるモデルです。内側をまねようとしても、十分な技術の擦り合わせが行わなければならず、一朝一夕では真似することができません。仮にシマノの駆動システムの代替品ができたとしても、シマノは次の改良に取り組み、代替品が完成した時点でシマノは一つ先の時代に進んでいるわけです。

一方、駆動系・制御系の基幹部材の外側、つまりインターフェースの部分は標準として規格化されており、それ自体はオープンになっています。シマノも特許を取得していて、タダで使えるわけではないと思いますが、周辺隣接部品メーカーはシマノが作った規格に合わせて相互運用性を確保していきます。

ロードバイクメンテナンスブック シマノ編

ロードバイクメンテナンスブック シマノ編

特許待ち伏せ戦略、デンソーウェーブのQRコード

QR Cube

商品を買ってキャンペーンに参加する、ときなどなどQRコードを読み取って情報を取得する機会が増えました。すっかりQRコードも定着したように思います。

このQRコードは、1994年にデンソーウェーブが開発したもので、バーコードなどの一次元コードよりも多くの情報をコード化することができて、かつ、印字面積が小さいというメリットがあります。デンソーウェーブ社は、このQRコード技術を特許で保護するだけでなく、積極的に公開・他社にライセンスを与えるオープン戦略によって、様々な業界団体の正式規格に採用されるようになりました。

では、QRコード自体はただの印刷物なので、印刷することじたいに大きなコストは必要ありません。コストが低いものは、採用する側からとしても敷居は高くありません。QRコードを作成・印刷する技術は他社に使用させたことで、一気に普及させることができたわけです。

じゃあデンソーウェーブ社はどこで利益を出したのか、というとこのQRコードの読み取り機器です。QRコードが普及すれば、おのずとそのQRコードを読み取るリーダーが必要になります。

そこで、デンソーウェーブはリーダー機器に技術を集中して特許出願を行いました。そして、その読み取り機器の販売によってビジネスが開始されます。このQRコードのリーダー機器に関する技術のほとんどがデンソーグループによって権利化され、とてつもなく高い参入障壁が形成されているわけです。

今やスマホにもQRコードを読み取る機能が標準的に備えられています。そのすべてにデンソーグループの特許権がマストで使用されています。2016年度のスマホの出荷台数が14億8250万台です。そのロイヤリティは・・・想像するととんでもない数値になりそうですね。

自社のみで普及させようとして失敗した例、消えたスノーボードの商品

スノーボードの標準化

上記まで成功例を挙げてきましたが、オープン化したことによる失敗例についても紹介しておこうと思います。
名前を伏せますが、あるウィンタースポーツに関する国際的な部品メーカーA社は画期的なスノーボードブーツの留め具を開発しました。それまでのスノーボードブーツはストラップを締め付けて、板についている留め具に固定するモノでした。

この固定の仕方だとリフトに乗るたびに、かなりの時間をかけてブーツと板を着脱しなければならず不便なものでした。そこで、A社は、その不便さを解消し、簡単に着脱できる「ステップイン」式の留め具の開発に成功しました。

当時、この画期的な技術開発であったことから、一気にステップイン式が普及すると見られました。A社の製品は評判を呼び、ここでも他社が一斉にステップイン方式に参入してきたのです。

A社のステップイン式は「縦止め」で、この方式は相当の技術的な知見と「ものづくり」の巧みの技が求められるモノでした。A社は「縦止め」のステップイン方式の技術に関する発明について特許権を取得しました。

しかし、他社はA社の「縦止め」の特許権があることからそれを回避するように「横止め」のステップイン方式の留め具を採用していきました。「横止め」は「縦止め」と比較して固定度合いが弱く、簡単に外れてしまいます。ただ、横止めは技術的にも「縦止め」よりも簡単で、製造もコストがかからず、真似しやすいことから、「横止め」のステップイン方式が大量に出回ってしまいました。

縦止めに比べて横止めは固定度合いが弱かったにもかかわらず、ダメな横止のせいで、縦止め・横止めの区別なしに、十把一絡げで「ステップインは危ない」というイメージが定着してしまい、それ以上ステップイン方式が普及しなくなってしまったのです。つまり、縦止めのステップイン方式が優れた技術であったとしても、その市場が拡大する前に、商品アイテム自身が縮小してしまったのです。

このように、特許技術を独占していただけでは、その技術を普及させることに逆にブレーキになる可能性があります。この例では、A社が「縦止め」のステップイン方式の技術を他社に使わせていれば・・・、A社は「縦止め」のステップイン方式を開発したときに代替の「横止め」のステップイン方式まで権利化できていれば・・・、と後から考えるといろいろ普及させる方法はあったのかもしれません。

自社独占だけを考えるのではなく、ある段階で部分的にでも他社へ有効的に特許技術を使わせることで新しい商品の市場形成を行わせることがカギになります。

よく自社実施をしない特許は無駄だとか、他社の迂回技術の開発を止めてしまうことは業界全体の技術開発に悪影響を及ぼすのでよくない、といった主張をする人もいますが、単に他社の進路妨害をするだけでは、結局粗悪品を作らせてしまうことになり、その商品の拡大するチャンスを損ねてしまうことも頭の片隅に入れておかなければなりませんね。

上記のような主張する人々には、他社にライセンスを与えると言うことは、業界全体の市場拡大に貢献し、自社にも利益が返ってくることもぜひ知って欲しいと思います。

技術をオープンにする戦略の意味

上に挙げた例でも分かるように、製品やコンセプトがいかに素晴らしくても、それだけでは市場が形成できるかどうかは分かりません。そのため、知財マネジメントの観点の事業判断も必要である、ということです。

画期的な発明をした、そして特許で保護したとしても、製品ライフサイクルの導入期に自社だけで抱え込んでしまっていては、新しい商品が市場に普及しないリスクを抱え込むことになるのです。

しかし、往々にして、アイデアや技術に自信があり、他社に先駆けて製品開発に成功した企業ほど、これはイケる、といった過信があり、実は自社だけで市場を独占したくなってしまうものなんでしょうね。ましてや知財部としては特許網をしっかり形成して、自社だけが使えるようにと考えるのが、これまでの常識なのだから当然かもしれませんが、これからはより戦略的な経営判断が求められるわけです。

どこをオープンにして。どこをクローズにするべきか

これまで成功例を基に紹介してきた「技術をオープンにすれば市場が形成できる」というだけの理想的なスキームは当然ながら限界があります。ここでは、国際標準化しても事業でうまくいかなった例として携帯電話を取り上げましょう。

2000年代、中国の携帯電話市場は、日本やアメリカさらにはヨーロッパのさまざまな企業が狙った市場でした。各国で熾烈な競争が行われ、その結果、市場を制覇したのはNokiaなどを擁する北欧の企業群でした。

さてその当時、日本企業はどういった戦略をとったのかというと、日本企業は携帯電話そのものに関する国際標準を取りました。しかし、日本企業群が作った携帯電話に関する国際標準は中国では普及せず、北欧企業群が提案した別の国際標準が市場を牛耳ったのです。

北欧企業群が注力したのは、携帯電話の標準ではありませんでした。携帯電話の生産については新規参入してくる中国・韓国・台湾メーカーにあれやこれやと注文を付けない半面、北欧企業群はネットワーク側(中継局・基地局など)の周波数などの通信制度・ネットワークの構築などの標準を抑え、基地局の詳しい設備等は一切オープンにしないという戦略がとりました。。

結果どうなったのか、今となっては明らかに差が出てしまいましたが、中国市場では、け携帯電の作り方がオープンになったので、格安製品が大量に作られて一気に普及しました。つまり、中国の携帯電話市場は一気に立ち上がり、拡大したのです。携帯電話が爆発的に売れるようになれば、それに伴ってネットワーク側の中継局や基地局が広大な土地である中国に次々と必要になります。

携帯電話に関する事業の中で実は、最も収益性が高いのは、この中継局や基地局なのです。北欧企業群はそこの技術を抑え、通信制度などの使い方は標準にしているものの、その基地局・中継基地に関する技術については特許出願もせず、完全にクローズにして他へ公開またはライセンスをしませんでした。。

つまり、北欧企業群は、携帯電話サービスの付加価値は、携帯電話そのものの機能にあるのではなく、携帯電話を使うためには必須になるネットワーク側にあることを当時から見抜いて、そこを独占したのです。携帯電話事態の標準がオープンにされて市場を広がって、必要になるのは基地局や中継基地。北欧企業が独占することになるけど、携帯電話を使うためには北欧企業に頼まなければならない環境が中国の携帯電話市場における制約になりました。

北欧企業は明らかに戦略的に収益性の高いネットワーク側はクローズにして儲けられるところは独占する、という戦略を展開することに成功したわけです。

この中国の携帯電話市場の例では、単に技術をオープンにして市場を拡大するだけでなく、どこをクローズにして収益性を高めるか、を考えた良い例ですね。知財または標準化を使って、いかに「市場の拡大」と「収益の確保」の同時達成を可能とする戦略を計画するか、が極めて重要になってきます。知財マネジメントに従事するものにとってこれほど、自分の思い描いていた通りになったと、これほど快感になることはないのでしょうね。

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オープン戦略=囲い込み

いまや当たり前になりましたが、マイクロソフトwindowsやアップルのiCloudなどは、そのOSを前提にしたアプリケーションソフトウェアが企業以外のベンチャー企業などの第3者によって大量に作られています。プラットフォームと呼ばれる、アプリケーションを作成することができる環境を提供し、「オープンにすることによる仲間作りの成果である」と言えるでしょう。

キャノンは特許網の公知に長けた企業として有名です。キャノンも他の日本企業と同じく、オープン戦略と一歩距離を置きつつ、伝統的に自前主義・抱え込み指向の強い企業と世間では見られているかもしれません。

しかし、カメラとレンズを結び付けるインターフェース規格を、レンズ専業メーカーに有償でライセンスを与えています。レンズ専業メーカーの格安のレンズがキャノンのカメラと互換性があるわけです。

キャノン純正のレンズが高くても、格安メーカーのレンズが市場に出ることにより、予算が少ない顧客でも、高価なキャノン製のカメラ本体と組み合わせて買うことが可能になるからです。さらに、コアなファンにはとってはキャノンのレンズと格安メーカーのレンズの違いが明らかに分かるので、いつかは絶対キャノン製レンズを使いたい、といったユーザーの憧れのポジションも確保しているわけです。

技術をオープンにする戦略は公開する企業にとって一見不利であるかのように見えますが、長期的に見れば将来の顧客を囲い込むための立派な戦略でもあります。リスクの代わりに上手くいけば得られる代償も大きいわけです。まさに日本の特許法の目的そのものですね。

キヤノン特許部隊 (光文社新書)

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まとめ:技術のオープン化が市場を作る

本記事で紹介したのオープン戦略をここで整理してみましょう。

ある画期的な技術に基づく新商品を開発したら、特許としてそれを公開して、無償あるいは有償で他社に同様の商品を作ることを許可します。ます。それによってその市場に参加する企業を集め、新商品を市場に普及させます。

その一方で、商品を開発した企業自体は、商品そのものの内側を独自技術で固め、さらに高付加価値を高める開発をします。外側のインターフェースについては、内側の独自技術と相互運用性を担保した規格を整備し、それを標準化して公開し、他社の利用を呼び掛けるようにします。

それによって、関連周辺商品が順列が整備され、一群となって大きな市場に成長するようになります。

このオープン化の戦略は第3者に技術を使わせていますが、粗悪品の出回りを防ぐ目的もあります。粗悪品だけを捕まえて、その商品群一体に”ダメなもの”といったイメージを付けないためです。ダメなもの、使えないものとみなされたら、その商品が普及する前にその商品が売れなくなってしまうためです。

1社で商品の普及に努めよりも多数の企業が参入する方が、その商品市場の立ち上がりが早くなります。

さて、このように、事業全体の中で知財マネジメントが重要な役割を果たしていることが分かったかと思います。

上記に挙げた成功例によれば、知財マネジメントの役割が、従来までの特許による技術の排他的な権利行使を前提にしたリスクマネジメントの時代から、特許権を第3者にライセンスしたり、標準に組み込んだりすることで第3者に技術をオープンにすることで、それらを通じて市場を成長させるところまで見越した事業マネジメントの時代に移っています。ことが分かります。

一方で、標準を準拠して他社と同じプラットフォームにのり、他社に対して先んじての開発方針を提案して、独自技術の開発・権利化により差異化を図る知財マネジメントも、これまた重要な役目を担います。

このように、知財担当者としては、事業リスクの最小化+事業機会の最大化の両方が絡み合う知財マネジメントのスキルが求められてきますね。